2023年5月の記事


2023年度運動方針(案)の基調

第32回大会の獲得目標

1、部落の実態・ニーズや支部の実状に応じた、きめ細かく、真剣な地域活動の方針をつくり出すこと。
2、狭山決戦の必勝態勢と方針を確立すること。狭山闘争基軸の三大闘争路線を、はっきりと確立し、組織建設路線にまで高めること。
3、日帝・岸田の戦争と生活破壊の大暴走と対決し、地方選必勝をかちとること。



部落解放運動をとりまく情勢と部落の実態

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は、核戦争の危機をもはらみながら、激化拡大の一途をたどっています。他方、「台湾有事」や朝鮮民主主義人民共和国のミサイルを口実にした、岸田政権の大軍拡への暴走が目の前で始まりました。
 また、西欧やアメリカ、ブラジルでの極右、差別排外主義の台頭は決して対岸の火ではありません。
 詳しくは情勢論でふれられます。この世界戦争の危機と全世界的な物価高騰・生活破壊の嵐のなかで、部落は今、どんな状態に置かれているでしょうか。
 

部落、とくに青年層は

     どんな状態に置かれているでしょうか


 政府の公表でも、非正規雇用の割合は約4割、2000万人を超えます。部落の青年の場合はその約2倍、7~8割が非正規労働者といわれます。加えて、都市部の部落では、公営住宅法(公住法)による労働者層の追い出しが、深刻な影を落としたままです。
 こうした青年層の失業・半失業状態と労働者層の追い出しは、こんにちの部落全体の生活を根底からおびやかしています。
 また、世間の相対的貧困(おおよそ「可処分所得」が世帯年収で127万円以下)が15・7%、2000万人といわれます。国民の6人に1人が貧困ライン以下の生活を余儀なくされていることになります。とくに、ひとり親世帯では2世帯に1世帯といわれます。
 部落のなかでは、単身高齢者世帯が圧倒的に多く、無年金や低額年金で苦しいくらしを余儀なくされ、加えて、公住法の一般公募によって、一般の貧困層の部落への流入が増えつづけています。
 これらの複合要因で部落の生活実態は、総体として相対的貧困の域をこえ、最低限の生活すらままならない絶対的貧困スレスレのなかに置かれている、と言っても過言ではありません。
*こんにち的な青年の労働・生活実態調査が切実に望まれます。
 こうした生活実態のなかで、部落の兄弟姉妹の多くは、生きるだけで精いっぱいの現実にあります。
 70年代の高度成長期、大量の公務員採用(その場合も現業部門が主ですが)の時代とは、一変しています。
 本当に生きるだけで精一杯、青年は結婚も子育ても将来を描けない、その毎日の現実―そこのところの共有。「青年よ生きろ!青年を生かせよ!」なしには、一切は始まりません。他方、狭山街宣で署名する青年、環境問題など世の不条理に怒る青年、青年は熱いマグマを秘めています。決して捨てたもんではない。
 自分もたいへん、だからこそ、石川さんの生い立ちや殺人犯の濡れ衣が、こうした青年層にとって、無関心でいられない情勢が深まっているのです。意見広告でのモニタリング調査でも明らかです。狭山街宣で署名に応じてくれる青年も、まさにそうです。狭山活動家づくりを、青年の組織化のテーマそのものとして、かってその道を歩んだ全国連の老闘士が、はっきりと自覚し、青年層と向き合いましょう。
 解同本部派も、組織の高齢化、部落大衆の運動離れや村出、とりわけ青年層との断絶に悩んではいます。そこで「ムラを出ていった人々と繋がるネットワーク。SNSや文化運動」を方針にしています。外とのネットワークもけっこうですが、しかし、その前に、ムラのなかに元気な運動体がなければはじまらない。元気な全国連(拠点)、そして繋がる(ネットワーク)。それらを結ぶ一本の赤い糸が狭山なのです。


2023年度の運動の基調

 1、活動報告や情勢論をふまえ、それに対応したものに挑戦します。部落のおかれた実態や、支部の実状にマッチした地域活動の創造が求められています。
 昨今、インボイス制度に対する説明会や個別相談会が、一部の支部で開かれています。わからないことは本部に相談してください。インボイス制度は、中小零細業者や個人事業者、フリーランスなどから、根こそぎ消費税をまきあげる大増税であり、とりわけ部落の生業にとって死活問題です。すべての支部でとりあげ、部落の生業・生活防衛の緊急課題としなければなりません。
 また、個人、事業者を問わず、税申告での非課税の追求は生活防衛の一切の基礎になるとりくみです。チラシをまき、相談会や説明会を開催し、納税組合や支部に組織化して、非課税を追求しましょう。非課税から、医療費や家賃の減免などにつながっていきます。茨城での新支部誕生のように、支部建設と結合することはとくに重要です。団結して、生業破壊・生活破壊とたたかいましょう。
 また、例えば高齢者の日常の買い物、使用後の食用油の回収など、各地の村々の多種多様な住民ニーズに応じた、繋がりのチャンネルをつくりだしましょう。

