2021年08月の記事

東京高裁は下山鑑定人の尋問

       ー事実調べを行なえ!



第2次狭山意見広告の実現へ

          ラストスパートを!

10月狭山意見広告実現へ

 第3次狭山再審請求をめぐる情勢は、いよいよ事実調べ(鑑定人尋問)を行うかどうかのギリギリの局面に入った。
 狭山第2次意見広告運動はこの局面において、裁判所に事実調べ=鑑定人尋問を迫るものとしてこの10月、全国紙への掲載を目指して展開されてきた。
 まさに再審請求の山場ともいうべきこの情勢に、第2次意見広告は裁判所に事実調べを迫る大きな力となるに違いない。 
 意見広告に必要な賛同金は今現在、90パーセントを達成し、9月末の完全達成を実現すべく全国で運動が続けられている。学習会や狭山映画の上映会、地域での取り組みや街頭での宣伝。あらゆる場を意見広告実現のための場として、ラストスパート、エンジン全開で闘おう。



新たな体制のもと、

      5ヶ年決戦完遂へ



7・25全国連第30回大会開く 


 
部落解放同盟全国連合会第30回全国大会を7月25日、大阪・大東市立市民会館で行いました。コロナ禍での様々な制約があるなか、必要な対策をとり全国からの代表参加と一部リモートでの参加のもと2年ぶりに大会を成功させました。
 この2年間、私たちは瀬川博委員長、中田潔書記長、片岡副委員長というまさに全国連の顔というべき3人の指導者を亡くすという大きな試練に立ち向かってきました。大会の冒頭、3人に黙祷を捧げ、意志を引き継ぎ前進することを全体で誓い合いました。 
 村上久義委員長代行は開会宣言で「コロナで人と会うこともままならないが、私たちは地域としっかり結びついていく。狭山闘争、要求闘争を闘い、沖縄はじめ反戦・反核、反差別の闘いと連帯していく。秋の選挙で改憲阻止の議員を送り出そう」と訴えました。
 三里塚反対同盟ほかメッセージが紹介されました。

 楠木吉秀書記長代行が活動報告と2021年度の運動方針の提案を行いました。楠木書記長代行は「自粛ばかりしていない。目の前の現実と向き合い、全国連は絶対に逃げません。部落の人々と問題を共有し、ともに困難に向き合うことから始めます。瀬川委員長、中田書記長がそうであったように、たとえ少数でも全国連は村全体、運動全体を背負って立ち身分的差別を撤廃する」と全国連としての基本を明らかにしました。そして「新たな挑戦の最終年の決戦」として、①狭山第2次意見広告運動をなんとしても成功させよう。今年中に下山鑑定人の尋問を実現する、②コロナ禍であらたな要求闘争に立ち上がる、③衆議院選挙を改憲反対の選挙としてたたかう、との3つの大きな課題を提案しました。楠木書記長代行はさらに、「示現舎・宮部に対し、全同盟員からショート質問状を募集し徹底糾弾に立つ」と力強く宣言、最後に「沖縄・三里塚、アジア人民と連帯」を誓いました。

 課題別報告のはじめに、井橋昌夫中執が狭山闘争を報告。井橋中執は「第3次再審闘争では191点の証拠開示を実現、弁護団は241点の新証拠を出している。私たちは下山鑑定という決定的な証拠を手に入れた。検察のデタラメな意見書を許さず、鑑定人尋問をかちとろう。10月意見広告の実現へ奮闘しよう。各地で草の根の活動に取り組み、10・31狭山中央闘争に結集しよう」と訴えました。

 青年の組織化について北浦裕樹久青年対策部長が「地元のムラの同世代を合言葉に、まずは共有共感が出発点。ビラやSNSで自分のやりたいこと、できることを地元の同世代に投げかけていこう」と青年たちに呼びかけました。

 要求闘争と災害対策について、高見沢浩一中執が長野での「台風19号災害復興要求者組合」の取り組みを報告し自分たちの議員を送り出してたたかう方針を明らかにしました。

 規約の改正案と役員人事案、会計についての報告と予算案のあと、全体討論が行われました。また、「共に8・6ヒロシマへ」「全国の婦人は団結して要求闘争を実現する」「命を守れ、暮らしを守れ」の3本の決議案が読み上げられました。

