「新たな挑戦」の具体化でたたかい抜いた1年

(2016年02月28日)

 

2015年を闘いぬいて 部落解放同盟全国連合会書記長 中田潔


西宮弾圧粉砕へ

西宮弾圧の闘いの最中で本年も終わろうとしています。今回の石田君の逮捕、起訴は、露骨極まりない芦原支部つぶしの弾圧です。20世帯の住宅追い出しの大攻撃に直面し、必死でこれと闘いながら日々の困難な課題と格闘し、生活を守り抜いてきた支部と住民を蹂躙する暴挙であり断じて許せません。

12月2日神戸地裁で開かれた第1回公判では、完全黙秘で闘う石田君の元気な姿に接することができたものの、12月下旬にも追起訴を公言する検察の長期勾留のあからさまな意図に怒りを禁じえません。

次回、公判が来年2月に決定されていることから石田君は、新年を留置場で迎えることとなります。悔しい限りではありますがともに闘うことを改めて決意すると共に、本部の提起する弾圧粉砕のカンパに取り組んでいただくことを訴えます。

この1年の激闘を振り返って

この1年は、昨年から続く安倍反動政権による戦争法制定の策動との激しい政治情勢のなかで様々な重要な闘いの連続でありました。主なものだけを取り上げても4月統一地方選挙での寝屋川きむら選挙への挑戦と参議院選の取り組み。西宮、奈良での住宅追い出しの闘い。さらに奈良市の改良住宅への応能応益制の導入との闘い。5月青年部の沖縄行動。5・23狭山統一行動と1025狭山中央闘争を軸に、全国結集での波状的要請行動の積み上げ。被爆70年でのヒロシマ、ナガサキの闘いと取り組み。全青大会と全婦大会の開催。戦争法案反対の国会前と各地での行動への参加。1025狭山中央闘争の成功のために奮闘し、その間には各地の県連大会や支部大会の開催や、各支部での三大闘争の取り組み等、厳しい条件のなか果敢に闘い抜いてきた1年でした。

すべての取り組みについて具体的な総括をこの紙面で論ずることはできませんが、「新たな挑戦」の具体的実践からみえる成果と課題、安倍反動政権による戦争法案との闘いとの関連で総括を提起します。

寝屋川選挙の成果

本年冒頭からは、関西の全国連は、寝屋川のきむら選挙の闘いを最優先に、全力で闘い抜きました。2度目の挑戦でありましたが残念ながら敗北してしまいました。地元や全国の仲間の期待にこたえられなかったことに心からお詫びします。

きむら君を先頭にした、寝屋川支部は、きむら選挙を「新たな挑戦」として位置づけ団結をゼロから再組織化し、その中で支部の我が身を切る組織変革を進めて選挙戦を戦い抜きました。

選挙戦の過程では、前回とは比較にならない地元住民の期待の強さが実感できるものでした。とくに村の人々が知人に声をかけ、紹介活動を積極的に取り組んでいただいたこと、住民が自ら事務所に来て協力を申し出てくれたり、演説会では、これまで支部活動や住宅の運動に関わりのなかった村の人たちの参加や発言もあり今回の選挙戦をとうして旧来の村支配のありかたをこえた住民の新たな総意を形成する段階に手をかけ始めたのだといえます。

村の人たちが選挙戦を契機にして動き始めたと言えます。きむら君と寝屋川支部は、これまでの村の小さな批判勢力から、期待される勢力として村の人たちから確実に認知されたと言えます。

住宅闘争の発展

住宅闘争においても西宮では、20世帯の追い出しから悔しさを乗り越え、何度も交流会を重ねながら「新たな挑戦」で11月の支部大会を機に生活要求を軸にした支部の団結の拡大と住宅奪還へのたたかいを開始しようとしていました。支部大会を直前にした今回の弾圧の狙いこそ住民と運動の分断であり、尚も闘おうとする住民への予防とみせしめ以外の何者でもありません。 奈良での闘いも中川市長の登場以来同和行政の差別的転換の策動との闘いが粘り強く闘われてきました。特に同和住宅への攻撃は、ほんらい市行政の責任に帰するものであるにもかかわらず、あれこれの難癖をつけての追い出し攻撃に奈良のきょうだいは住民とともに闘い抜いてきました。さらに改良住宅への応能応益家賃制導入との闘いが本年の最大の闘いとなりました。 闘いの詳細については本紙上でも報告されていますので省略いたしますが、奈良での闘いは、明らかにこれまでの全国連運動の大きな壁をぶち破る闘いの始まりと言えます。拠点支部のある村を超えて市内10か所の部落のうち5か所の自治会が協同して市長に議案の白紙撤回を求め議会を揺るがした部落大衆の奮闘は、「中川市長を倒すまで頑張る」と闘い続けています。

