2023年11月の記事

「大野裁判長は退官前に

鑑定人尋問の決定をおこなえ!」の

必死の訴え


10・31狭山大運動と全国連

東京高検へ要請行動 東京高裁前で4時間の訴え


 寺尾無期判決から49年を迎えた10月31日のこの日、11時からの東京高検要請行動に続いて、12時すぎから午後4時近くまで、東京高裁前でのマイク宣伝、チラシ配付・署名活動が行われた。東京高裁前では終日、東京高裁第4刑事部大野裁判長の11月三者協議・12月退官前の事実調べ・鑑定人尋問決定を求める訴えが鳴り響いた。

●東京高検要請行動●

 東京高検からは、片野担当検事ら3人が出席。要請団は「狭山大運動」と「狭山と人権を考える茨城の会」からの参加も含め29名、20名の枠を上回る参加者となった。
 はじめに、部落解放同盟全国連委員長村上久義さんから訴えを行った。
 「今日10月31日は49年前、東京高裁・寺尾裁判長が、石川さんに無期懲役判決を下した日だ。狭山事件は、袴田事件のように鑑定人尋問が行われていない。片野検事は無実の人間を罪に陥れますか」。これに対し、片野検事は「しません」と返答。「今、判断が迫られている。鑑定人尋問を行って真実を追求してほしい」と訴えた。
 これを皮切りに要請団から口頭での要請が始まった。「石川さんの年齢を知っているか、体調についてはどうか」と質問するも、検事は「知らない」と返答。「石川さんの人生について関心がないのか。狭山はえん罪が疑われている事件だ。彼の人生その人のことを考えて対応すべきだ」と追及した。
 また、一審の検事論告について、「検事は,差別論告と思わないと言った。ただ、『貧しいことが犯罪の理由と書かれていた』という。それでは部落差別をわからない。だから、無実の人を有罪にしても心痛まないのだ」と国家権力の部落差別を追及した。ほかにも証拠開示問題や下山鑑定の事実調べなど、時間いっぱいに追及を行った。その後9通の要請書を提出。最後に要請団から「事実調べは必要であり真実を究明してほしいと言っている。証拠開示をして真実を究明することを、三者協議の場で明らかにしてほしい」と締めくくり11時50分に終了した。

●東京高裁前 宣伝活動●

 正午過ぎから高裁前での宣伝活動が開始された。大横断幕が掲げられ、東京高裁正面横に木製のかもいを展示。道行く人々にチラシ配布、署名への協力を訴えた。
 マイク宣伝では、狭山大運動共同代表の長谷川弁護士、関西から新たに共同代表になった鶴丸春吉さん、狭山と人権を考える茨城の会代表の尾池誠司さんをはじめ、青年や婦人の発言など多様な人々から、大野裁判長は鑑定人尋問を行えなどの、必死の訴えが東京高裁に向け発せられた。
 マイク宣伝は4時頃まで続き、全国から集まった40名全員が10・31要請行動を最後までたたかいぬいた。


検察の再審妨害を許さず、

   第3次再審に全身全霊で闘いぬく

石川一雄さんの10・31アピール
    
                                                           (見出しは編集部)

