2020年06月の記事

6.8東京高裁・高検狭山要請行動報告

■全国連婦人部からの報告
 わたしたち全国連婦人部は、6月8日、7回目となる要請行動をたたかい抜きました。
 当初5月に予定していた要請行動でしたが、コロナ情勢で5月は他県への移動もまだ厳しい状況ということもあり、6月に延期し本部と合同での要請行動となりました。 6月後藤眞理子裁判長の退官と三者協議前というギリギリの緊迫した状況での要請行動です。
 集合場所の弁護士会館に着くなり驚いたのはマスクをした大量の私服警官の姿でした。午前中は検察庁への要請行動です。検察側の要請で人数制限が設けられ、たった4名のみの要請団に対して9名もの私服刑事がわたしたちを取り囲んでいました。この状況を見ても狭山情勢の緊迫と国家権力の意思が見て取れます。狭山事件が国をあげた権力犯罪だということが浮き彫りです。
 私たちは検察庁前で怒りのシュプレヒコールを挙げ、要請行動へうって出ました。

「全証拠を出せ」北検事を追及
 関西から2名の婦人、茨城から2名の4名で臨みました。コロナ禍で参加したくても上京できなかった婦人たちの思いも要請文に込めてもらい、その要請文を持って臨みました。
 まず、前回3月の要請行動の時に北検事へ不見当とされている死体カラー写真、8ミリフイルム、ルミノール検査報告書などの証拠を埼玉県警やさいたま地検に探しに行くよう要請した件について回答を求めました。
 北検事は、「狭山事件から57年もたっているので、どこかにあると言われても・・」「証拠は全部高検に集めているので、他にはないと思う」、を繰り返すのみで、のらりくらりと回答してくるのみです。
 要請団から、他の再審事件でも、「ない」とされていた証拠が後から出てきている、東京高検にある証拠がすべてで、他にはないという認識は改めるべき。多くの証拠が警察に残っているという認識を持つべきだ、と断罪しました。
 また下山第2鑑定に対する意見書の提出については、「もう反論を提出した」と答えました。検察は当時のインク瓶を探して下山鑑定に対する反証を提出する、とさんざん時間稼ぎを行い、結局見つからないからと反証ではなく反論を提出した、という。
 要請団は、下山鑑定は重大な証拠だ。検察は真摯に向き合え。石川さんはすでに80歳をこえ、今コロナで運動もできないので体力も落ちる。切実な状況だ。検察は、ムダな反証など時間稼ぎをやめるべきだと訴えました。
 そして最後に、山口、奈良、大阪・野崎、長野、茨城、荒本、全国から計6通の要請文を読み上げ、提出しました。

「後藤裁判長、退官前に鑑定人尋問を決定せよ」
 午後からは、高等裁判所への要請行動です。東京高検から東京高裁へ移動する時も、私服刑事がぞろぞろと要請団の周りを囲みながら執拗についてきました。正当な要請行動に警察権力が圧力をかけ、監視してくることなど許されることではありません。怒りを高裁要請行動へぶつけました。
 高裁へは、人数制限もなく、茨城と東京・江戸川からあらたに要請団に加わり、計10名で要請行動を行いました。全員、高裁前でシュプレヒコールを挙げ士気を高めあいました。
 まず冒頭、後藤裁判長に対し、「退官までの2週間強、鑑定人尋問を決定するなど、やれることはまだまだある。後藤裁判長は、この2年半、なにもしてこなかった。」「下山鑑定に関して、裁判所の中に蛍光X線分析装置を持ち込んで、裁判所として鑑定もやれるはず。白黒はっきりさせるためにも、ぜひその実験をやるべきだ」と訴えました。
 要請団は次々と怒りを表し、茨城の婦人は「裁判所の対応はおざなりだ。次から次へ、ただ裁判官がつなげていくだけで、真剣さが感じられない。本当に解決しようという気がない。何十年もわたしたちはたたかっている。もう少し真剣にやってほしい」と詰め寄りました。
 東京からは「後藤裁判長は、狭山を担当して2年半になるが、このまま何もしないで退官していいのか」「下山鑑定が出されたのだから、退官前に下山鑑定人尋問の決定を出せ、次の三者協議の場でそれを表明せよ」と追及しました。
 茨城からは「示現舎の部落リストを利用した差別事件が起きた。狭山事件が起きた当時はもっと露骨な差別があり、その中で石川さんは犯人にされた。早く事実調べを行い、再審を開始しろ」と訴えました。

「このまま退官など許さない!」
 最後に、山口、奈良、大阪・野崎、長野、茨城、荒本の婦人、茨城県連、全国から計8通の要請文を読み上げ提出しました。
 今回の要請行動は、後藤眞理子裁判長6月退官前の最後の三者協議が行われるギリギリのタイミングでたたかいぬかれ、「このまま退官することは許さない! 事実調べ、下山鑑定人尋問をやる決定を出せ! 次の裁判官へつなげろ!」を突きつけるものとなりました。
 またコロナ情勢下で東京への移動も厳しい中、万全の感染予防対策を行いたたかいぬかれた要請行動でした。

茨城県連婦人部の東京高検あて要請文(全文)

東京高等検察庁 狭山事件担当検事御中                           
2020年6月8日
部落解放同盟全国連合会 茨城県連合会
婦人部長  松本 節子

