裁判所が役所が隠す証拠を見せろと要求ー住宅追い出し阻止裁判で大きな前進! 西宮・芦原住宅裁判の現状と課題

(2013年01月06日)

 

裁判所の「結審」を押し返して総括集会 【芦原支部】一一月二八日に行われた住宅追い出し阻止裁判の第三回控訴審は、裁判所がついに、西宮市に対して隠していた証拠を見せるよう要求するという大きな勝利を勝ち取りました。控訴審の開始いらい、あるときは住民の意見陳述すら不許可にするなど、結審する気満々の裁判情勢を、大きく押し返しました。 この間、たびたび報告させていただいていますが、この機会に、問題を整理したいと想います。

住宅からの追い出しなど許されない

1998年、私たちが住む改良住宅の家賃が一方的に応能応益家賃にされました。部落差別をなくすために、運動の力で建てさせた同和(改良)住宅への応能応益家賃は無効だとして、1999年11月に西宮市を被告にし、裁判に訴え出て、2004年5月に見事に勝利しました。しかし勝利判決は、訟務検事(元裁判官や検察官が国の代理人になる制度)を送り込むなどの圧力で最高裁でひっくり返され、それ以来、生まれ育った芦原地区に住み続けるためのたたかいを続けてきました。

最高裁決定以来の私たちの主張は単純明快です。家賃値上げ反対のたたかいが、非常に長期に及んだので現実的に支払える期間と金額で解決しよう、というものです。しかし西宮市は、「滞納金は3年以内に全額支払え 地域で追い出し反対署名を拡大する 。例外は認めない。」との態度を変えませんでした。 芦原の供託者の現実の生活に接近しようともしない裁判所は、「敗訴を想定して家賃を積み立てるなどの工夫が必要だった」(住宅追い出し阻止裁判の第一審判決)などといいますが、それならそもそもここまで争いは長期化しません。値上げが約束違反の新たな部落差別であり、そして現実に生きていくことができないから、全存在をかけて反対してきたのです。毎月の行政交渉、そして調停制度までも使って現実的な問題の解決を求めてきました。しかし西宮市は、わたしたちの要求を一ミリも認めようとせず、ついには住宅の明け渡しを求めてきたのです。

現在の裁判の大きな争点

私たちは、「一人の例外もなく三年以内に支払っている」という西宮市の主張をどうしても認めることができず、「裁判的にもまだやれることはあるはず」との執念で、膨大な資料を読み込み、不適切入居が疑われる事例を見つけました。たとえば、「12月31日に家賃を支払い1月1日に和解した」「日曜日に支払った」などです。中には市議会に住宅の明け渡しが提訴され、その議案が議決されたにもかかわらず「なかったこと」にされている事例もありました。

そこで、「やましいところがなければ資料を明らかにせよ」としたところ、「順次、過去の記録は消えていくのでわからない」との回答でした。ここから西宮市の墓穴堀りがはじまりました。「消えていくならなぜ、日付を正確に答えることができたのか?」と再質問したところ、一ヶ月もたって、「前回、不明と回答したが、もう一回よく調べてみると、実は、滞納整理ファイルというのがあった。しかしそれは個人情報の保護の観点から明らかにできない」という回答をしてきました。嘘でごまかそうとしたところ、そこを追及されたから、「実はありました。しかし個人情報の保護のためにみせられない」というのです。住むところが奪われるという重大な人権侵害に優る保護すべき個人情報などありません。

西宮市はこれまで、「一人の例外もなく滞納は3年で払ってきた」と言い続けてきました。たとえ一件でも特別扱いがはっきりしたら、西宮市はわたしたちを差別的に取り扱ったということになり、その主張は、根本から崩れます。

「隠している証拠を全部出せ」という私たちの主張に対して、さすがに裁判所も審理を閉じることができず、「インカメラ手続きで判断する」と言いました。インカメラ手続きとは民事訴訟法に定められた方法で、今回のような場合に、非公開で裁判所だけが見て判断する、というものです。最大の問題は、裁判所が見たところで西宮市の不正を見つけることはできない、というところにありますが、「証拠の開示を命じた」というところに変わりはなく、執念でこじ開けた勝利です。

当面、裁判は継続することになりましたが、なによりも不当判決に備えて、上告カンパは早急に目標を達成したいと考えています。今後とも芦原地区の住宅追い出し阻止裁判への注目と上告カンパへのご支援をよろしくお願いします。

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