 今年の極夏もやっと峠を越えたものの、熱中症、新型コロナ、インフルエンザが猛威を奮いました。支援者皆様方におかれましては、いかがお過ごしでしたでしょうか?私は元気そのものであります。
ただ、新型コロナ感染が拡大し、俳優の志村けんさんが新型コロナに感染し、急死されたこともあり、私も高齢のうえ糖尿病の持病もあることから、支援者皆様方には申し訳なく思いつつ、「生き抜いて冤罪を晴らす」ために、この2~3年、極力外出を控えさせて頂きました。
 また最近特に、目が見えにくくなり、階段等で転んだこともあったので、遠くの集会等に支援のお願いに出ていくことも遠慮させて頂いております。
 その間にも、支援者皆様方には、高裁に鑑定人尋問を求める署名を51万筆以上集めて頂いたり、「狭山の闘いを止めない」と高裁前アピール行動や各地での集会やスタンディング、座り込み、23デーの取り組み等を続けて下さっていたことは、私をどれほど奮い立たせ、また希望を頂いたかしれません。
 なにはともあれ、今は、第3次再審闘争の最重要な局面を迎えており、57回目の三者協議も来月に予定されていますが、現在の状況を直視すれば、大野裁判長の退官は12月に迫っている由で、事実調べ・再審開始の可否の判断は、次の裁判官に託すにしても、それほど時間はかからず判断されるものと思われます。49年前の寺尾確定判決の一部を引用すると「いやしくも捜査官において所論のうち重要な証拠収集過程においてその1つについてでも、弁護人が主張するような作為ないし証拠の捏造が行われたことが確証されるならば、それだけでこの事件は極めて疑わしくなってくる」とあり、そうであるならば、鑑定人尋問の必要はないと主張する検察に対し、裁判官は毅然とした態度で鑑定人尋問を行うことが求められていますし、また、職権でインクの鑑定をして頂きたく切に願っています。 私自身は、確定判決のあげた証拠に対して、つぎのような疑問を追及することも重要ではないかと思っています。
 その一つは、解剖鑑定では被害者の死亡時刻は食後最短で三時間というように判断されておりますが、被害者の解剖結果によると胃に250CCもの残留物があり、担任教師によれば、昼の給食は12時5分ごろ終わったと述べており、当日給食に出ていないトマトも残留物に含まれていた由であり、確定判決のストーリーと食い違うという点です。
 2点目は、人間が死ねば重力によって血液は下に下がり、死斑が発生し、その死体を動かしても8~10時間経過していると消えないと言われております。死体の腹部、背部の両側に赤い斑点(死斑)があったそうですが、私を犯人とするならば、5時間以内に動かしたことになりますので、背中に斑点(死斑)が存在していたということは時間的におかしいのです。
 確かに確定判決の7点の情況証拠、秘密の暴露と自白を完全に潰し、事実調べ・再審開始を求めるのが一番と思われますし、そのように戦われていることは承知しておりますが、その都度、検察は時間をかけて反論等を提出してくるので、いたずらに時間が過ぎ、その結果、私の命が失われていくことになります。こうした検察官のやりかた(再審妨害)を止めるには、やはり再審法の改正しかないのかもしれません。
 第3に万年筆の件は今更私が申し上げる迄もありませんが、弁護団の皆様方には、何時如何なる時でも長期間に渡って多大なご尽力、ご協力を賜っていることに、心から敬意と感謝の念で一杯ですが、私が逝ってから無罪を勝ち取っても遅いので、つい泣き言、愚痴を零(こぼ)してしまいました。
 事実調べ・再審開始の可否の判断を次の裁判官に委ねることになっても、支援者、弁護団の皆様方と共に奮闘して参る決意は変わりませんが、何卒、皆様方も、今次の再審闘争に全勢力を傾注して下さいますよう伏してお願い申し上げます。
 先の見通せない中で、寺尾不当判決糾弾集会が全国各地で開催されている訳ですが、私も年齢的にみて今次の第3次再審請求にかけており、全国の支援者皆さん方のご支援、ご協力に応えるべく、全身全霊で闘い抜くことをお誓いして寺尾不当判決から49年を迎えての決意とさせていただきます。

 2023年10月
 寺尾不当判決49カ年糾弾・狭山再審要求集会

 ご参加ご一同様
                   石川 一雄


(寄稿)

ガザ~パレスチナについて

       爺谷 小平(10月27日記)

2008年~2023年(10月7日以前)パレスチナの犠牲者の概数

 08年  800人
 09年 1000人
 12年  250人
 14年 2300人
 18年  300人
 21年  400人
 22年  200人
 23年  250人
 この15年間のパレスチナの死者計6400人、負傷者15万2500人。
 これに対してイスラエルは死者300人、負傷者6000人。
 10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃は、なぜ起こったのか。そして、それは何なのか。私たちはどう声をあげるべきなのか。何を為すべきか。