 全ての議案は一括採択され、全国連は村上委員長、楠木書記長を先頭とする新たな指導体制のもと「新たな挑戦―5ヵ年決戦」を完遂するたたかいへと踏み出しました。

2021年07月の記事

狭山要請行動の報告

◎期日  2021年7月12日(月)
◎参加者 5名~検察がコロナを理由に人数制限

1,東京高裁(11:00~)

○当日の朝、東京高裁刑事部の職員がコロナに感染したということで延期の電話が入ったが、要請書を受け取れと要求し、短時間の要請行動をすることができた。

○対応は、御厨(みくりや。訟廷管理官の上司の次席書記官)、山崎、西田。

○要請書を各自読み上げて提出した。

2,東京高検(13:15~)

○対応は、田澤検事、事務官2名

(要請団)①証拠開示をすること、②昨年の検察意見書で水洗いを出してきたが、なぜ科学的な反論を出さなかったのか。水洗いを裏付ける実験をやったのか。

(検事)①まず証拠開示については、弁護団からスコップの土壌に関する開示要請が出されていたが、すでに4月に「不見当」という回答を出している。あれば開示するが、なかった。
②万年筆のインクについて、今年6月30日に2度目の検察意見書を出した。水洗いについては、昨年5月に前任の検事が特に実験はやらないで意見書を出したが、今回も必要がないと判断して前回の意見書をふまえて、実験はしないで出した。万年筆の同一性については、他の証拠も含めて証明されている。万年筆の発見は「秘密の暴露」に当たるし、発見経過に関する反論も含めて、かなりの分量を書いた。

(要請団)水洗いでインクがなくなるなどは空論だ。我々も実際に実験してみたが、インクはなくならなかった。水洗いを主張するなら裏付けの実験を行え。それでインクがなくならなかったら水洗いを撤回すべきだ。

(検事)要請は承っておく。現時点では、実験は必要ないと思っている。万年筆の同一性は充分に証明されている。

(要請団)反論の鑑定を出すといって2年間も引き延ばしてきた。下山鑑定に対して、科学的に反論すべきだ。

(検事)私は前任者から今年の1月に正式に引き継いだが、昨年の12月頃から狭山の資料は読み込んできた。前回の4月の要請行動の後も読み込んで、下山鑑定や福江鑑定をはじめ、ほぼすべての鑑定や資料を読み終えて、頭に入れた。事件の全体の構成や各証拠の関連性なども分かっている。
 インクについては、昨年の12月に弁護団から出された意見書に対して6月に新たな反論の意見書を出したが、ここでも水洗いについては前提としてその主張を維持している。

(要請団)これまでのインク補充説は間違いだったと認めるのか。

(検事)補充の可能性と、水洗いによるクロムの不検出は、両方の可能性がある。昨年5月の意見書も、矛盾しないという内容だ。

(要請団)あなたは万年筆を使ったことがあるか。水洗いして別のインクを入れたことがあるか。

(検事)使ったことはあるが、入れ替えたことはない。

(要請団)私はある。水洗いし、一晩中、水に浸けていてもインクはなくならなかった。ペン先の溝にこびりついたインクは、それくらいではなくならない。まして学校で下校までの間の水洗いでなくなるというのは、頭の中だけの空想、机上の空論だ。
 現在のように、検察意見書に反論する弁護団意見書に、また検察が再反論の意見書を出すというのはめずらしいのではないか。

(検察)私は今までほぼすべての弁護団の意見を読んで、頭に入っている。これは(検事としても)めずらしい。事件の構図は分かっているので、科警研の鑑定も含めて、1月に死因(殺害方法)、3月に筆跡、6月に万年筆インクなど、必要で検討が終わったものについて出させてもらった。今後も、たとえば昨年12月に弁護団から流王報告書(死体運搬)が出されているので、必要があれば書くつもりだ。他の証拠についても、必要があれば再反論を出していく。

(要請団)インク問題も、6月の検察意見書に対してこれから弁護団が再反論を出したら、また再々反論を出すこともあるのか。

(検察)可能性はある。

(要請団)各証拠の個別のやりとりの後に、最終意見書を出すということになるのか。

(検事)そうだ。最終意見書を出すことは法的にも決まっているし、これまでの三者協議でも検察が最終意見書を出すことになっている。
 
(要請団)万年筆専門店にも聞いたが、水洗いで、完全にインクを洗い流すことはムリだと言っている。水洗いを主張するなら実験をやること、そうでないなら、空想の水洗いは撤回することを要求する。                                             以上



全国連第30回全国大会開かれる!

