2014年をたたかい抜いて 部落解放同盟全国連合会 書記長 中田潔

(2014年12月11日)

  安倍政権の改憲-「戦争国家化」とたたかいぬく
    安倍政権による突然の衆議院解散と総選挙が、仕掛けられました。今号が、同盟員、読者に届くころには選挙結果が出ているかもしれませんが、秘密保護法の強行成立と12月10日施行、閣議決定による集 10・26狭山中央闘争 東京高裁を糾弾するデモ行進(2014年) 団的自衛権の容認、原発再稼働の策動、沖縄県知事選での勝利が示した県民の基地建設反対の民意を踏みにじり、沖縄辺野古への基地建設を強行する安倍政権は危険極まりない反動政権です。
    「来年10月に消費税10%の増税を1年半先送りにするために国民の信を問う」との解散総選挙の理由は、全くの嘘であることは明らかです。消費税増税を民主党、自民党、公明党の三党合意だけで国民に民意を問うこともしない。集団的自衛権の容認に至っては、憲法9条の改憲ともいえる暴挙です。時の内閣が勝手に憲法を変えることなど許されないことです。
    安倍政権の反動政策は経済政策の失敗とともに大企業優先、弱者切り捨てと収奪の本質が明らかになるとともに支持率を低下させています。日銀に1万円札をドンドン刷らせる「異次元の金融緩和」は、株への投資と国債(借金)を買わせるだけで、余ったお金は、株投機につぎ込ませ株価を支えているだけです。アベノミクスの恩恵を受けているのは、大企業とほんの一握りの投資家だけです。円安による物価高で私たちの生活は、ますます厳しいものになっています。
    政権基盤が揺らぎ始めた安倍政権にとって来年の統一地方選挙、集団的自衛権容認にかかわる自衛隊法改悪の国会審議の始まり、医療保険制度、介護保険制度の更なる改悪等、アベノミクスの失敗がより明白になり、民衆の怒りに打倒されることに恐れるが故に、何としても「戦争のできる国」への大転換を狙い長期政権化をたくらんで強行したのが今回の衆議院総選挙です。
    改憲、「戦争の出来る国」づくりを絶対に阻止するためには、総選挙で私たちの怒りをしっかりと示すことが大事です。
『新たな挑戦』の具体的実践のはじまり
    2014年の闘いは、安倍政権の極反動攻撃と部落解放運動の立場から闘い抜きました。貧富の格差がますます拡大され、差別主義や排外主義が高まるもとで部落解放運動の防衛と再生をかけて全国連運動のすべての領域で『新たな挑戦』を常に意識しながら差別勢力の攻撃の本質と村の現状、村の人達の気持ち 、主体的力量の分析などあらゆる角度から部落の人々の大衆的立ち上がりと団結を発展させることに、具体的な実践の領域で奮闘してきました。
    解放運動の権威や大義、これまでの実績や経験を前提とした方針のおしつけや引き回しで村の人たちをひとくくりにしようとしてきたあり方からの大きな転換が始まったと言える今年の闘いでした。 狭山再審闘争を日常のとりくみに 本年も昨年に続いて狭山闘争と住宅闘争を軸に、『新たな挑戦』を指針として闘い抜きました。ブロック単位、階層別単位で闘う波状的要請行動の戦術は、参加者の差別裁判糾弾の当事者としての実感と自覚を促進させることで、これまで以上に狭山闘争勝利への強い気持ちを役員、活動家層に拡大することができました。
    また、波状的要請行動は裁判所や検察庁の反動姿勢を弾劾し全証拠の全面開示と事実調べ、再審開始を強烈に要求するものですから要請団の気概と内容が大事となります。あらためての狭山の学習会が事前に取り組まれたり、「要請団は組織の代表ではなく差別に呻吟し権力犯罪に怒る部落民の代表だ」として一言メッセイジ、要請はがきの組織化が取り組まれることで狭山闘争のすそ野が拡大され始めました。
    残念ながら本年の10・31狭山中央闘争は昨年に比べ参加者数は減ってしまいました。原因としては、各支部の個別事情もありますが、事前の情宣活動の準備が遅れ、中央闘争への機運を最大限に高めることが十分に出来なかったことです。本部としてお詫びいたします。
    狭山闘争における『新たな挑戦』は、狭山闘争の日常化のために奮闘してきたことです。緊迫する再審情勢からみて、もっとヒートアップしなければなりません。再審開始を実現するためには部落大衆の立ち上がりと労働者、市民の立ち上がりは不可欠です。すでに茨城県連では実行委員会方式で狭山の上映運動を成功させましたが、意義のある大事な取り組みです。狭山闘争にとっても大事なことですが、解放運動の再生と組織建設からとらえ返しても『新たな挑戦』としての具体的実践の場となります。各地でも挑戦してみてはどうでしょうか。
    来年1月末には21回目の三者協議が開かれます。証拠開示をめぐる大きな山場と考えられますが全国連は青年部を軸に1月26日に要請行動を闘います。来年、波状的要請行動のトップを引き受けたいと青年部幹事会での決定です。各地にあらためて要請行動の参加をお願いいたしますが青年の派遣をぜひとも追求してください。
住宅明け渡し攻撃とのたたかい
500万カンパ達成へ

