学童保育の移転を阻止する

(2015年05月17日)

  差別を許さない、地域を良くしたいとの思い、そして解放運動の継続こそが守り抜く力
ー山口・陶(すえ)支部からたたかいの報告

差別意識を利用して移転を策す
    数年前から地元のとある人物が陶ふれあいセンター(旧隣保館)の学童保育を一般地区に移そうと躍起になっていた。
     当初は陶・丸尾5自治会の団結組織である「まこも会」の会長が反対して移転はできなかった。しかし、そのまこも会会長が病気になって以来、不穏な動きはさらに加速していった。(※まこも会は部落の中央に位置したため池の名前から命名された丸尾の自治組織)。
    学童保育は、留守家庭で小学校1年から3年までの児童を、放課後陶ふれあいセンターで預かり、親が仕事を終える時間まで勉強や遊びの面倒をみる 制度で、約40年前に解放同盟が「学力促進学級」(小4年から中学生)を要求して勝ち取ったときに併設されたものです。
    学童保育と学力促進学級は、部落の子どもたちの低学力を克服し、差別に負けない子どもを育てることを目的として新設され、その結果、地元の団結を強める大きな役割を歴史的に果たしてきました。部落の子どもが少なくなった今では一般地区の子どもたちにもこの制度が開放され、一般地区からも多くの子どもたちが通ってきています。 それが、時代の流れだとか、学校から遠い等を理由にして、しかも決定的なことは「部落に子どもを通わせたくない」という一般地区の一部の親の差別的心情を糾弾するどころか利用してまで、移転をしようとしたものです。
    一昨年から、ふれあいセンターをも抱き込んで、センタ 「地域をよくしたい」という思いから、隣保館をたてさせ、学童保育もはじまった(隣保館が立つ前と後の写真・写真下の電柱の奥が隣保館) ー長が前面に出て、移転の話がまこも会(丸尾5自治会)にもちかけられた。
    前まこも会会長は、同和会寄りで、全国連とは地元の覇権をめぐってかつて真っ向から対立してきた人ですが、「学童保育の移転は全国連が絶対許さんだろう」と光栄にも言ってくれたといいます。「丸尾を大事にしなくては」という地元の熱い思いは、同和会であろうがなかろうが一緒だということです。
運動でかちとったもの横取りは許さない!
    センター長から移転の提案が正式にされて以来、まこも会の役員会では全国連同盟員を先頭に反対の声が相次ぎました。
    そして昨年秋、私たちは山口市役所人権推進課に直接交渉に行き、移転反対の趣旨を説明した。その際に、「誰から移転の要求が上がったのか、文書があるはずだから見せてほしい」と申し入れると、「5、6年前に要求書があがっていると思うので、調査して報告します」との室長から返答を得ましたが、後日の回答はなんと「要求書は見当たらない」といいます。狭山裁判の「不見当」と同様のものではないですか。
    差別的文書であったからか、はたまた要求者をかばったのか、真意はさだかでありませんが、要求書すら見当たらないのに、部落の発展のために尽くすべきセンター長が、自ら学童保育を放棄し、「一般地区に移転をすべきだ」と提案するという、まったく地元を無視した、ふざけた対応が明らかになりました。
    地元の多くの意見では、「丸尾の子どもたちのために地元が勝ち取った歴史的な学童保育であり、それを横取りするようなことは許さない」というもので、仮に学童保育が移転すれば、ふれあいセンターの事業そのものが縮小されて、センターの存在そのものまで危うくなるのではないかという危機感も当然にも出ました。
    その後、「丸尾の総意がなければ移転はしません、つまり1自治会でも反対があれば移転はしません」という市役所の明快な回答を得ました。その結果、まこも会の新年度役員会では、移転反対の意見は述べられたが、賛成の意見は誰ひとりとして出されず、丸尾の総意として移転を阻止することができました。
解放運動の継続こそが守り抜く力となる
    陶丸尾は山口県水平社の発祥の地です。悲惨な差別と幾多の苦難を乗り越えて山口県水平社は全国の闘いに触発されて結成されました。その時代の先輩諸氏のことが「ふしの川の藍」という本に感動的に描かれていて、今、陶丸尾の中にその本が次々に回し読みされています(※ふしの川は部落と一般地区との境の川)。
    この本を読んだ地元のある人は、部落差別とは何か、地元の先輩がいかに差別と闘ってきたか、60歳の還暦を迎えるこの年齢になって初めてわかったといいます。
    40数年にわたり陶支部は地元で渾身の力をこめて解放運動をしてきましたが、最近は同盟員の高齢化とともに運動自体が先細り状況にありました。このたびの差別的な動きに対して実に多くの人々が思想信条を超えて「差別は許せない」「丸尾を衰退させてはならない」と、差別への怒り、思いを心奥深く刻んできたという事実に、驚きと共に大きな自信と確信をもらいました。解放運動の継続こそ、いざという時には解放の力になることを実感しました。
差別をなくし、地域を支える拠点として
    今後、ふれあいセンターは耐震のための改築が数年後に予定されています。改築を機に、高齢化した地元のお年寄りがリハビリや楽しい寄り合いができるような、そして、一般地区から通ってくる子どもたちも含めお年寄りと子どもたちのふれあいの施設になるよう、地元の要求をまとめあげていきます。
    差別は今も生き続けています。とりわけ丸尾の若者の多くがどれほど結婚や就職で傷つき苦しんできたか、全国連は知っています。何の偏見も持たない小さな子どもの頃から、そして一般地区の若いお母さんやお父さんが学童保育をきっかけに当然のように部落に通ってくることにこそ、大きな意義と期待があると思います。学童保育を部落のきょうだいと共に守りぬき大きく育てていきます。
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