カバン「自白」の虚偽 新証拠(139点目)の提出 ―第20回三者協議(10月30日)―

(2015年01月13日)

      第20回三者協議に先だつ9月11日、弁護団は、取り調べ録音テープを心理学的に分析した脇中鑑定を提出しました。
    脇中鑑定は、取り調べ録音テープの内容を犯行筋書き全般にわたって録音テープのやりとりを分析し、犯行を自白した石川さんの供述は真の体験の記憶にもとづくものとはいえないと結論づけており、石川さんの無実を示す新証拠です。     また、検察から裁判所に提出されていた筆跡資料はすべて弁護団に開示されました。このうち一部はすでに開示済みのもので、あらたに開示された資料は28点でした。
    弁護団はさらに証拠リストの開示のほか、手ぬぐい、自白の経緯、取り調べ録音に関わる捜査資料の開示を請求していました。
    第20回三者協議では、既報の通り検察は10月27日に意見書を提出し、証拠開示をかたくなに拒否しました。弁護団は29日、反論の意見書を提出し,裁判所は検察官に再考を求めています。
カバンは本当に自白によって発見されたのか?
    弁護団は第20回三者協議にむけて10月29日、カバンに関する自白の虚偽を明らかにした新証拠を提出しました。
    カバンは脅迫状を届け ゴムひも、教科書、かばんの「自白」地点と捜索発見場所 る途中で捨てたと言う石川さんの「自白」が誘導による虚偽自白であり、「カバンは自白によって発見された」とした有罪判決は誤りである、とするものです。
    三大物証の一つであるカバンは、石川さんの再逮捕後の6月21日に自白して、それにもとづいて同じ21日、捜索して発見されたことになっています。
    今回の新証拠は、この6月21日の2通の自白調書と図面、証拠開示された警察官のカバン捜査報告書、この日の取り調べ録音テープを分析し、カバン、教科書、自転車の荷掛け紐(ゴム紐)の処分についての自白の変遷を地図上に示して自白の不自然さ、矛盾を明らかにしました。
    カバンの発見場所は、5月3日にカバンを自転車にくくりつけていたゴム紐が発見された地点から約56メートル、5月25日に教科書類が発見された地点から136メートル離れた、この二つの間になる場所です(図参照)。このあたりは大がかりな山狩り捜査が行われた場所です。
発見状況にあわせて変わる自白調書

    カバン発見のもとになったとされる6月21日の「自白」は、21日の一日のうちでも大きく変わっています。
    まず、捨てた場所が道の「西側」から「東側」へと大きく変わっています。また、捨て方も教科書は「カバンに入れたまま捨てた」から2回目の自白調書では「よく考えてみたら思い違い」で「本はカバンから出して…そのそばへ放り出し」たと、別々に捨てたように変わっています。
    この点について今回の弁護団補充書は、開示された取り調べ録音テープと浜田鑑定、脇中鑑定を踏まえて自白の変遷を分析しています。
録音テープが示す警察官の誘導
    取り調べテープを見ると、石川さんは警察官の質問に最初は「本はカバンに入れたまま」と答え、警察官から、本はすでに見つかっていることを教えられて、「あったの?」「それじゃあ知らねえ」と言っています。
    そして警察官から「カバン、(教科書を)出して埋めたのか、カバンだけは別に埋めたのか」と言われて石川さんは「カバンは、すぐそばにありますよ、そいじゃあ」と答えているのです。
    教科書は「カバンに入れたまま捨てた」から「別に捨てた」という自白の変遷は、それ自体が自白の虚偽を示す重大な問題ですが、さらに、こうした変遷が警察官の誘導(上の傍線部分)によるものだったことが取り調べテープから明らかです。
    しかも自白が変わった後でも,カバンは本の「すぐそば」というものであり、136メートル 取り調べ中の石川さん。手錠をかけられたまま3人の刑事にとり囲まれ自白をせまられた 離れた実際の発見場所とは大きく食い違っています。自白はその後も、カバンと教科書がどれくらい離れていたかについて、「すぐそば(6月21日)」→「30メートル(6月29日)」→「50メートル(7月4日)」とだんだん遠くなるように変わっています。それでも実際の発見場所と食い違っています。距離を訂正した理由は何も述べられていません。こうした変遷は警察官の誘導がない限り起こるはずのないことは明らかです。
    「自白」を維持していた1審の法廷で,石川さんはカバンと教科書を別に埋めた理由を聞かれて、「(理由は)別になかった」と述べ、「最初はね、おれそばだと思ったんだけど」と真犯人ならするはずのない奇妙な答えをしています。石川さんは、犯人でないゆえにカバンが実際どう処分されていたかを知らず、教科書とカバンを一体のものと考えていたことが、のちの図面や1審の法廷での供述に反映しているのです。
    これらのことはカバンは自白にもとづいて発見された「秘密の暴露」とは到底いえるものではないことを示しています(参考「狭山差別裁判」453号)
   
    証拠開示と新証拠の発掘によって、寺尾確定判決は差別と偽りにみちた虚構の判決という姿をあらわにしました。今年何としても再審を開かせましょう。

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