    全国連にとってもう一つの重要課題は住宅闘争です。奈良市仲川市長による住宅追いだしと闘う裁判支援、西宮市による供託者20世帯の強制執行から生活を守る闘いを全力で支援し共に闘い抜きました。とくに500万円カンパに各地とも大変なところ組織内では、 前半で目標を達成することができました。ありがとうございます。しかし全体では、まだまだ足りません。組織外への広がりのためにさらに奮闘をお願いいたします。
芦原のたたかい
    芦原では最高裁決定で判決が確定してから 7月6日 西宮で「住宅明け渡し阻止」集会(2014年) もこれまでどうり住み続けることができるよう何度も行政との粘り強い交渉を闘い抜いてきました。芦原支部と20世帯の人たちは、様々なしんどい事情を訴え強制明け渡しが不当であること 、人としての生存を脅かすことを、あらゆる手段で訴えてきました。しかし西宮市行政は、「知ったことではない」と頑なな姿勢をかえることはありませんでした。
    20世帯の人たちの多くは、強制執行によって生活の営みが1日でも中断されれば仕事や子育て、介護まで放棄することになり、さらに生活の再建どころではなくなってしまいます。やむなく「自主退去」で命と生活をつなぐ選択をしました。本当に悔しい決断でありましたが、それでもなお闘いを発展させ西宮市から住宅を奪い返そう、西宮市をやっつけたいと11回支部大会を闘いとりました。阪神淡路大震災以来、対策本部から始まった支部事務所の存続をはじめ、追い出された人々の困窮する生活再建の課題等、共同の取り組みが大事です。
西之阪のたたかい
    奈良では『部落問題も何も関係ない』という仲川市長による住宅からの追い出し攻撃が吹き荒れています。全国連の拠点支部に焦点を当てながら部落解放運動と同和行政の全面的清算をもくろんだ差別そのものです。「弁護士も立てられない貧乏人」は、「裁判で脅せば十分」と部落住民への限りない侮蔑と憎悪に満ちたものです。
    この攻撃に打ち勝つには、奈良市のすべての部落の立ち上がりと団結の力が必要です。西之阪での強制執行は、短期間で3件も繰り返されたことで怒りは、さらに強いものとなりました。
    この過程での闘いは、方針の押し付けではなく村の人たちの目線で仲川市長を負かしてやりたい、家と村を守りたいとの気持ちを大事にすることで闘いの団結が育まれてきました。奈良での全婦の開催と西之阪支部婦人部の結成は、地道な支部活動の継続と村の自治を守り続けてきたことの上に、全国連の解放運動を必要と実感してくれたことの現れです。婦人部結成に参加した婦人たちの多くは、これまで解放運動の経験がない人や意識的に運動を避けてきた人たちが大半です。全国の部落には、こうした人たちは数多くいます。
    奈良市では、さらに応能応益家賃制度を改良住宅にも適用するとして来年の三月議会に諮るため家賃値上げの説明会が開かれています。同和向け住宅の改良事業分は約700戸で市内の4部落に建設されており新たな値上げ攻撃にさらされようとしています。同時に市内部落の大同団結を実現し力ある大衆闘争の復権のチャンスでもあります。『新たな挑戦』から三年目の今、部落解放運動再生の手ごたえを部分的ではあれ、実感することができたように感じます。
    この一年多くの取り組みを実践してきましたがの闘いを総括するにあたって紙面の制限からすべての課題に触れることができないことを申し訳なく思います。
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