【新聞11月号・4面 シリーズ・第1回 】 

(2016年02月28日)

  本号から五回のシリーズで、「新安保法制と侵略戦争のはじまり」を掲載します。 来年三月に施行される『新安保法制』が、『朝鮮・アジア-中東-アフリカへの侵略戦争のための国家づくり』であることを明らかにします。今までの『学習や討論』をさらに深めて、安倍政権の憲法改悪・軍事大国化による侵略戦争を打ち砕きましょう。 第1回 『憲法違反』の閣議決定と新安保法制 第2回 侵略戦争へ突進する安倍政権 第3回 自衛隊が世界中で、『殺し、殺される』」軍隊に 第4回 なぜ、今、侵略戦争なのか? 第5回 『戦争と差別・排外主義』の嵐を打ち砕こう! 第1回 『憲法違反』の閣議決定と新安保法制 1.戦争を永久放棄した戦後憲法を全面否定  憲法は、「前文①」で、「政府によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすること」と記され、「第二章 戦争の放棄 第九条」では、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」として、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」ことを明確にしています。   ここに戦後憲法が「平和憲法」と言われる理由があります。戦前の日本帝国主義とその尖兵になった国民による極悪非道なアジア侵略戦争によって、二千万人のアジアの民衆を虐殺し、三百万人の国民を犠牲にした反省から、永久に戦争は決してしないことを憲法で決めたのでした。  「戦争と武力行使は永久にやらない」、「軍隊は持たない」、「国の交戦権も認めない」、また、「主権者である国民は、二度と政府による戦争を起こさせてはならない」ことを誓って、最高法規である憲法で明文化したのです。  この「憲法の前文」と「第九条」を全面的に否定したのが、集団的自衛権の行使を認めた昨年七月の閣議決定であり、今年九月の国会で強行採決された十一本の安保関連法=新安保法制であることは、あまりにも明らかです。 2.閣議決定による「解釈改憲」は憲法違反  安倍政権は内閣の独断で、憲法に禁止された集団的自衛権の行使を、憲法を改正するのではなく、憲法の条文の解釈を変えて合憲と認めたのでした。このような「解釈改憲」という考え方ややり方は、独裁政治のあり方であり、憲法のどこにも認められていません。これが憲法違反の第一の理由です。  第二の理由は、憲法で定められた憲法改正の手続きをまったく踏まずに、憲法の内容を変えたことです。  憲法の改正は、憲法の第九六条に決められています。「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し」、「国民に提案してその承認を経なければならない。承認には、国民投票の過半数の賛成を必要とする。」というものです。  安倍政権は、憲法で定められた国会発議も、それによる国民投票もやっていません。内閣や自民党の都合のいいように憲法を得て勝手に解釈をして、憲法の内容を無視して実質的に変えたのです。憲法改正の手続きを踏まない、この「解釈改憲」による「実質改憲」は、憲法違反そのものです。  また、憲法の第九九条には、「天皇、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とあります。安保関連11法案に賛成して強行採決した国務大臣と国会議員は、明白に憲法を尊重し擁護する義務を果たしていないので、この憲法第九九条に違反したことになります。  こんな閣議決定や新安保法制には、微塵の正当性も正義性もありません。明白な憲法違反であり、閣議決定や国会決議は無効であることは明らかです。新安保法制の撤廃と廃止を実現しましょう。 3.安倍政権のデタラメな「合憲論」  安倍政権は、集団的自衛権行使を認めた閣議決定も、新安保法制も合憲だとしています。  その根拠に、「最高裁・砂川判決」(五九年)と「七二年政府見解」をあげています。しかし、これほどむちゃくちゃなウソとデッチアゲの根拠はありません。  まず、「最高裁・砂川判決」は、「集団的自衛権行使は争点になっておらず、行使許容を読み込むことは『まったくの暴論』だ」と、元内閣法制局長官が怒りをもって安倍政権を弾劾しました。  また、「七二年政府見解」は、結論を「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としています。元最高裁判事も「(集団的自衛権行使を)普通に理解する人なら、とてもそのような(合憲である)読み方はできないと表明しています。  「憲法の番人」と言われる内閣法制局は、戦後一貫して集団的自衛権行使は憲法違反であると国会で明らかにしてきました。しかし、安倍首相は、集団的自衛権行使を違憲ではなく合憲とする内閣法制局長官を選任して、閣議決定と新安保法制を強行したのです。  安倍政権の合憲論は、かくも根拠のないデタラメなデッチアゲです。百名以上の憲法学者などが、国会の憲法審査会の参考人表明に続いて、年内にも「憲法違反の集団訴訟」を起こそうとしています。正当性も正義性もない安倍政権の憲法改悪・軍事大国化を阻止しよう。 4.「徴兵制」の復活も  安保関連11法案は「憲法違反の戦争法案」だと、多くの国民が猛反対する中で、9月に国会で強行採決されました。しかし、その後も、この新安保法制の撤廃・廃止を求めて、数万人規模の集会とデモが全国で巻き起こっています。  新安保法制を国会通過させた安倍政権・自民党の次の狙いは、戦争を禁止した憲法第9条を改悪して、自衛隊を「国軍」に、天皇を「元首」に、「愛国心教育」を復活した戦争国家をつくり上げることです。  また、「徴兵制」の復活も狙っています。安倍は「まったく考えていない」「隊員は高度な専門的技術が必要なので、『徴兵制』では役立たない」とウソぶいていますが、とうてい信じることなどできません。これから起る海外での戦死や虐殺という現実に、自衛官も予備自衛官も募集人数がさらに不足し、今後の海外派兵の部隊増強や交代制にとって、徴兵制でなければ兵員確保や部隊運営が困難になることは明白です。  そして、安倍政権は、来年夏の参議院選後に、憲法の一部を改正する国民投票を行ない、憲法全面改悪への地ならしをやろうとしています。  安倍政権の憲法改悪と戦争政治との闘いは、いよいよこれからが本番です。「ふたたび、侵略戦争の過ちをくり返すのか!」という歴史的問いかけに、私たちは水平社の敗北の教訓を今こそ生かして全力で闘いぬきましょう。
▲このページのトップにもどる