新安保法制と侵略戦争のはじまり

(2016年02月28日)

  第二回 戦時国家へ突進する安倍政権

四月に合意された「日米ガイドライン(防衛協力の指針)」と、九月に強行採決された安保関連十一法(新安保法制)によって、憲法違反である「集団的自衛権の行使」が合憲とされました。
戦後の安全保障政策であった「専守防衛」は、安倍政権によって根本的に転換され、「海外で戦争ができる『ふつうの国』」へと大きく舵が切られました。
新安保法制の来年三月実施を大きな節目にして、自衛隊は恒常的な戦時体制に突入します。この恐るべき戦争と反動の歴史的な転換点に、部落解放運動の未来をかけて真正面から立ち向かいましょう。
シリ-ズの第二回として、「戦時国家へ突進する安倍政権」を掲載します。
一、海外で戦争ができる「ふつうの国」に
では、新安保法制と日米ガイドラインによって、これからの日本は具体的にどうなるのでしょうか。 そのキ-ワ-ドは、『安倍政権による朝鮮・アジア-中東への侵略戦争と戦時国家づくり』です。今日、この戦争国家づくりにそって、すべての政治と政策の方針が決められています。具体的に見ていきましょう。
(一)「いつでも、世界中のどこへでも」派兵される自衛隊
なによりも、新安保法制によって、自衛隊の活動する地理的な制約がすべて取りはらわれたことです。「いつでも」、「世界中のどこにでも」、自衛隊を派兵することが可能となったことです。
具体的には、米軍を中心とした「多国籍軍」や「有志連合」が、中東をはじめ世界各地で行なっている戦争に、自衛隊が派兵されて参戦することです。戦闘現場と一体となった「後方支援(兵たん)」活動をやることになります。
「『イスラム国』への空爆参加や後方支援は考えていない」と政府は国会で答弁していますが、新安保法の法律では否定されていません。「地球の裏側」の「戦場」にまで自衛隊が派兵されて、侵略戦争に参戦することになります。
(二)米軍などの武力行使と一体となった「後方支援」
「後方支援」とは、戦闘現場とかけ離れた後方の安全な場所で、軍事支援活動を行うことでは決してありません。
たとえば、米軍や韓国軍などの艦船や航空機を防護するために、敵国が米韓軍などを攻撃したならば、自衛隊が攻撃を受けていなくても、敵国を攻撃することが「後方支援」活動なのです。最前線での戦闘行為そのものと言えます。
また、後方支援は、戦争行為に不可欠で重要な「兵たん」活動であり、戦争現場では真っ先に狙われます。弾薬の提供(劣化ウラン弾も)、発進準備中の戦闘機やヘリへの給油(潜水艦探索のために、ヘリ空母「おおすみ」で給油)や空中給油、武器や兵士の輸送など、どれをとっても戦闘行動の一環そのものです。
「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば「後方支援活動」ができるとしていますが、自衛隊が攻撃される危険性が極めて高まることは必至です。
(三)攻撃されなくても相手国を攻撃できる
新安保法制では、日本が攻撃されなくても、米軍などが攻撃されれば、その相手国を攻撃するという、信じられない戦争行為が正当化されています。
日本海で弾道ミサイル発射に対処する米国のイ-ジス艦や、警戒中の米軍機への攻撃を防護するために、相手国を攻撃したり、相手国の基地へ「先制攻撃」もやるというものです。
このように集団的自衛権の行使とは、「自衛」のためのやむえない戦争などではなく、侵略戦争の行為そのものといえます。
(四)でたらめな集団的自衛権の行使の理由
安倍首相は集団的自衛権の行使を閣議決定した後の記者会見で、その理由をわは、わざわざ大きなパネルまで用意して説明しました。「有事で日本人の母子を乗せて避難する米艦を守るために、集団的自衛権の武力行使をする」のが集団的自衛権だと。しかし、これは大ウソのデチアゲでした。 米軍幹部は「米艦に他国の国民を乗せて救援することはない」と明言しました。また、中谷防衛大臣は「邦人が乗っているかは、絶対的なものではない」と安倍発言を否定して、集団的自衛権の行使の前提を簡単にひっくり返したのです。
また、「中東・ホルムズ海峡での機雷除去」についても、石油のシ-レ-ン封鎖は日本国家の存亡の危機になると声高に叫んで、集団的自衛権の行使の最大の理由にしていました。ところが、国会答弁では「現実問題として発生することは具体的に想定していない」と、あっさりとひるがえしました。 こんなウソとデタラメな理由をデッチアゲて、国民を愚弄するのもいいかげんにしろと言いたい。 (五)自衛隊派兵は「国会の事前承認」がいらない
自隊の派兵は、緊急時には、内閣が独自に判断と決定を行ない、国会の事前承認は必要がないとなっています。時の政権の裁量で、「日本に重要な影響がある」と「総合的に判断」すれば、集団的自衛権の行使ができるというものです。
これでは、時の内閣に「白紙委任」するのと同じです。また、政府の裁量の中身は「ブラックボックス」です。これでは、海外での自衛隊の活動が、その後、「間違っていた」となる危険は常に起ります。 米国と有志連合が、イラクに大量破壊兵器があると断定してイラクへの侵略戦争を行ないましたが、その後にそれがないことが判明しました。日本もこの二の舞をやろうというのでしょうか。そんなことは決して許されません。
なによりも、「特定秘密保護法」(13年12月成立)によって、自衛隊活動はすべて国家の軍事機密と特定されれば、国民にはすべてが非公開となってしまいます。
もはや、戦前・戦時中の独裁政治による戦争国家の復活とすら言えます。
(六)「平時」から武力行使できる「武器等防護」
有事における集団的自衛権の行使の「抜け道」で、内閣の判断や国会の承認も必要としないで、「平時」でも武器使用ができるというもの。
防衛大臣が他国の要請を受け、「必要」と判断して指示を出せば、現場の自衛官の判断で、ミサイル迎撃による阻止や、対艦ミサイルによる反撃ができます。
政府は「武力行使に当たらない武器使用だ」と必死に弁明していますが、あきらかに平時から有事までの「切れ目のない」臨戦体制づくりと言えます。恒常的な戦時体制に突入した安倍戦争政権を打倒しよう。

【次回】

二、急ピッチにすすむ軍事大国化
(一)防衛予算の増大
(二)はじまった武器輸出
(三)ODA(政府開発援助)による軍事援助
(四)軍事偵察衛星の配備
(五)軍部(自衛隊)の台頭

三、沖縄・辺野古新基地の建設を阻止しよう!
(一)沖縄の最前線基地化の強化を許すな
(二)「オール沖縄」の闘いに連帯しよう
▲このページのトップにもどる