では、こうした奈良の闘いが何故できたのかが大事です。一人のスーパーマンがいたからでもなければ戦術の工夫が良かったからではなく、これが部落解放運動の持つ本来の力だということです。部落大衆の怒りを共有し、大衆の自己解放性にのみ徹底的に依拠して闘うことが、部落解放運動の原理原則であり、この姿勢以外に部落解放運動はあり得ません。法も事業もない時代、戦争へと突き進む時代こそ解放運動の原理原則に立つことが求められています。

新たな挑戦とは法なき時代でも戦える、新たな団結も生まれることが可能な、解放運動の本来持っている力を再認識し、これを解き放ち部落解放運動を復権させようとすることなのです。

「新たな挑戦」を提起して3年が経過し各地での具体的実践が始まりました。青年部では、全国青年部の組織拡大を目指し大会の形や、内容をめぐって何度も試行錯誤しながらも粘り強く闘い続けています。

新たな8・6へ

被爆70年の8・6ヒロシマでは、これまでの形式を変え地元福島町での開催を実現しました。被爆者の高齢化をよいことにヒロシマを風化させることを狙う安倍反動政権に対し、戦争と原爆と差別の被爆者の証言を絶やしては絶対に駄目だとの思いからでした。

8・6を地元の取り組みとして重点を置いたことで地元の参加者が増えましたがまだまだ課題があります。地元での団結の拡大、事前準備、全国からの参加者の位置づけ等ですが、ぜひとも次回も挑戦していきましょう。

狭山闘争の復活へ

茨城では緊迫する狭山第3次再審闘争の情勢を何としても突破するためにこれまでの全国連の枠を大きくひろげ、上映実行委員会を立ち上げ県内各地で狭山上映運動に取り組みました。

各地区での上映会に労働者、市民が多く参加し、狭山闘争のすそ野を拡大しようとする試みは、狭山事件への理解を広げただけでなく、狭山事件の核心である部落差別への理解も深めることができました。

同時に実行委員会には、「障害者」、在日韓国人、アジア人労働者など被差別の当事者が自分たちの課題として上映運動に取り組んでいることです。茨城は小数点在の部落が多く今も「ねた子」の考えが強いところで未組織の地区も存在するのが現状です。行政の部落問題に対する姿勢も後退するなかでの茨城県連の上映運動は、反差別の陣形を大きくすると共にその力が県連に結集する部落大衆に解放運動への確信を深めることは間違いありません。また上映会をとうして得た狭山支援の広がりと部落差別の理解の広まりは新たな部落大衆との出会いと新たな団結を生み出す土壌と条件をつくることになると確信します。

安倍反動政権を部落解放運動の力で打倒しよう!

この一年は、憲法違反の集団的自衛権行使に向けた安保・戦争法案との闘いでありました。この問題は、部落解放運動にとって死活にかかわる問題です。戦争は差別と排外主義を加速させることが実感としてすでに始まっています。今年、荒本を含む近畿まで拡大した差別文書の配布事件は、まれにみる差別事件です。中国や北朝鮮の敵視と危機を煽り「慰安婦」問題を居直るなど侵略戦争への反省も、人権も、平和も、なおざりにされるなど絶対に許せません。「イスラム国」の「テロの脅威」を口実に世界的規模でイスラム教徒への迫害も強まっています。開始されたシリアへの空爆はまさに第3次世界大戦の始まりを感じさせますがこうした社会的風潮が悪質な差別事件の社会的背景となっているのは明らかです。こうした中で全国連は、青年部の沖縄行動を契機に国会前で、全国各地で安保法制反対と共に沖縄の辺野古新基地建設反対を闘い抜いてきました。戦争法案は、国会を通過し成立したが闘いはまだ始まったばかりです。実際の派兵で何が起こるのか、人の命、生活、権利がどう扱われるのかが一時の問題としてではなく連綿と続く問題となりました。新たな時代の転換を前にして部落解放運動はどう闘うのかが大きく問われる1年となりました。

さいごに

紙面の都合から県連、支部の各地での奮闘に言及できなかったことをお詫びいたします。

「新たな挑戦」は既成解同の没落と共に部落解放運動への失望が蔓延するなかで全国連にもその逆風が吹きまくる中で部落大衆との多様な出会い、機会をとらえ、既成の運動では、無視される怒りや要求をつかみ取り共有し、部落民としての自己解放性のみに徹底的に依拠し、引き出し新たな団結を作り出そうとすることです。

それは、単に戦術の工夫やたんに闘いの幅を広げるということではありません。その姿勢のなかに部落解放運動の原理原則にたちかえり、それに忠実に闘っていくことの大事さを再確立しようとするものです。本当は、複雑でも難しいことでもなくいわば、原理原則に立った当たり前の部落解放運動をやろうということです。部落解放運動の力強さに確信を深め来年も全力で闘いましょう。

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