怒りのシュプレヒコール、弾劾の矢となれ! 青年部狭山要請行動の報告 全国連青年部 小林拓也

(2014年05月26日)

      3月24日(月)正午前。横断幕をひろげ、掛け声とともに拳を空へ突き出した。全国連シュプレヒコール。検察庁正面玄関前である。両手を後ろに組むガードマンとマスクで顔を隠した複数の公安警察に対するは、全国から集まった青年部要請団だ。「狭山差別裁判糾弾!石川さんは、無実だ!」糾弾の怒号が霞が関に響きわたる。パフォーマンスではないのだ。私 東京高検へ要請行動(2014年3月24日) たちの心が声となり、弾劾の矢となって検察庁へ飛んでいく。痛快な気持ちの一方で、「なぜ、当たり前のことを叫ばなければならないのか」と思った。答えは、簡単だった。当たり前のことをしない人間がいるからだ。平然と差別をする人間が世の中に、いや目の前にいるから、いま私たちはシュプレヒコールをしているのだった。
証拠開示の義務がある!改ざんの釈明をしろ!-東京高検-
    ゼッケンを後ろポケットに無造作に入れ、いつもの部屋に入った。待つことなく、目の前に現れた三人の男。怯えと苛立ちを抑え、気取っている真ん中の奴が狭山担当検事の白木だった。はじめてみる顔。両脇の男たちは、以前に見たことがあった。その経緯があってか、担当検事が誰であるのか、即座に認識できた。     いかにも白木だけが異常に恐れを感じている。伝わってくるマイナスのオーラ。あの男が検事に間違いはなかった。建前だけの自己紹介がうっとうしい。いざ、要請に入る。
    座るや否や白木は、左足をガタガタと忙しなく震わせ、両腕をがっちり組んで目を閉じていた。こちらの冒頭のあいさつの間、何度も深呼吸をため息でごまかし、いかにもエリート気どりだった。「そんなに後ろめたいことがあるのか」率直にそう思ったが、言葉にはしなかった。正義があるならば、プライドなど関係ない。平静を装う裏には、差別犯罪を隠す意図があることをみてとった。
    要請団から口頭で要請を受けても、「答えられない。そういう手続きになっているはずだ。こちらから、そちらの質問は妨げないし、要請の30分の時間をどう使おうが構わないが…」と開き直る態度を示す。
    数分のやり取りの後、「なぜ、証拠開示をしないのか」という質問を皮切りに、白木は唐突にペラペラと喋り出した。「開示はしている」という姿勢は、アピールしたいようで、饒舌になった。再審の手続きに関すること、新証拠の扱いについてなど、聞いてもいないのに講師になったかのように喋りつづけた。「説明はいいので、全証拠開示をしてもらえば、いいのだが…」という発言に対して、「では、話す事をやめる」という稚拙な返答しかなかった。よほど、警戒しているのだろうか、時折笑っているフリをしたり、強気に出たりする。いずれにしても、怯えを隠す手段に過ぎなかった。
    要請文、メッセージ、寄せ書きを読み上げ、手渡した。さいごは「何度も全証拠開示という言葉を私たちに言わせるな。どう転ぼうが、あんたたちには、すべて証拠を開示する義務があるし、改ざんについても釈明しろ」と締めくくった。さいごまで、白木の左足は震えていた。
    かなり、狭山情勢が緊迫しているのか、検事としても三者協議の行方について、気が気でないのだろうと感じた。そんな中、私たち全国連が追い打ちをかけるように、圧倒してくるのだから、相当こたえたはずだ。笑いたい気持ちを我慢し、おでこの汗を拭って外へ出た。春風が心地よく横切っていく。間違いなく、風は吹いている。
権力の中枢へ糾弾の嵐!事実調べ・再審を開始しろ!-東京高裁-
    つづいて、正午過ぎには、高裁に向かった。テレビや新聞の報道でもよく見る風景が目の前にひろがる。ここに要請に来たのかと思うと、心が躍った。腐っても権力の中枢なのだ。この場に糾弾を叩きつける。優越感や自己顕示欲のためではない。差別裁判を糺すために来たのだ。目の前にそびえている石造りの建物が生き物のように立ちはだかる。こいつが今も昔も変わらず、部落差別を貫き、格差をつくり、そして正義を偽っている。とにかく、許せなかった。
    案内を受けて、要請の部屋に入った。息する間もなく、3人の男が向かって左手の扉から現れた。真ん中に居るのが加藤管理官である。自己紹介の次に発した言葉は、「時間は30分」ということだった。わかりきっていることだ。なぜ、時間内でおさまらないのか、まるで理解していない。俺たちが、暇を持て余して来ていると思っているのか。闘志に火が付いた瞬間だった。
    「狭山三者協議において、裁判所はどのような態度で審議をするのか」と一問目を投じた。「そういった質問があったことは、伝えておく」との返答だった。石のような人間。表情も感情も動かない。毎度、同じことを繰り返し言葉にしているだけ。冷たく、硬く、重苦しい印象を与えて、逃げるつもりか。人間らしいと感じたのは、喋るときの唇の震えと目の挙動・充血である。高裁に来るたびに愕然とする。これが、本当に権力の中枢なのか。こんな情けない人たちに、私たちは差別され続けているのか。悔しかった。私たちを同じ人間として、扱っていないのだ。被害妄想ではない。「貴様らに言葉は通用しない」と言わんばかりの目つき、口先、その態度に怒りしか湧いてこない。
    要請団から、「最近ニュースで話題の浦和レッズでの試合で垂れ幕に『ジャパニーズオンリー』と書かれていたのを知っているか。あれについて、加藤管理官はどう思うのだ」と質問が飛んだ。「サッカーのことは、この場で話すことでないので、答えられない」と返答された。本気でそう受け取ったのか。こちらは、人権問題の話題を裁判所として、どう見解を示すのかを聞きたかっただけなのに、突飛な質問だと解釈したのだろうか。そこまで政治性のない人間が、高裁の代表として座っているのか。頭に血が昇った。「サッカーのことは答えられないというが、狭山事件についても答えないじゃないか!ふざけているのか!」言葉にしていた。多方面から弾劾の嵐が巻き起こる。
    唯一加藤が言葉に出来たのは、「要請をしてください。でなけば、要請行動を打ち切る」という一言だった。情けないと言わざるを得ない。手応えもない。お話にならない。こちらは、朝5時に起きた瞬間から要請は始まっているのだ。どこまで、愚弄すれば気が済むのだろう。唇を強く噛み しめることで平静を保ち、要請を進めた。
    要請文を読み上げ、メッセージ、寄せ書きを手渡し、まとめた。「これまで提出された証拠の中で、時計、手ぬぐい、インクの問題が争点になっている。これらを事実調べしない限り、三者協議に結論は出ないはずである。すぐに、おこない再審を開始しろ」腹の思いを全て言葉に出来なかったと、今にして思う。
青天白日の無実、 たたかいがつかみ取るもの-青年部でやりきった要請行動-
    自分を抑えるので必死だった。悔し涙をこらえたのも事実である。うまく、締めくくることが出来ただろうか。わからない。ただ、青年部でやり切れた要請行動に違いなかった。どう転ぼうが、私たちの勝利なのだ。狭山事件の再審を検察が、裁判所が決定付けるのではない。全部落大衆が一体となって、差別裁判を打ち砕き、掴みとるものである。その一歩を踏み出せたことに誇りを持っている。東京の空を見上げた。青天白日の光がひろがっていた。
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