長谷川発言と維新の姿勢を糾弾する声明

声 明

長谷川豊・参議院選挙予定候補者の部落差別発言と日本維新の会の政治姿勢を糾弾する

部落解放同盟全国連合会

中央執行委員長  瀬川  

各種マスコミ報道およびインターネット映像の情報によると、本年2月24日に東京・世田谷区において開催された講演会で、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊・参議院選挙予定候補者(以下、予定候補)が許すことのできない部落差別発言を行っていた。

わが部落解放同盟全国連合会(以下、全国連)は、長谷川予定候補とともに、彼を公認候補として今夏の参議院選挙に立候補させようとしていた日本維新の会(以下、維新)の人権感覚および政治姿勢を問い、以下のとおり糾弾する。

■長谷川予定候補の発言内容はつぎのとおり。

日本には江戸時代にあまりよくない歴史がありました。士農工商の下に、穢多・非人、人間以下の存在がいると。

でも、人間以下と設定された人たちも、性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます。一族野盗郎党となって、十何人で取り囲んで暴行しようとしたとき、侍は大切な妻と子どもを守るためにどうしたのか。侍はもう刀を抜くしかなかった。でも、刀を抜いたときにどうせ死ぬんです。相手はプロなんだから、犯罪の。

もうぶん回すしかないんですよ。ブンブンブンブン、刀ぶん回して時間稼ぎするしかないんです。どうせ死ぬんだから。

でも、自分がどうせ死んだとしても、一秒でも長く時間を稼ぐから、大切な君だけはどうか生き残って欲しい。僕の命は君のものだから、僕の大切な君はかすり傷ひとつ付けないと言って振り回したときに、一切のかすり傷が付かないのが二尺六寸の刀が届かない三尺です。女は三尺下がって歩け。愛の言葉です。

 全身の血が逆流するほどの怒りを覚える。長谷川予定候補はなぜこのような発言を行ったのか。どのような歴史的事実や根拠に基づいての内容なのか。このことをまず明らかにせよ。すでにインターネット・SNSではこの部落差別が世界中に流布・拡散されている。長谷川予定候補はいったいどうやってその責任を取るのか。見解を示せ。

長谷川予定候補はこの発言が各方面から問題視され、数々の批判投稿があったにもかかわらず素直にその犯罪性を認めていたわけではない。事実をごまかし、逆に批判投稿に対して居直り、反撃・攻撃していた。 

■長谷川予定候補の反撃・攻撃投稿内容はつぎのとおり。

「かつてこのような暗い歴史があったという史実を述べる事が貴殿には差別発言ですか。」

「これが反維新のいつものやり方です。こうやって切り取り、悪意を持ってレッテル貼り。」

「江戸時代の時代に暗い歴史があったと述べる部分を切り取り著作者の許諾を取りもせず拡散。犯罪を平気で行うのがこの連中のやり口です。」

「情報ありがとうございます。毅然と対処いたします。」

「切り取りならまだ対応出来ますが、ここまで来ればただの『ねつ造』ですから厳正に対処します。」

「屁理屈つけてこうして犯罪をする人間はネット上には大勢いる。そしてウソを1万回言って、まるで真実のようにする。」

「本当にかわいそうな集団だ。皆さん、無視で!」 

なんという言い草か。完全な開き直りであり、極悪の差別主義者の発想そのものではないか。

ところが、維新が部落解放同盟(組坂繁之執行委員長)から抗議を受け、「党としての処分を検討」したとたん一転、長谷川予定候補は「私自身の『潜在意識にある予断と偏見』『人権意識の欠如』『差別問題解決へ向けた自覚の欠如』に起因する、とんでもない発言です」「人間としてあってはならないことを犯してしまい、慙愧の念に堪えません。この発言を全面的に謝罪するとともに、完全撤回させてください」と自身のブログに投稿した。しかし、こんな言葉を並べただけで済まされるものではない。いつ・どこで“被差別部落=犯罪のプロ集団”というようなことを聞かされ、自己の認識に至ったのか、今後どのように部落問題に向き合うのかなどを明確にすべきである。

また、公認していた維新の責任も重大である。維新は常任役員会でこの部落差別発言を受けて長谷川予定候補の処分を検討したものの、結論は「当面の公認停止」というものであり、松井代表は「党内で発言を検証し、参院選の公示までに立候補させるかどうかを判断する」と言うにとどまっていた。すぐに公認を取り消すのでなく「とりあえず保留する」というだけであったのだ。どれもこれもペテン極まりない。

こうした維新の態度は当然にも批判の的となり、その後のマスコミ対応として「松井一郎代表が長谷川氏の公認取り消しの方向」へと動かざるを得なくなった。維新は松井代表の「かばう余地のない発言」などという言葉で収束させるつもりなのか?当然にもそんなもので済ませられるはずがないではないか。正しく部落問題を学習し、部落差別に対する維新としての見解を明らかにして広く公表すべきである。それが公党としての責任の取り方であろう。

そもそも長谷川予定候補の差別暴言はこれだけではない。以前、ブログで「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ! 無理だと泣くならそのまま殺せ!」と投稿し、待機児童問題では「子どもを預けて働きたい母親のワガママが原因」「お前ら、子供を産んだんだろうが!」「一生言ってろ! バカ女!」「悪いのはお前らの頭の中と仕事の能力だ!」などと投稿していた。報道に関わる職業にあることからしても言語道断。極めて悪質である。

 だが、維新はこうした差別暴言の数々も問題にはしていなかった。そればかりか2017年の衆院選でも長谷川予定候補を擁立している。これこそが維新の人権感覚・政治姿勢そのものだと言わねばならない。誰もが知る通り、あの橋下・維新元代表は「慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と言い切っていた。沖縄県うるま市で女性暴行殺人事件が起こった際も、過去の〝風俗の活用〟発言を「撤回しない方がよかったかも」などとツイッターに投稿している。差別暴言を連発しようが反省などしない。松井・現維新代表に至っては大阪府知事時代に、沖縄の高江で軍事基地ヘリパッド建設反対で闘う人々に対して「ボケ、土人!」と発言した大阪府警・機動隊員に「警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」と投稿している。さらに、かの丸山穂高衆議院議員は北方領土で「戦争しないとどうしようもなくないですか」という発言のほか、「近くの店に行かせろ! そこに女がいるだろう」「行かせろよ、俺は女を買いたいんだ!」「オレは国会議員だ! 」などと言い放ったのはあまりにも有名である。これらは決して個々人の失言の類ではない。維新という政党、そしてその代表が丸山議員や長谷川予定候補を生み出し、後押ししているのである。このような維新政治こそ改めるべきなのである。

差別を居直り戦争を容認する政治は、やがて全国民を差別排外主義に絡めとり、侵略戦争国家体制へ導いていくこととなる。それはユダヤ人を大虐殺していったヒットラー・ナチスの政治、朝鮮半島や中国の人々を虐殺していった日本帝国主義の政治、こうした歴史を語るまでもない。本来、政党・政治家は憲法の精神に則り、人権・人命を守り尊重して政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにしなければならないからである。

維新は即刻、長谷川の公認を取り消し、党としての謝罪、部落問題に取り組む方針を公表せよ。

全国連は部落差別をはじめ、女性に対する差別、沖縄に対する差別など一切の差別を許さない。そして侵略戦争につながるこうした政治を許さない。あらゆる差別をなくし、戦争を阻止するために様々なとりくみを展開する全国の心ある人々と固く連帯していく。何より、今後も差別を助長・扇動・拡大するものを徹底的に糾弾していくことをあらためて宣言し、声明とする。

以上。

2019年6月3日

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