     2021年7月25日(日) 大東市立市民会館にて

第2次狭山意見広告実現へラストスパート!

基調報告                新書記長 楠木 吉秀

 コロナ禍のなか、全国からご苦労様です。基調報告の冒頭に、私たちは一昨年12月に瀬川委員長、昨年9月に中田書記長、この19日には片岡副委員長を亡くしました。改めて、哀悼の意を表します。
 これは全国連創立いらい、もっとも大きな出来事のひとつです。全国連にとって、失ったものはとても大きい。
 しかし、私たちは、遺された者の使命として、力を合わせ、運動を続けなければならなりません。瀬川さんも中田さんも片岡さんも、全国連の運動のなかで生き続けます。たとえば狭山意見広告運動のなかに、日常活動のなかにも、よみがえり、生き続けます。我々ひとりひとりと全国連は、みんなそういう関係で存在しています。
 とりわけ、三人は死の瞬間まで、委員長、書記長、副委員長でした。最後の最後まで、全国連でした。三人の示した道に立ち返り、我々みんなの手本にしましょう。
 新型コロナウイルスが発生し、世界中に感染が拡大しています。 全国連にとっても、確かに甚大な影響を受けています。会議や集会においても、デモや街宣や交渉においても、また個別訪問においても、大きな制約を受けてきました。これが長期におよぶ場合、自粛ばかりでは大衆運動は衰退してしまいます。
 ピンチはチャンス。いまや、本気でそう考え、知恵をしぼり、団結してコロナ禍をチャンスに転化する時が来ました。
 感染対策はしっかりやりつつ、創意工夫をして、集まり、会議・集会・デモ・オルグをやりきろう。核になる集まりがまずあって、それを命がけで貫徹して、それを囲む形でどうしても集まれない人はリモートで参加しましょう。
 まず、がんばって集まろう。それにプラスして、リモート参加で拡大しましょう。

部落解放運動をとりまく情勢

 「アメリカファースト」のトランプにかわって、バイデンはどんな政治をやろうとしているのか。バイデンは就任早々、全世界をまきこんだ「新冷戦」とも言われる、中国封じ込めを強行しています。
 「自由で開かれたインド太平洋」とは、具体的な中国包囲網の形成です。日米にオーストラリア、インドを加えた4カ国による中国包囲体制をスタートした。さらにイギリス、フランスなどを組み入れようとしている。このようにアメリカ・バイデン政権は、世界戦争の火付け役になろうとしています。
 他方、アメリカでは、反黒人差別の運動が広がっています。昨年5月、黒人のジョージ・フロイド氏が、白人の警官に殺害されました。目撃者がスマホで撮影した動画で、警官が9分もの間、フロイド氏の首を圧迫していたことを証明しました。その動画は、またたく間に、全米に広がる運動のきっかけになりました。 
 菅政権は、そういうアメリカと組んで、戦争をする国づくりにやっきになっています。
 4月16日には、日米首脳会談が行われ、共同声明が発表された。「日米同盟を新たにする。日本は自らの防衛力強化を決意した」とうたっています。
 日米同盟は中国包囲網の中心にすえられジャンプした新たな軍事同盟として世界に宣言された。
 オリンピックが始まりました。そのなかでも、忘れてはいけないのは、憲法改悪のことです。オリンピックの後には、衆議院選挙があります。菅政権はオリンピックを精一杯利用して、選挙・改憲への上げ潮を期待しています。そんな輩の都合のために、国民が感染爆発にさらされてもいいのか。このオリンピックは中止すべきです。

