新安保法制と侵略戦争のはじまり

(2016年02月28日)

 

第三回 戦時国家へ突進する安倍政権(前号のつづき)

 

二、急ピッチにすすむ軍事大国化

 

いよいよ今年三月から、新安保法制が実施されます。安倍首相は七月参議院選挙で、「改憲を訴える」と宣言しました。憲法改悪と軍事大国化攻撃は一気に突き進もうとしています。今回は、安倍政権による「軍事大国化」の攻撃を具体的に見ていきましょう。

 

 


 

(一)史上最大の軍事予算と装備

 

安倍政権によって四年連続で増額してきた防衛費は、ついに史上はじめて五兆円を突破しました。すさまじい軍拡です。今年三月から実施される集団的自衛権の行使のために、兵器や武器を増強するためです。

 

地上から操縦する小型の無人偵察機や、レーダーで発見できないステルス戦闘機、部隊をすばやく運ぶ垂直離着陸輸送機オスプレイ、新型空中給油機、イージス艦と連動する早期警戒機、最新型の対潜水艦哨戒ヘリコプタ-、そして、上陸作戦用の水陸両用車、空輸ができて戦車の火力をもち高速移動できる機動戦闘車、また、イ-ジス艦、最新型潜水艦などが増強されます。いずれも、世界の最新鋭で最強の武器です。安倍政権こそ、果てしない軍拡の道を開く戦争内閣と言えます。

 


 

(二)軍事偵察衛星の増強

 

O八年から配備された軍事衛星は、今日では自衛隊の武力行使のために大幅に強化されています。

 

安倍政権は、情報収集ための軍事衛星を、現在の四機から十機体制に一気に増強します。天候や昼夜に影響されない、赤外線レーダー使用の早期警戒衛星は七機にもなります。これらの軍事衛星は、地球上のどこでも一日に何回も撮影できるものです。地上三Ocmの物体を判別できて、二四時間監視できる軍事偵察衛星は、武力行使と戦闘行動の勝敗を決める武器です。

 

そして、ミサイルや艦隊誘導に必要な「全地球測位システム(GPS)」を拡大しようとしています。今日の戦争にとって、このGPSがなければ攻撃も防御も不能になってしまいます。

 

この軍事衛星を打ち上げた日本の「H2Aロケット」は、世界の航空宇宙産業の最新技術をもち、先端に(核)爆弾を積めば戦略(核)ミサイルにもなります。

 

軍事偵察衛星の増強こそ、安倍政権が本気で戦争をやることの証左です。

 


 

(三)はじまった武器輸出と軍事援助

 

十四年に解禁された武器輸出は、いっきょに一八四一件にものぼっています。相手国は米国や中国など16カ国に及びます。しかし、品目の詳しいことは明らかにされていません。国家安全保障会議(NSC)の承認が必要な「重要案件」は、なんと一件という秘密主義です。特定秘密保護法によって、これからはもっと野放しに武器輸出は増えていきます。

 

安倍政権の狙いは、武器輸出の解禁によって、苦境に立つ国内の防衛関連企業(「死の商人」)を支援することです。新設された「防衛装備庁」(制服組が入庁)は、三菱重工や川崎重工など約二OOの防衛関連企業(下請などで約二OOO社)と一体となって、海外での販売拡大を進めています。

 

また、十七年ぶりに増額したODA(政府開発援助)で、軍事援助ができるようになりました。経済のみならず軍事においても、ASEAN諸国などの途上国を、日本の勢力圏に組み込もうとする安倍政権の野望が透けて見えます。

 


 

(四)初の日米統一指揮機関の発足と軍部(自衛隊)の台頭

 

安倍政権は、自衛隊と米軍を「平時から緊急事態までのあらゆる段階」に即して、一体的に運用するために、日米の新しい協議機関である「同盟調整メカニズム」を設置しました。日米による初めての「統一指揮機関・司令部」です。「メカニズム」ではただちに作戦が決定され、部隊に詳しい指示が出されます。

 

すでに、横須賀の米第7艦隊司令部と、横田の在日空軍司令部には、自衛隊幹部が配置されています。

 

また、自衛隊の軍部としての台頭は突出しています。文官が制服組をコントロールする「文民統制」はなくなりました。自衛隊の最高幹部が、直接、防衛大臣に軍事政策や方針を進言する体制に変わりました。自衛隊(軍部)の突出は戦前への回帰そのものです。

 


 

(五)北朝鮮に宣戦布告した中谷暴言

 

中谷防衛相は韓国国防大臣との会談で、「朝鮮半島有事の際には、『韓国の同意がなくても』、自衛隊は独自で、北朝鮮への戦争ができる」と暴言を吐きました。朝鮮侵略戦争への安倍政権の露骨な本音が出ています。

 

韓国は憲法で北朝鮮を韓国領としており、韓国の了解なしに北朝鮮への攻撃はできないことを、中谷は百も承知で、韓国政府を居丈高に恫喝し、北朝鮮を挑発したのです。

 

三月~四月、八万人が参加する米韓軍事演習(朝鮮戦争を想定)は、新安保法制下で自衛隊が後方支援作戦(武力行使)を行なう、はじめての日・米・韓の軍事共同演習となります。一月はじめ、北朝鮮が「水爆実験」・核保有化を公表したこともあり、極めて緊迫した軍事演習になります。

 

安倍政権による朝鮮侵略戦争の野望を必ず打ち砕こう。

 


 

(六)南シナ海への自衛隊派兵

 

安倍首相は、米国が南シナ海の中国人工島周辺を、イージス駆逐艦(横須賀基地が母港)で巡航させて威嚇したことを支持しました。そして、南シナ海に自衛隊を派兵する検討に入りました。

 

自衛隊はすでに南シナ海で、米軍や東南アジア諸国連合(ASEAN)との共同軍事訓練に参加しています。新安保法制では、米艦船を守るために南シナ海でも自衛隊艦船が後方支援を行ないます。米艦船などが攻撃されれば、自衛隊は攻撃を受けていなくても反撃します。

 

南シナ海での領土領海をめぐる中国とベトナム・フィリピンなどとの国家間の争いは、東南アジア全域の泥沼的な軍事衝突に発展しかねません。安倍政権は、南シナ海への武力行使によって、シーレーン(海上交通路)防衛と、日本の勢力圏づくりを狙っているのです。

 

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