第22回全国大会の運動方針の基調より

(2013年05月09日)

 

4月6日 第22回全国大会で中田書記長が提案した運動方針の基調の要旨を掲載します。(文責・編集部)

部落解放運動の危機、全国連はどうなのか?

  今回の大会は石川一雄さんが不当逮捕されてからまる50年を迎える年に開催をしております。この大会が狭山第3次再審闘争の勝利に大きく力を発揮するもの 運動方針の基調を提案する中田書記長 としてかちとっていきたいと思います。

 

では、今年1年間、私たちはどう考え、どうたたかっていくのかについて提案をいたします。基本的には、昨年提案いたしました運動方針と大きくはかわりません。 昨年の提案にあたっての私たちの問題意識は、今、部落解放運動が非常に大きく後退しているなかで、「じゃあ、全国連はどうなのか?」ということです。

この荒本でも、かつて本部派・大阪府連が動員してつくった「再建支部」もほとんどまともな運動はしていません。では、「再建」が弱くなった分、自分たちはしっかりと大きくなれたのでしょうか? そうでもありません。同じように、全支部で一度振り返ってもらえばいいと思います。既成解同はどんどん崩れて、その分、私たちは自由に力を発揮することが出来ているでしょうか? 私たちの組織がその当時と比べて大きくなっているでしょうか?

 

10年ちょっと前に同和対策事業が完全に廃止をされました。その結果、住宅の家賃が値上げされ、奨学金制度も打ち切られてきました。商売人さんが、低利で融資を受けてこられたような制度もなくなってしま 提案を聴く各地からの参加者 しました。この同和対策事業がなくなったことが大きな原因でしょう、部落の人の部落解放運動離れといった状況が進んでいます。 このときに、なぜ、全国連も減っていくのかということです。そこに、これまでの私たちの運動の足らない点、不十分な点があると考えるべきです。このことを改めてしっかりと考えなおさなければなりません。 都市部落でも、地方や農村部落でも、高齢化、若者の流出が進んでいます。私たちの部落解放運動がよって立ってきた基盤が大きく変化し、崩れてきています。私たちは自分たちの足元をしっかりと見つめながら、もう一度、ゼロから団結を取り戻していくたたかいを開始していかなければなりません。

部落への特別対策でなく全ての人との共同の力で

私たちの部落差別をなくしていく、差別から自分たちの生活や権利を守りたい、ここから生まれてくる要求というのは、さまざまであり、さまざまな課題を抱えています。ところが、同和対策事業の考え方は、「部落はここが、これだけ低い( 進学率、親の収入…)」「だから、ここを直し、あそこを直したら差別はなくなる」といのが行政の考え方でした。 私たちは、部落だからあらかじめ特別な対策を求めているわけではありません。たとえば、「大きな病気をした。医者に行きたいのだが、滞納で保険証を取り上げられたままだ。どうにかならないだろうか」「なんでお金が払えなかったら、医者に診てもらえないのか」…。これが私たちの運動の原点でしょ。何も、部落だから保険料を安くしてほしいなどと、これまで言ったことはないです。ところが、行政はずるい。なにも、保険料を払えない人は部落の人だけではありません。しかし、行政は「じゃあ部落の人だ け、保険料については同和減免を適用しましょう」という形で、部落の人たちの運動が、同じように部落の人以外でも健康保険、国保で困っている人たちと手をつなげないように分断をしてきました。 今、格差や貧困というのは部落以外でもどんどん拡大されています。部落の人たちも困っているが、一般の人たちにも困っている人がたくさんいます。そういう人たちと一緒になって役所を動かしていく、政府を動かしていく、そういう運動を私たちは本気になって進めていかなければならない時代を迎えて います。 今こそ、みんなの知恵と力によって、自分たちの生活と権利を守っていく具体的な運動を始めていきましょう。

実態調査で要求をつかみ、村独自の課題に挑戦を!