今、部落の置かれた状態

 今、私たちの住む部落は、どんな状態に置かれているのでしょうか。都市部、農村部を問わず、住民の高齢化率がますます高くなっています。しかも、お年寄りの一人暮らしが非常に多い。
 では、若者はどうか。一方では、働き口を求めてムラから出ていかざるを得ません。これに応能応益による、労働者層の追い出しが拍車をかけます。
 他方、最終学歴が中卒という若者が10%になり、一般平均の2倍になっています。またムラの青年の3人に2人が非正規雇用で、一般平均の1・5倍から2倍になっています。完全失業率は、全国平均の3倍にものぼっています。こうしたなかで、ムラのなかにほとんど青年がいなくなるか、居ても、非正規と低賃金に置かれムラには寝に帰るだけか、失業中という実態です。
 これらは、ムラの生活水準に、深刻な影響を与えます。年収200万円以下が半数にのぼっています。加えて、都市部では一般の貧困層が、ムラに流入しています。
 一言で言えば、高齢化と貧困がますますムラを覆っています。
 その原因はどこにあるのでしょう。アベノミクスや、働き方改革は、一握りの大資本家だけを肥え太らせ、「中間層」をどんどん分解し貧困に追いやります。アメリカを筆頭に、世界中で新自由主義による、貧困の増大が恐ろしいことになっています。それが、最底辺の部落にしわ寄せを集中する、この点が、真の原因なのです。安倍や菅の政治が、今のムラの現実をつくり出しているのです。
 このような困難にあっても、ムラのお年寄りや青年は、決して単に救済の対象ではありません。今の目の前のムラの実態は、支配階級がつくり出した差別の再生産そのものです。そして、現に住むムラの人々は、差別と向きあう自己解放の主人公です。全国連は、その人々の手先として、共に泣き共に笑い、共に悪戦苦闘しながら、旗を振り、悪政を打ち負かし、解放へと導かなくてはなりません。

部落差別の実態

では、部落差別はどうでしょうか。
 昨年11月、茨城県五霞町の介護施設で、一般地区の通所者が、部落の地名をあげて差別発言しました。被害者は86歳。翌朝早く、支部長宅を訪ね、「この年になって差別を受けるとは思わなかった。悔しくて、悔しくて」と涙ながらに訴えました。
 支部長はさっそく介護施設と社協に行って事情を聞きました。相手が80歳を超えることから、本人への働きかけは行わず、施設や社協の職員が学習を進め、全国連の研修会にも参加することを確認しました。被害者にもこれを報告し、被害者は通所を再開しました。
 部落の若者の間でも、5人に1人は、差別体験があると言われています。茨城のように居住をめぐって、また結婚や就職をめぐって、部落差別は根強く残っています。
 もっとも悪質なのは、ネットでの差別事件です。ここでは、日々、差別が溢れかえっています。示現舎・宮部、三品による新たな「地名総鑑」事件、その開き直りの数々は、まさに確信犯による差別事件の最たるものです。
 アメリカの学会誌に、極悪の差別論文が載せられていることが発覚しました。筆者は、大学教授、マーク・ラムザイヤーです。
 その要旨は「部落の解放組織を立ち上げた1922年に始まり、2,3年も経たないうちに、暴力的な糾弾と多額の金銭要求を組み合わせた、恐ろしい恐喝マシーンに変貌した」というものです。狭山事件についても「石川は、少女を強姦殺害したギャングの一部であったことは疑いの余地はない」と、暴言をならべています。
 一から十まで、部落にたいする偏見に満ち満ちたものであり、およそ学術論文とは縁もゆかりもない代物です。私たちは、このような科学とは無縁な差別論文が、平然と学会誌に掲載されることを問題にし、糾弾しなければなりません。宮部と同類の確信犯が、のうのうと学者面をして存在することを許せません。
 以上のように、これでも「差別は無くなりつつある」と誰が言えるでしょう。差別のあらわれ方は、多少、昔とは違うかもしれません。しかし、だからと言って、差別は無くなりつつあるのではなく、むしろ自分の姿を隠したり、宮部のように「部落民」を詐称したり、ラムザイヤーのように学者を装って言いたい放題と、陰湿で挑戦的になっています。

