社会保障制度の改悪を許すな!

(2013年09月18日)

  医療・介護・福祉・教育・・・生きる権利を奪う改悪反対!
安倍政権の改悪案の全体像があきらかに

    8月5日、「社会保障制度改革国民会議」で、社会保障制度の改悪について議論され意見がとりまとめられています。
    6日には、安倍首相に提出されました。秋の臨時国会にむけ、社会保障制度「改革」の全体像が明らかになってきています。
    医療、介護、年金のすべての分野で保険料負担が増えたり、窓口で支払う自己負担分が増える、給付の内容についても「削減」されるという内容です。
    医療の分野では、2014年度から17年度にかけて、① 70~74才の窓口で支払う医療費負担を1割から2割に引き上げる。② 高額療養費の自己負担の限度額を「引き上げる」。③ 国民健康保険の運営を、市町村から都道府県に移管するとしています。
    最後のセーフティネットといわれる生活保護は、すでに8月から食費や光熱費などの生活費にあてる「生活扶助費」の減額が始まっています。
    医療、介護、年金をはじめ社会保障制度のすべてについて、保険料や自己負担分を増額する、給付についてはどんどんしぼって削減するという内容です。

保険証の取り上げ、差し押さえの強化

    70才から74才の窓口負担の2割負担については、2008年4月の法改正で2割負担と決められていました。ときの政権の判断で、予算をつけて1割負担にすえ置いてきたものです。
    高額療養費の限度額の引き上げは、1ヶ月単位の通院や入院時支払う医療費の自己負担が増えるということです。今でも生命保険会社からは、「入院すれば医療費が30万円とか50万円必要ですよ」と宣伝されています。でも国民健康保険や社会保険には、高額療養費という制度があって1ヶ月間の医療費の上限額が決められています。「自己負担額」を超えた金額は、高額療養費として請求すれば払い戻される制度になっています。
    このさき高額療養費の負担額が引き上げられれば、生命保険への加入を促進することになっていくのです。
    国保の運営を都道府県に移すことについて国や厚労省は、国民皆保険制度を続けていくための「特効薬」のように宣伝しています。本当でしょうか。不況による失業や高齢化で、国保の加入者が増えている。保険料収入が増えず、市町村の財政負担が大きくなっているから、財政規模の大きな都道府県に肩代わりをさせようとしているのです。
    厚労省は、保険料の「滞納」を理由に医療を受ける権利を奪う健康保険証の取り上げ「資格証明書」にするなどの罰則を強化しています。東大阪などでは、財産の差し押さえまで始めています。「払いたくても払えない国保料」になっているということです。
    財政規模をいうのであれば、各市町村への国保支援策を手厚くしていけば保険料を低く抑えることも可能です。
    市町村の国保では、今の国保制度の不十分さを補うため「保険料の減免制度」や「医療費の一部負担」を減額する制度を作っています。「分割納付」の相談などにも応じていると思います。市町村より広域となる都道府県に、きめ細かな行政対応を望むことはできません。
    市町村から都道府県への流れは、「取り立て」や「財産の差し押さえ」がどんどんおこなわれ、健康保険証の取り上げで「資格証明書」の発行が増えていくことです。そして、国保料の収入に応じた医療サービスにしてしまうということです。
「保険あって介護なし」があらわに
    介護の分野では、2015年度から実施しようとしているのは、① 「要支援」などの軽度向けのサービスを段階的に市町村に移行する。② 高額所得者の介護サービスの自己負担を1割から2割に引き上げるということです。
    介護保険制度そのものが、「保険あって介護なし」に行きついたということです。
    介護保険制度には、要介護か自立という判定でした。その後、「要支援」制度ができ、介護にかかる費用を安くするため介護予防という取り組みがはじまったのです。今度は、「軽度向け」を介護保険から切り離し市町村におこなわせるというのです。その次は、都道府県というように「たらい回し」的に対応しているとしか考えられません。
    介護サービスの利用料2割負担は高額所得者となっていますが、その次には、利用料をすべて「2割負担」とする狙いがみえみえです。
年金の支給額が減らされる!
    年金については、① 高所得者の年金支給額の減額。② 公的年金等控除や遺族年金の非課税措置を縮小して課税の強化。③ 中長期的課題としているものの、年金支給年齢のさらなる引き上げなどが新聞で報道されています。
    国や厚生労働省が、このさき年金制度をどのように考えているのか。しっかりと、見ておかなければならない問題です。
    厚生年金にしても国民年金にしても、年金保険料を徴収しておきながら支給する段階になって支給額を減らすということはふつうでは考えられないことです。さらに、年金から税金を取り立てて、実際の支給額を減らしていこうということも考えています。これまで非課税として税負担のない遺族年金も税金の対象にしようしています。
    今でも、生活の糧である年金から、所得税や住民税、介護保険料、健康保険料が天引きされて生活を切りつめている現実を見ようとしていないのです。
生活保護の切り下げは始まっている
    最後のよりどころであった生活保護費の減額も始まっています。東大阪では、生活保護受給者の「調剤薬局」の指定制度が始まっています。医者にかかった際に、それぞれの「薬局」でクスリを出してもらうと似たようなクスリが処方されるからというのが理由です。「薬局」にも気軽に行かせないで、請求されるクスリ代の節約をねらっているのです。
    医療機関の近くの「薬局」で、クスリを出してもらうほうが便利に決まっています。いくつかの医者にを受診して、そこから届け出をしている「薬局」までクスリを取りに行くことになります。
    クスリを出し過ぎるということなら、医療制度の中で「クスリ」問題を検討すべき問題です。少なくとも、生活保護を受ける「患者」責任ではないはずです。
    1960年代から1970年代の終わりまで、「国民総中流」と意識される時代がありました。経済成長で所得が増加して、終身雇用の信用によって住宅や自動車ローンできるようになり「中流」と感じられる時代でした。「中流意識」をもっていた人びとは、それぞれが応分の税負担をし健康保険や年金制度によって「将来の不安」が少ない時代でした。
    小泉改革によって郵政民営化、労働者派遣法などの規制緩和がはかられ非正規雇用が終身雇用に取ってかわっていきました。働く者の所得が増えない、景気回復がはじまりました。国際競争力をつけるという名目で、法人(会社)の減税。累進課税制度を見直し、最高税率の引き下げもおこなわれました。景気対策として終身雇用を非正規雇用とすることで、労働コストを下げることで利益を上げ、減税の恩恵によって利益を積み上げていったのです。
    税金と聞けば誰しも嫌なものですが、税金には所得の再分配という役割があります。国の収入となる税金(歳入)をもとに、予算が編成されます。
    医療、介護、福祉、教育を含めて人間が人間らしく生きていくための基盤を整えること、人間の権利として保障していくこと、これが憲法でも明記されている国の役割です。
    長生きする高齢者にとっては、長生きが「悪い」とでもいうような社会保障制度の改悪には絶対反対です。
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