10月狭山中央闘争・東京高裁糾弾に総決起しよう(連載第3回) 部落解放理論センター

(2012年08月22日)

 

三者協議のうちきり策動を許さず、証拠開示と事実調べをかちとろう

東京高裁・門野博裁判長が証拠開示勧告をだしてから今月で2年7ヶ月がたちます。にもかかわらず検察は、いまだに雑木林での血痕反応検査結果、雑木林を撮影した8ミリフィルムと被害者の死体写真にかんする証拠を隠しつづけています。

O氏の畑と四本杉の位置関係 前回は、警察が殺害現場をデッチあげたことを示す、雑木林での血痕反応検査結果が陰性だった、という新証拠について見ました。今回は、その雑木林が殺害現場でないことをしめす、もう一つの証拠=小名木証言と雑木林を撮影した8ミリフィルムについて見ていきます。

雑木林は殺害現場ではない

雑木林が殺害現場ではないことを示す証拠には、陰性だった血痕反応検査結果(前回を参照)と小名木さんの証言があります。小名木さんは、雑木林で被害者が殺害されたとされる5月1日、午後2時頃から4時半頃まで雑木林のとなりの桑畑で除草剤をまいていました。図を見てください。殺害は4時から4時半の間と推定されており、小名木さんは正にその時刻に現場からわずか数十メートルしか離れていないところで農作業をしていたことになります。

警察がデッチあげたストーリーによると、被害者は強姦されようとして「キャーキャー騒ぎ」「助けて」と「大きな声を出した」ので犯人に首を押さえつけられて殺された、となっています。しかし、小名木さんは悲鳴など全く聞いていない、作業中に見たのは妻と子どもを連れた老女ふたりと若い娘だけ、畑の周りで人が何かしていることを示す事実はなかった、と証言しています。

小名木証言は、雑木林で殺人事件などなかったことを明らかにしています。確定判決が認定した犯行事実はハッキリと否定されました。

2010年5月13日には、小名木さん関係の捜査報告書2通が新たに開示されました。石川一雄さんの無実を証明する新規で明白な証拠です。弁護団は、小名木さんの証言とともに、音響工学の専門家である安岡正人・東京大学名誉教授による第2鑑定書を提出し、今年4月19日付で小名木さんの証人尋問を早期に実施するよう要請書を提出しています。

安岡第2鑑定は、①杉の木のところで被害者の悲鳴が発せられれば地形や風、降雨、農作業音など想定されるすべての影響を考慮に入れても隣接する畑にいた小名木さんの耳もとに十分な音量で到達し、聞こえないと言うことはない。②悲鳴音が聞こえた場合、それを「誰かが呼んだような声」に聞き違えることはありえないと指摘し、科学的に小名木証言を補強しています。

私たちは、東京高裁・小川裁判長に、いますぐ事実調べを行うよう求めます。

証言のねつ造に失敗した警察

狭山差別裁判は、国家権力による差別犯罪です。5月2日深夜から3日にかけ、身代金を取りにきた真犯人を取り逃がし、4日被害者は死体で発見され、7日有力容疑者にも自殺された警察は、部落 事件発生当時の「殺害現場」付近の状況 から犯人をデッチあげることにしました。

狭山事件の真犯人は、警察と世間の目を部落へと誘導するためにいくつもの細工をしています。脅迫状にわざと当字や誤字脱字をおおく使っています。被害者の死体を埋めた場所は、部落の農道でした。当時、この近所の人たちは、犬や猫が死ぬとその死体を部落の農道に埋めたそうです。真犯人はそれをまね、警察は真犯人の細工にのったのです。

23日、石川一雄さんは別件で逮捕されますが女子高生殺しについては否認を続けます。30日、焦る警察は死体発見現場付近の聞き込みから「午後3時半頃から4時頃の間のことであるが、方向、男女の別は判らないが、誰かが叫ぶような声が聞こえた」という小名木さんの証言をえます。

警察は、31日、6月1日、2日、4日、6日と事情聴取をくりかえし、27日には検事も調書を取っており、第1審では、それが「自白を裏付ける証拠」として裁判所に提出されています(しかし証拠としては採用されなかったので、小名木証言は81年7月に証拠開示されるまで隠されつつづけていました)。

警察は、小名木証言をもとに石川一雄さんに殺害現場を雑木林にするように誘導したと思われます。ちなみに、この雑木林も部落の直近にあり、石川さんをはじめ部落の子どもたちの遊び場になっていました。4本杉や松の木など、石川さんが詳しくウソの自白を作れたのも、よく知っている場所だったからです。

警察が「自白を裏付ける証拠」としてねつ造することに失敗した小名木証言を、いまこそ石川さんの無実を証明する証拠として東京高裁・小川裁判長に事実調べさせましょう。

8ミリフィルムを開示せよ

この小名木証言を補強する証拠が、雑木林を撮影した8ミリフィルムです。写真を見てください。雑木林は木もまばらで、となりの桑畑で作業中の小名木さんから雑木林の中はよく見わたせます。もし被害者が雑木林で悲鳴をあげていたなら、小名木さんにハッキリ聞こえたに違いありません。しかし、小名木さんは悲鳴を聞かなかったし、誰の姿も見ていないのです。

1963年7月4日付の雑木林の実況見分調書には、現場を8ミリで撮影したと書かれています。この8ミリフィルムが開示されれば、小名木証言とあわせて、5月1日にこの雑木林で殺人事件はなかったことが明白になります。

にもかかわらず検察は、この8ミリフィルムは見あたらないとして開示を拒んでいます。絶対に許されません。何が何でも開示するよう強く求めていきましょう。(つづく)

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