       要請文
 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が失業の危機にあり、特に非正規労働者や立場の弱い者は生きていくことさえ困難になっています。私たちの部落の中でも商売ができなくなったり、解雇されたり、雇い止めにあっている人が出ています。国の給付事業から取り残されている人たちもたくさんいます。コロナ問題は、不公平な格差社会をあぶりだしています。
 コロナ状況下での不満や不安を背景にして、差別も拡大しています。特にネット上では、差別し放題です。
また検察トップの不祥事も多くの国民を怒らせています。賭博行為をして法を犯しても罰せられることもない。こんな検事長の東京高検が、狭山の石川さんを裁くことができるのでしょうか。

 検察は、下山鑑定に対して「反論の鑑定をやる」と言って時間を引き延ばしながら、結局鑑定はできなかったと聞きます。もういい加減に悪あがきはやめて、下山鑑定の正しさを認めるべきです。検察のメンツのためにそれができないなら、少なくとも万年筆のインクについて、裁判所に第三者があらためて鑑定するように要求すべきです。

 あなたたち検察官は、1、2年もしないで人事異動によって担当が変わります。そんな短い間に、57年にもなる狭山裁判のぼう大な内容をきちんと勉強することなどできないでしょう。だからあなたたちがしていることは、事件の真実をつかもうとすることではなくて、先輩の検察官の有罪の主張を守ること、それをただくり返すことだけではないですか。
 石川一雄さんは、すでに80歳を超えました。私たち婦人部にも石川さんと同じ年代の婦人が、部落差別をなくすためにがんばっています。
 私たちは、検察がすべての証拠を開示して、石川さんの無実を認めることを強く要請します。





5・23~6月後藤裁判長退官に向けて

 狭山闘争の全国的高揚をかちとろう!

石川一雄さん不当逮捕57ヶ年糾弾!

 いま新型コロナウイルスの脅威が日本と世界を覆い、狭山闘争をはじめほとんどの大衆的なたたかいが展開できないという事態が生じています。

 その中で私たちは、5・23石川一雄さん不当逮捕57ヵ年糾弾、そして6月東京高裁・後藤裁判長退官への闘いを断固としてやりぬきましょう。

新型コロナウイルス問題

 コロナ禍は病気の発症という問題だけでなく、様々な社会的問題を生み出しています。感染者や医療従事者や家族へのあからさまな差別、政府の「補償なき自粛要請」による生業の破綻や労働者の首切り等々。それらは5月、6月にかけてさらに爆発的なものになろうとしています。

 「このままでは仕事も金もなく生きていけない」という声があふれています。支援制度の申請も、文字を奪われている人やネットなど使えない人にとってはできません。私たちは、生活を維持するための制度がいかに不十分でも、使えるものは何でも使い、村内外の人たちの生活と命を守り抜くことが緊急の課題です。

 5―6月狭山闘争は、このような村の内外でコロナ禍によって苦しい生活に追い込まれている人々の支援、共闘と一体で闘われなくてはなりません。

 当面、人数を集めることに主眼をおいた闘いから、各地各人の生活防衛と結びついた闘いを中心にとりくんでいきましょう。

 国民の命の危機よりも権力の維持を優先させる安倍内閣への怒りを組織し、それと一体で国家権力による差別の象徴=狭山差別裁判糾弾への決起を訴えていきましょう。

狭山史上最大のチャンスと危機

 私たちがこの間、声を大にして訴えてきたように、現在の狭山第3次再審における攻防の焦点は下山鑑定であり、下山鑑定人の尋問をかちとることです。ここに一切の力を集中しなければなりません。

 石川さん宅から出てきた万年筆が被害者のものではなかったという証明は、すなわち権力が証拠をねつ造したということを明らかにするものです。これこそが、その科学的証明力によって石川さんの無実を明らかにし、灰色無罪ではない完全無罪をかちとり、部落差別に貫かれた権力犯罪に断を下す道です。

 検察はこれまで「事件当時のインクを探している」などと言いながら引き延ばしをしてきました。しかし3月の三者協議では、インク探しはあきらめ、「検察官の意見を5月中に提出する」としました。

 下山鑑定の正しさに追いつめられた検察は、反論の鑑定も出せずにペテン的なケチつけ反論を出し、東京高裁にそれを全面的に認めてもらうという意図が丸出しです。

 「5月検察意見書」を全国の怒りで徹底的に粉砕しましょう。

 後藤裁判長はコロナ禍を幸いとして、このまま何もせずに6月退官で逃げ切ろうとしています。「ふざけるな!退官前に下山鑑定人尋問を決定せよ」という声を突きつけていきましょう。

 そしてこの中で、検察の引き延ばしにつき従い、下山鑑定を「多くの証拠の一つ」として後景化するような一部の敗北主義的な潮流を粉砕していきましょう。

 私たちは今、下山鑑定を得たことによって狭山闘争史上もっとも勝利をかちとるチャンスをつかんでいます。これまでくり返されてきた権力への幻想や権力とのたたかいを回避しようとする日和見主義こそが、狭山闘争を敗北させてきたことをはっきりさせ、この第3次再審でこそ何としても勝利をかちとりましょう。

第2次意見広告運動の再出発を

 私たちは、昨年9月の拡中委で、第2次意見広告運動にとりくむことを正式に決定しました。それは全国連の力量で本当にできるのか、という真剣な議論の末に決定されたものです。

 各地ではすでにとりくみが始まっています。しかし現在のコロナ禍の中で、一定の中断的な状況を余儀なくされています。

 本部では、先にも述べたように、コロナによる生活破壊との断固たるたたかいに立ち上がること、それと結びつけた第2次意見広告運動の再出発を宣言します。