どんな解放運動をするのか 目の前の現実と向き合う

 では、どんな運動をすればよいのでしょうか
 まずこのような厳しい現実に対して、どういう態度をとるのかということです。解放同盟本部派では、どうでしょうか。何ひとつ真剣に見ようとしない、困った人がいてもお手上げ、見捨てて逃げてしまう。
 全国連は逃げません。まず、問題を共有し、相手とともに困難に向き合うことから始めます。住宅、医療、介護、福祉、労働、教育、災害、差別事件、コロナ・・・あらゆる問題で、困難と向き合い、相手とよく相談し、共に解決の道をさがします。絶望的な問題でも、一歩前に進む道をさがします。「法のない時代」、そうした一見徒労とも思えるような格闘なしには、展望は開けません。
 こうしたムラと向き合い、七転八倒する、この苦闘を抜きには、「法なき」時代の部落解放運動は、そもそも成立しません。
少数でも運動全体の利害を代表
 次に、どんなに少数でも、全国連はムラ全体、運動全体をしょって立つということです。
 ムラのお年寄りや青年、婦人は、どんな困難にあっても、解放の主人公です。自己解放闘争の主体になりうる存在です。
 故瀬川委員長や中田書記長は、そうした人々を見事に代表する、大衆的解放運動のリーダーでした。
 これにたいして、解放同盟本部派は、朝田理論いらい、「部落が差別されるのは、スラムのような生活だから」「市民的権利を行政的に不完全にしか保証されていないから」としてきました。だから、部落の生活改善が一定進めば、当然のように部落差別は薄められ、解消していくということになります。「日本が近代的に発展していけば、部落差別も無くなっていく」という、日本共産党に典型的な解消論のなかに、大きくは解同本部派も属しています。
 劣悪な生活実態も、市民的権利の剥奪も、確かに部落差別の重要な要素には違いありません。しかし、それはあくまで部落差別の一部にほかなりません。
 およそありとあらゆる、部落民が受ける身分的差別のあらわれこそが、部落差別なのです。市民的権利の剥奪だけでもない。就職の危機均等の剥奪だけでもない。生活苦・貧困の問題だけでもない。おくれた封建的意識や観念、因習の問題だけでもない。それらを含む、政治、経済、イデオロギーなどの全社会場面において、部落民が受ける、身分を理由とした全人格的な抑圧こそが部落差別なのです。
 ですから、こんにちの部落の現実は、差別の解消とは考えません。身分的差別が根深く現存していると考えます。生活、就職、結婚、どの場面においてもそうです。そこに立っているからこそ、全国連はムラと向き合い、大衆の気分を共有できるのです。
 ですからまた、全国連は、身分的差別を撤廃する、部落解放運動の利害全体を体現しています。もはやそのことを体現・代表するものは、他にはいません。部落解放運動とは、身分的差別のあらゆる表れとたたかい、身分的差別を無くしていく部落民の自己解放闘争です。全国連は、その闘争全体をしょって立ちます。

<新たな挑戦>を完遂しよう

 こうした、言わば当たり前の解放運動をしよう、そこに原点回帰したのが、10年前、第21回大会いらいの<新たな挑戦>でした。それは、処分闘争いらいの「左翼少数派」「解同批判勢力」のあり方からジャンプする<新たな挑戦>でした。また「法なき時代」、解同本部派の著しい衰退、部落大衆の潮が引くような運動離れにあって、私たちの立ち位置を変え、いかに少数でも、「300万の部落解放運動」になるという<新たな挑戦>でした。
 それから、はや10年を迎えます。10年の間に、全国連は、狭山、災害対策、沖縄連帯など、必死で前を向いてきました。この10年には、瀬川さん、中田さん、石川辰衛さん、片岡さん、金平さん、高橋さんをはじめ、多くの仲間を失いました。私たちは、その試練をくぐり、仲間の遺志を引き継いで次に向かっています。<新たな挑戦>を忘れず、その完遂を目指して、頑張りましょう。