これまでの全国連の現状を考えてもらえないでしょうか。家賃値上げ反対闘争を十数年たたかってきました。その家賃値上げ反対闘争をのぞいたら、 自分たちの村で何がいったい毎日の運動の柱になっているのだろうか?  どうです? 「ここ数年、新たなことに挑戦していないなあ…」。そういう支部の実情ではないですか?

しかし、実際には、さまざまな課題が村の中にあるはずだと思います。「あるのだけれど、なかなか手を出せていない。どうしたらいいのだろうか?」と立ち止まっている全国連の支部は決して少なくないと思います。 私たちが実態調査を提案しているのは、もちろん全国的な部落の状態というものを、政府も都道府県もやろうとしないですから、それなら自分たちで調べてみようじゃないかというのが実態調査のひとつの契機です。 それともう一つは、実態調査をすることによって、地域の実情が明らかになって、そこでみんなが何を考えて、どんなことを思っているのかがつかめます。そうすれば「こんな運動が必要ではないか」「こんな課題が必要なのではないか」、ということにしっかりと気づくことができるからです。 部落の人たちの思いというのは、決して運動離れという数字に表れているだけのものではありません。むしろ解同に代わって全国連が一から「こういう闘いをしましょう」「ああいう闘いをしましょう」と呼びかけるのを待っています。実態調査をしっかりとやって、村の課題を見つけていく、村が一つになれる課題や要求をしっかりとみんなで確認していく、そのために運動を起こしていくという取り組み方がいま、もとめられています。 それぞれの村ごとによって事情が違います。 それぞれに独自課題があるはずです。例えば、「就労の問題について地域で一番関心が高い。このことについて取り組みをやってみよう」。あるいは、「医療や介護、福祉についてとくに力を入れよう」という支部運動もあってもいいと思います。 同和対策事業という枠組みがないわけですから、むしろ、たたかい方は自由になります。そこに村の人たちの創意や工夫、意見を取り入れた運動が生まれてきます。私たちは部落解放運動全体が後退している、今こそ解同本部派にかわって、村の全部を引き受ける運動を一から始めましょう。これが、昨年に引き続き、今年の大テーマです。

反原発にとりくもう! 青年の育成に全力を!

そして、先ほどもいいましたように、たたかいは、なにも「部落だから、こうせよ!」というものではありません。議案書には、教科書無償化のたたかいの成果に触れてあります。その当時に同和対策事業の法律があったわけでもないし、同和対策を積極的に進めようという考え方が当時の政府にあったわけではありません。子供たちの教育を求める親の思いや、教育労働者のあつい思い、そういう人たちの闘いが大きくなって、全国で教科書無償化を実現していきました。この教訓に学びながら、自分たちの要求をさまざまな人たちの要求や課題としっかりと結合させながら運動を進めていくという考え方にたちましょう。

共同闘争の考え方も、同じです。この間、革共同の差別事件と居直り、それに対する糾弾と決別の思いから8・6ヒロシマを独自にとりくんできました。全国連のたたかいではないけれども、全国連が軸になって8・6の平和のたたたかい、反戦・反核のたたかいを積極的に担っていくというたたかいを始めました。そのたたかいに、いろんな人たちが共鳴し、協賛して共にたたかってくれています。部落解放運動の枠を超えた大きな連帯の運動を作り出すことが出来てきました。そういう共同闘争のあり方をこれから目指さなければならないと思います。 とくに、2年前に福島で原発事故が起こり、昨年、大飯原発の再稼働が強行されました。原発の事故とその処理、再稼働に向かう流れの中に、これまでの日本の醜い政治が一番体現されていると思います。原発反対に是非とも取り組みたいと思います。

もう一つ、昨年の大会で世代交代という提案もいたしました。全国連青年部が結成されました。そして、独自のたたかいを開始し始めています。若い人たちの問題意識をとらえ返していきましょう。青年たちの思いや行動を支えていきましょう。本部としては、失敗してもいいので思い切ってやってほしいということで臨みます。思い切って若い人の育成を始めていきたいと思います。 今回の提案の基本的な考え方を共有し、新たな挑戦を全支部で開始していくことをお願いいたします。

 

▲このページのトップにもどる