(2019年6月8日)

第28回全国大会基調報告

 28回大会運動方針(要旨)―中田潔書記長

 解放運動の再生の5年間

 わたし達は2年前の26回大会で、部落解放運動がたいへん重要な段階を迎えていると言うことで、大きくは3つの課題を5年かけてしっかりやっていこうと確認しました。

 一つは、わたし達の生活に大きく関わってくる、いまの政治の非常に危ない動き、特に改憲をすすめる安倍政権のもと、どんどん戦争に向かう、きな臭い政治状況がある。放っておけば憲法が改悪されて、わたし達の暮らしや平和が脅かされる。安倍の憲法改悪の攻撃、日本を戦争のできる国につくりかようとする攻撃としっかりと向かい合って闘っていかなければいけない。この5年間は大事な闘いになる、と確認しました。

 下山鑑定の鑑定人尋問を実現しよう

 二つ目には、5年のうちに狭山に勝利して石川一雄さんの完全無罪を勝ちとってゆこう、と言う事です。

 2年前、石川さんの無実を証明する下山鑑定が提出され、万年筆が被害者のものではなく警察権力がでっち上げたものと言う証拠が明らかにされました。第3次再審では220の新証拠が積み上げられてきました。その中でも決定的なのが下山鑑定です。

 これまでの再審闘争の中でも最大最高の新証拠です。ただこの新証拠を武器にして検察や裁判所を追い詰めていく闘いが弱い、と言うことをわたし達は痛感します。そんなことから2年前の大会の中で、万年筆が警察によってでっち上げられたものだということをもっともっと世の中に知ってもらう、そしていままで狭山を闘ってきた人たちも含めて、今まで以上に取り組んでいかなければならないと思いました。

 狭山意見広告運動という全国連にしては身の丈を超える闘いを去年実現することができました。

第3次再審闘争に勝利するためにはもっと大きな力、世論の盛り上がりをつくり出さなければならない。意見広告で広がった声をもっと大きくして、いよいよ裁判所に事実調べをさせる段階にいま来ています。後藤裁判長は来年6月に定年退官となります。また裁判官が替わってさらに長びかせるわけにはいきません。世論を大きくして事実調べをさせていかなければなりません。今年1年間でどんな闘いができるか。もう一度腹をくくって、身の丈を超えようとも何度でも闘かおうと言うことをみんなで確認したい。

 新しい要求闘争で部落の団結を取り戻そう

 三つ目は、この数年災害が相次いでいます。被害が部落にも襲いかかっています。小さい組織で被災地への支援に限界があり、歯がゆい思いがします。義援金や支援物資を現地に送ったりしましたが、十分とりくみ得ていません。

 法打ち切りから20年、部落の生活は段々厳しさがましています。運動は高齢化とともに、若い人たちがなかなか運動に関わってこないと言う状況の背景に生活の厳しさ、運動どころではない、と言うなかで運動の停滞、若い人たちの運動離れがある。

 法のない時代、その現実に向き合った新しい要求闘争で部落の団結を取り戻していく、繋がりをつくっていくそんな闘いをつくっていかなくてはならない。

 解放運動の再生を5年間の闘いで取り戻していこうと、その折り返し地点が今年の大会です。

安倍9条改憲、戦争国家化攻撃との闘い

 いまの安倍政権の危ない動きについて看過できない、特に今年中にも憲法9条に自衛隊を明記して、合憲化していつでも戦争をできる国にしようとしている。自衛隊を軍隊にしようとしている。

 憲法を変えると言うことは、自衛隊の合憲化だけの問題ではすまない。いろんな法律でどこでも米軍と一緒に戦争をやれるようになってしまう。いままでの歯止めが取っ払われる。私も孫がいますが孫に「何でもっとちゃんと反対してくれなかったのか」と言われないように。今年しっかり頑張らなければ。

 9条のつぎは国民主権そのものも危うくなってくる。

 最近の国会論戦を聞いていると、なぜ憲法に自衛隊を明記しようとするのかと問われて、「教科書には自衛隊は違憲と書かれている、学者の多くは憲法違反との意見が多い、自衛隊募集業務に協力しない自治体が多い、自衛隊は肩身の狭い思いをしている。にもかかわらず、災害が起これば自衛隊に助けを求める。そんな勝手な」というようなことを一国の首相が答弁して、だから自衛隊を憲法に明記するという。こんな薄っぺらな、本音を隠ししたデタラメな答弁で、憲法をいじくり戦争のできる国にしようというのはあってはならない。

 天皇代替わり、天皇制強化との闘い

 もう一つ、4月1日、新元号が発表されますが、現天皇が退位し、息子に天皇を譲るという。天皇の生前退位は、近世以降なかったことだが、この代替わりについて、マスコミが大騒ぎしている。わたしはこの状況に危惧しています。安倍による改憲と戦争国家化と天皇の代替わりとが一つになって動きはじめている。

 全国連は天皇制に反対していますが、天皇制とは何なのか。部落差別との関係を知ってほしいと思います。

 江戸時代には天皇の名前も分からない、知らない。誰が将軍か、誰が天皇か、名前を知らなくても庶民の生活に関係なかった。天皇制は浸透していなかった。

 支配が徳川幕府から明治新政府にかわるとき、支配層がかわっただけでなく、庶民に大きな負担を強いた。新たに税金をかけ、徴兵制をはじめた。明治が始まったが江戸時代よりも庶民の暮らしは苦しくなった。こうした収奪を強めていくために天皇制と言う仕組みが必要だった。

 天皇制の強化の過程で部落はどうだったか。皇族の旅行の道筋に部落がある、目障りだといって焼き討ちした別府・的が浜事件。

 橿原神宮も、神武天皇のお墓だと言って新たに神社を建てる。その神社を見下ろす畝傍山の中腹にあった洞部落を強制的に麓に移転させた。尊くて神である天皇の対局に部落は蔑まれる仕組みが強化された。

 いま、象徴天皇の役割を果たせなくなったと象徴天皇を強調していますが、明治、大正、昭和の天皇制が、戦争に多くの国民を動員し、死に至らしめた。戦争に反対する人、侵略されたアジアの人たちに対して、苛烈な弾圧を加えてきました。過去の「血の歴史」があるなかで、天皇の戦争責任は曖昧にされ、取るべき責任を果たさぬまま、現在の象徴天皇制へと受け継がれてきています。象徴天皇を強調しても過去を清算することはできません。

 天皇代替わりの儀式が1年続きます。天皇がもてはやされればされるほど、わたし達の生活や社会の矛盾も陰に追いやる大きな力が働きます。「くさいものにフタをする」そのフタも大きくなります。

 示現舎・宮部糾弾は第2段階へ

 去年は示現舎・宮部へ糾弾状を集中する闘いを行ないました。

 第2ラウンドは公開質問状を通じて宮部の差別者としての本性を暴いていきます。インターネットでも公開し、宮部と我々がどういうやりとりをしているかも分かるようにして、差別は許したらあかんという声を広げて社会的に孤立化させる、平然と差別をおこない、それを居直る差別者は排除する。

 宮部は、「差別は解放同盟が差別やと騒ぐから差別が残る。いまどき結婚に際して部落を持ち出すから、うざい、ださい、被害妄想だ」と言う。

現実の部落差別を否定して、差別に対する怒りを被害妄想などという輩は、わたし達は野放しにしない。

 その他にも共同闘争の課題もたくさんあるのですが時間がなくなりました。できなかったところは明日の分散会で議論を深めていただくようお願いします。

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