史上最悪の大虐殺を全世界反戦闘争で止めよう

 113年前の1910年、「日韓併合」に際して石川啄木は次の歌を詠んだ。「地図の上 朝鮮国にくろぐろと 墨をぬりつつ 秋風を聴く」。啄木当時24歳。日本帝国主義の朝鮮侵略・植民地化、それは朝鮮人民にとって、国の喪失であると同時に、民族の消滅であった。それはまた、抵抗する者に対する根絶・一掃、根こそぎの暴力的圧殺と一体である。これを目の前にして、啄木は精いっぱいの憤怒と、朝鮮人民への哀切をこめて、この歌を詠んだ。こんにち、私たちもまた、同じような歴史的事態を目の当たりにしている。
 中東・パレスチナ―ガザに対して、イスラエル(とアメリカ)による史上最悪とも言える、大虐殺の攻撃がおこっている。 ガザの保健省によると、10月7日のイスラエルによる空爆開始いらい27日までに、パレスチナ側の死者だけでも7326人にのぼる。うち子どもが3038人といわれる。とりわけ17日夜、病院の空爆では、死者471人をだした。
 おこっていることは、断じて「テロへの報復」ではない。まぎれもなく、ガザ地区のパレスチナ人民にたいする、ジェノサイド(大虐殺)である。イスラエルはまた、ガザ地区を完全封鎖し、食料、水、燃料など、生存に直結するすべてを遮断し、パレスチナ人民老若男女を問わず、死の淵に追い込んでいる。

パレスチナ人として生きてるだけで死刑宣告

 「パレスチナに住んでいるかぎり、いつミサイルや戦車で殺されるかわからない。イスラエルは、パレスチナ人であることを理由に死刑宣告している。
 死刑囚が毎朝、刑務官の靴音が自分のいる房の前で止まるか否かに、恐怖の全神経をとがらせている。それと同じ苦しみを全パレスチナ人に強いている。
 子どもたちは、生まれた時から、イスラエルによる占領・封鎖・虐殺の人生しか知らない。それが彼らの人生のすべてなのだ。パレスチナの地に生まれたというだけで、パレスチナ人というだけで、死刑宣告の理由にされる。イスラエルが占領・封鎖・虐殺を続けるかぎり、ハマスをテロ集団だとどんなに非難しても、子供たちはハマスになる。それしか人生の選択肢はないから」(ヤスミンライブラリ尾上光氏)。
 毎日のパレスチナ人民の苦境に、言葉もない。1人1人に家族があり、生活があり、人生がある。しかし、パレスチナ人として、生存するだけで死刑を宣告される。
 これまでの経過でも1日にして366人が毎日殺されている。うち、子どもが152人である。1年にすれば実に13万人、子ども5万人を超える犠牲がパレスチナに強いられている。それだけとっても、とてつもない凄惨な戦争であり、これこそがまさにナチスのユダヤ人迫害に匹敵する。 しかも本格的な地上戦が始まれば、どうなるのか。火を見るよりも明らかだ。
 日々、目の前で進行する虐殺にたいしてそれを止めるために、私たちに何ができるだろうか。パレスチナ人民支援のカンパをする。イスラエル大使館、共犯者アメリカ大使館への抗議の集会・デモに参加する。
 それで十分だろうか。何ができ、どうすればよいのか。
 イスラエルによるパレスチナへの攻撃に断固反対する。イスラエルを先兵とするアメリカ・バイデン政権のパレスチナ―中東侵略戦争に断固反対する。この史上最悪の大虐殺戦争にたいして、全世界の反戦闘争を巻き起こし、民衆の力で阻止しよう。