2021年度の課題・獲得目標

 では、それを実現するために、2021年度はどんな課題・獲得目標をもって、たたかうのでしょうか。
 その基準として、私たちは、4年前の第26回大会において、<新たな挑戦>を具体化する、3つの方針を確立しました。
・第3次狭山再審で必勝し、差別糾弾闘争を復権する
・住宅家賃闘争を超える生活要求闘争の再構築
・沖縄連帯・改憲阻止    この3つです。
 しかも、この3つを5年間のうちに実際に達成する、5ヶ年決戦として臨むことを決断しました。
 そして、狭山闘争では、とりわけ意見広告運動の成功として、本部派をも揺るがし、事実調べへの路をこじ開けました。
 住宅、医療・介護・福祉、労働をめぐって、新たな団結を模索してきました。とりわけ、災害対策で可能性を切り開きつつあります。
 青年部のはじめた沖縄行動を、全国連全体のとりくみにし、選挙闘争では大胆で踏み込んだかかわりを始めました。
 長い目で見た時、私たちは、着実に進んできました。今年は、5ヶ年決戦の5年目、最終年度です。コロナ禍だからと、泣き言はやめましょう。5ヶ年決戦の決着をつける。それに相応しい獅子奮迅のとりくみ。この戦闘精神で構えようではありませんか。

下山鑑定人尋問を実現しよう

 その第1は、第二次狭山意見広告運動を何としても成功させ、下山鑑定人の尋問を実現する、このことです。全国連は言ったことはやる。大マジで事実調べを切り開きます。
 逆に言えば、その本気さがなければ、そもそも、第二次意見広告運動などとりくみません。およそ、全国連の年間会計に匹敵する資金が必要なことを、無謀にも、一度ならず二度までも、私たちは決断しました。決断までには、七転八倒、悶絶の苦しみでした。
 ここには、全国連の命運かけた、狭山勝利への執念があります。その本気さは、一回の線香花火よりも、2回目の大輪の花によってこそ、開示されます。
 すべての同盟員の皆さん!共にたたかう仲間の皆さん!狭山闘争の行方を決めるのは、この全国連の本気さ、皆さんの本気さ、これではないでしょうか。裁判官でも検事でも弁護士でもない、「このためなら、石川一雄さんと共に死んでもかまわない」という決死の覚悟の、私たち一人一人ではないでしょうか。
 下山鑑定人尋問の実現なしには、他の事実調べは開けません。
 詳しくは、後の方針論に譲りますが、検察意見書は、この土俵からの逃げであり、科学的論証や社会的常識とのやり合いから逃げて、推論という権力の意志で片をつけてしまおうという魂胆です。
 このすり替えを絶対に許しません。それを許さない力をどうやってつくり出すのか。それは、意見広告にこめた圧倒的正義の声であり、要請行動・中央闘争や草の根運動に示す熱意・迫力です。検察意見書は意見広告で粉砕します。要請行動で粉砕します。それらの発信力で、世界を揺るがし、粉砕します。
 賛同金は、現時点で目標の9割をこえました。全国各地で蜂起し、日々増えています。9月末までこの蜂起戦をやりぬき、皆の総力で目標を達成し、10月掲載を実現しましょう。さらに、10・31中央闘争-11・1要請行動で、事実調べの扉を押し開けましょう。

コロナ禍を新たな要求闘争に

 第2に、要求闘争の領域では、どうでしょうか。
 同和住宅の家賃値上げ・応能応益制の導入にたいしては、同住連を結成し、全国一律の反対運動にとりくみました。その意義はこんにちもなお、色あせるものではありません。
 これから、コロナ対策のとりくみが大きな課題になります。茨城の米買い付け業者は、この秋に存続問題になります。ほかでも、飲食業をはじめ、感染の拡大につれて、同様の困難に直面することでしょう。労働者の収入減や雇止めも、恐るべきことになります。
 これにたいして対応力を持たなければ、たちまち大衆から見捨てられるかもしれません。
 その時、自分だけで抱え込まずに、全国組織としての情報発信がまず必要です。すぐ解決の方法が見つからなくても、情報発信・経験交流のなかから、何か良い知恵が出てくるはずです。ケースによっては、一人一人への個別対応に止まらず、同じ境遇の人々が集まり、そこで喧々諤々の論議をして、「一度、皆で役所や県に交渉に行こう」「そのためには世話役を選び、組合をつくろう」となるかもしれません。あるいは、「ここだけが困っているわけではない。○○屋も困っている。○○屋にも一度相談してみよう」と共同闘争の輪を広げる必要がでてくるかもしれません。
 感染が拡大し、大きな社会問題・政治問題になるにつれ、「保障しろ」「仕事よこせ」「生きさせろ」の要求闘争の芽が育ってくるはずです。コロナ禍は、災い転じて、法以降の解体一方だったムラの団結を、まったく新たな形で取り戻していく契機となるのです。
 長野の、災害復興のとりくみは、突然の台風災害にたいする「二度と壊れない堤防をつくれ」のせっぱつまった要求から、部落を超えた地域一帯の要求闘争、共同闘争に発展しようとしています。それは、長野だけの例外ではありません。まもなく、全国で必要になってきます。大いに夢の翼を広げて、次に進んでいきましょう。 