 2、狭山闘争必勝の方針と態勢の確立、そのための戦争・差別と総対決する狭山闘争基軸の三大闘争路線の再確立が求められます。
 昨年の大会では、水平社100年、全国連30年、狭山60年の総括(概要)のうえに、三大闘争路線(糾弾、要求、共同)を新たに再構築し、狭山闘争基軸の三大闘争路線を提起しました。狭山闘争基軸の三大闘争路線―これは、従来と同じように見えて、実は決定的なターニングポイントにほかなりません。5年後、10年後に「あの時が・・・」という新路線なのであります。
 それは、生きて狭山に勝利するという瀬川さん、中田さん、片岡さんへの誓いをかたちにしたものです。84歳になった石川一雄さんへの血盟の証でもあります。私たちのその執念、人生を狭山にかけきる、その覚悟は尋常ではありません。
 意見広告も、大運動誕生も、毎月要請行動も、そのあらわれであり、この覚悟があればこそ実現できたものなのです。この点で、全国連は解同本部派を圧倒しています。全国各地の狭山人の心と繋がっています。
 言い換えれば、狭山闘争がもつ、権力犯罪、差別裁判との不屈非妥協の糾弾闘争のなかに醸成されたものを取り出したということにほかなりません。
 結婚差別をめぐって部落民を誘拐罪にでっちあげた高松差別裁判の糾弾闘争など、戦前の水平社がたたかった差別糾弾闘争は数知れませんが、それらに比しても、狭山闘争は60年におよぶ史上最大の対権力糾弾闘争として、ひときわ高くそびえたっています。そのでかさ、とてつもない大きな意義は計り知れません。
 たとえば狭山闘争が無ければ、解同本部派はとっくの昔に荊冠旗をまいてしまったことでしょう。解同本部派中央が、運動路線を権力とたたかわない、融和主義に総転向しようにも、狭山闘争があるかぎり差別とたたかわざるを得ませんし、部落解放運動として存在し続けます。総じて、戦争・差別洪水にたいする生きた防波堤の役割を、狭山闘争が果たしていることは疑う余地がありません。

 いまひとつ、これは、今日の全国連の背水の陣にたった、組織建設路線でもあります。昨年の10・30現調で、われわれじしん、久方ぶりのとりくみをしたなかで、目から鱗の再発見をしました。
 全国連はまぎれもなく、狭山再審闘争の情勢決定要因になり、自他ともに予想を超えて、存在感をみせつけています。だがその全国連に5年先、10年先はあるのか・・・。その危機に際して、どこに舵を切るのか。本当に思い切った舵切なしには、未来はない。こうした、組織的な現状に目をつぶることはできません。
 その点、30年間やってきたことの延長で、三大闘争をあれこれやっていくだけでは、無力でしかない。背丈に合わない位の運動への挑戦なしに、組織建設は純粋培養ではできません。しかし、ただ運動をやれば組織がついてくるというものでもありません。また、あれこれを無いものねだりしても始まりません。
 全国連の土台となる、組織の再生産構造を、いかにして自前でつくりだすのか。これは、5万人組織建設論いらい、また革共同との断絶いらい、組織の再生産構造がいったん仕切り直しとなるなかで、宿願の課題となってきたのです。
 かつて、政治闘争が組織の再生産の役割を果たすこともありました。〈狭山、三里塚、反天皇〉が、部落青年の共感をよびおこし、合流への水路となりました。また、公住法の改悪=応能応益制の導入に対する同住連のたたかいが、全国各地で大量の新たな人々との出会い、合流への水路となりました。それらにかわって、今の全国連の自力自闘のありかたにそって、自前の再生産構造を持たねばなりません。
 良く考えてみますと、実は、今の全国連が育ってきた原点のなかに、答えがあるのではないでしょうか。それは、狭山闘争のなかに再発見できるのではないでしょうか。
 私たち自身が、狭山で体験した石川さんの無実、権力の差別犯罪への気づき、これを中央闘争、現地調査、署名や学習会の草の根運動などを通して身に着けてきたなかで、はじめて解放戦士として成長してきました。こうしたことの追体験のなかに、明らかにこんにちなお通用する狭山活動家の育成、全国連組織の再生産構造があるのだと確信しています。

 では、いかにして。その具体化にまで踏み込んで論議しましょう。
  現地調査の狭山活動家づくりにとっての、かけがえのない役割です。自分の足で狭山現地を歩いてみよう。自分の目で、万年筆がでてきたとされる鴨居を見てみよう。机上の学習ではなく、現地に行って、自分の体で、無実・差別をつかみとることです。
  狭山DVD「私は無実」を活用し、学習会やオルグの武器にしていきましょう。
 また、狭山大運動の会報を活用し、登場する狭山人の「わたしと狭山」から学んでいきましょう。
  積極的な人を、要請行動に連れて行きましょう。要請行動を学びの場としても工夫しましょう。
 これらを保障するのは、狭山活動家づくりへの中執を先頭とした総力戦です。中執自らが先頭にたつことぬきに、この方針はありません。全国各地に、大量の狭山活動家をつくりだそう。その中心対象は青年層です。5・21狭山現調・現地集会をそのステップに活かしきって、有意義にしていきしょう。

 3、岸田の暴走を地方選で止めよう
 今年は統一地方選挙の年です。4月9日に東京、大阪など、23日に茨城など、9月には17日告示~24日投票で長野市、東大阪市の選挙があります。組織内候補の長野市・中村俊二さん、連帯候補の茨城・土浦市・坂本繁雄さん、東大阪市・松平要さんらの必勝を期して、候補者と地元を先頭に死力を尽くしてたたかいましょう。
 各地の選挙戦じたいのなかみは、当該からの報告を受けて、それに学んでいきましょう。
 そのうえで、全国連の選挙闘争の基本は、(1)住民との生きた繋がりのうえに、候補者を先頭に、住民主人公の選挙戦をたたかう。言い換えれば、住民の自己解放性をトコトン信頼し、そこに徹底依拠して、住民要求の実現のためにたたかう。(2)地方選であっても、悪しき国政の暴走に待ったをかける重要な役割があります。あくまで、当該住民の要求・気運に密着しつつ、岸田政権の目に余る暴走―大軍拡・改憲、原発推進や大増税・物価高騰・生活破壊との対決の場として位置づけてたたかいましょう。(3)こころある人は、「袴田事件」に注目し、「次は狭山だ」と関心を高めています。狭山闘争の要素もとりいれる工夫をしましょう。








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