10・7はなぜおこったのか

 10月7日ハマスはイスラエルにたいし同時多発の攻撃を行った。イスラエル側に1400人の死者、人質220人と言われる。過去何度かのアラブ諸国との戦争とは異なり、パレスチナの抵抗運動による被害としては前例がない。
 アメリカ、ヨーロッパ、日本は、これにたいして「第2の9・11(2001年のアメリカ同時多発テロ)」「第2のホロコースト(第2次大戦中のナチスによるユダヤ人大虐殺)」と、一斉に非難の声をあげた。
 「ハマスはアルカイダ、ISと同類のテロリスト集団」「だからせん滅一掃するしかない」「市民の犠牲はやむを得ない」と口をそろえ、イスラエルを擁護し、虐殺に加担している。
 だが、果たしてどうだろうか。冒頭にみた経過を、もう一度見てほしい。事件は、10・7に突然おきたわけではない。長年のイスラエルによるパレスチナの占領・ガザの封鎖、そして毎日・毎月・毎年の虐殺。そして第1次、第2次のインティファーダ(民衆蜂起)をはじめ、営々たるパレスチナの抵抗運動。とりわけ、2007年のパレスチナの分断いらい、ガザ地区への攻撃は暴虐の限りを尽くしてきた。膨大な犠牲者、封鎖による失業、貧困、衛生・医療の貧弱さの強制。ガザ地区は、生存の基盤を根こそぎ奪われ、最低限の人間として生きる権利をはく奪され続けてきた。
 このとき、これに対して、欧米日は何をしたのか。異議の一つもとなえたことがあるのか。パレスチナの犠牲には、虫けらのように扱い、まるで無視してきたのは誰なのか。そんな奴らに、ハマスを非難する権利があるのか。
 ハマスは、イスラム抵抗運動の略称で、2006年のパレスチナ議会選挙では、「自治区」全体で勝利し、「自治政府」を掌握した。イスラエル、欧米はこれを認めず、ヨルダン川西岸はファタハによる「自治政府」をしたてあげ、ガザ地区にハマスを押し込めた。ハマスは「テロリスト集団」ではない。パレスチナ人民の多数に支持されるパレスチナ人民解放組織である。

全世界の反戦闘争に合流しよう

 イスラエルによるパレスチナ虐殺戦争にたいして、全世界各地で反戦闘争がまきおこっている。ヨーロッパ、アメリカ、中東、アジアに「パレスチナの子供を殺すな」「大虐殺の戦争をやめろ」の声が広がっている。ロンドンでは数万人、ワシントンではホワイトハウス近くの広場・通りを埋め尽くし、トルコでは数十万人、日本でもイスラエル大使館に1600人が抗議の声をあげた。イスラエルでも数千人の反政府デモがおこっている。
 中東・パレスチナ問題を歴史的全面的に触れるには、何冊もの本が必要だ。2度の世界大戦と、それを経たイギリス、さらにアメリカ帝国主義による石油支配・中東支配の先兵としてイスラエルのでっち上げ。パレスチナの一方的占領と追放・「自治区」への強制収容。恒常的な侵略軍事国家としてのイスラエル、そして日常的恒常的で無慈悲な暴力支配。パレスチナの生存をかけた抵抗運動、民族解放闘争。とても語り尽くせない。しかし、はっきりしていることは、アメリカ・イスラエルによる侵略戦争に反対し、パレスチナ人民の解放闘争を断固支持する。全世界の平和を民衆の力で実現し、「国境なき民族の共存」を実現する―夢のように見えても、それ以外の解決はない。
バイデンは「ウクライナとともに歴史の転換だ」と言った。ウクライナ、ガザ、ともに局地的紛争にとどまらない。新たな15年戦争~世界戦争への導火線ではないか。しかも、プーチンや、イスラエルの閣僚の発言にあるように、核戦争もはらんでいる。
 見過ごせないのは、日本の選択である。岸田政権は、「テロにたいするイスラエルの自衛権を支持する」「市民の避難のための一時的停戦は必要だ」と、欧米と完全に足並みを揃え、大虐殺に組している。私たちは何を為すべきか。パレスチナへの人道支援も必要だろう。しかし、それだけでは、この戦争を止めることはできない。ましてや「人道支援」が、虐殺の免罪符であってはならない。
 部落解放運動として、パレスチナ人民の苦しみに心かきむしられる。帝国主義とその先兵に怒り心頭に達する。自らの解放をかけ狭山闘争を不屈にたたかいつつ、パレスチナ人民の解放闘争に連帯し、反戦闘争に決起する。全世界反戦闘争の一翼を担う。イスラエル、アメリカ大使館に抗議に行こう。全国各地で、大中小の反戦集会・デモに合流しよう。





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