衆議院選挙の一大インパクトに

 秋の衆議院選挙は、いよいよ憲法の改悪が焦点になります。自民党は「改憲4項目」を掲げ、憲法9条への自衛隊明記、緊急事態法創設をうたっています。
 自衛隊明記とは、帝国軍隊の復活のことであり、緊急事態法創設とは災害対策を口実にした戒厳令の復活のことです。自民党の思う通りの改憲を許せば、まさにいつか来た道です。戦争国家への突進であり、国家優先で人権抑圧がまかり通る社会への突進です。
 全国連は、改憲に反対する候補・党を支持し、自らの選挙としてとりくみます。支部のビラで、支持する候補を公表します。ムラの内外に、投票を呼びかけます。電話かけをします。場合によっては、支持候補の事務所を訪問し、可能な限りで選挙運動に協力します。支持候補を呼んで、演説会も開きます。期日前投票や投票日の働きかけも組織します。
 一歩も二歩も前に出て、自分の候補として当選をかちとります。この選挙のたたかい方を通して、各地の改憲反対の陣形にかみこみ、その一角に加わります。このように、音のする選挙闘争にとりくみ、国民投票への予行演習をします。
 日本共産党や解同本部派との関係など、戸惑うこともあるでしょうが、そこで足踏みしている場合ではありません。彼らがどう思おうと、全国連は何のてらいも無く、改憲反対の選挙を堂々とたたかいます。これを2021年度の大きな課題の3つ目とします。

示現舎を糾弾・一掃しよう

 示現舎への再質問の原案はつくりました。これをたたき台に、「ショート質問状」を皆さんから募集します。
 本部が長い文書でやりあうだけではなく、大勢の参戦が必要です。宮部にたいして、「自分ならここが聞きたい」の一言でいい、本部に集中してほしい。本部でとりまとめて、質問状を完成します。
 9月27日、本部派がおこした裁判の判決があります。判決で宮部が変わることはありえません。私たちの手で、徹底糾弾・追放しましょう。
組織建設についてふれます
 荒本支部は、昨年8・30に支部大会をおこない、今年は8・29に予定しています。
 茨城県連も、昨年7・5に、今年は7・4に、定期大会を行った。
 コロナ禍でお休みしたところも、今年は断固やりましょう。最近やってないところも、全支部でやりましょう。
 三大闘争をただやれば、自然に組織ができるわけではない。やはり、支部大会を節目に、例会、新聞、会費集めを毎月きちんと継続していくことで組織は組織として成立します。
 逆にいえば、支部大会のできる月例活動が肝心です。また、婦人、青年は、支部の宝です。支部が責任もって、交流会や茶話会からでもけっこう、集まる場をつくっていきましょう。
 本部建設について、去年は暫定措置をとりましたが、この30回大会では、正式な役員人事をおこないます。瀬川さん中田さんをひきつぎ、次世代に橋渡しとなるような新体制を確立しましょう。
 次に、新聞編集体制の確立です。スタッフは、何とか3名で再スタートしました。たってのお願いです。各地に通信員を1人、取材、原稿・写真の作成を特別に位置付けして、任命してください。
 本部会計は、皆さんの協力で、大会を無事迎えることができました。人件費の大幅削減によって、会費等がとどこうりなく集中されれば、ギリギリで運営できます。月づきの実行を心から切にお願いします。
 最後に、沖縄、三里塚と連帯し、たたかう在日朝鮮・アジアの人々との連帯を誓って、終わります。