証拠開示と事実調べをかちとろう! 10月狭山中央闘争・東京高裁糾弾にたちあがろう!(連載第2回)

(2012年07月25日)

 

東電事件の再審開始ーマイナリさんの釈放を報じる新聞 6月7日、東電OL殺人事件の再審開始が決定されました。しかも決定を下した裁判長は、狭山事件をも担当している小川正持裁判長です。この決定を狭山再審の扉をこじあけるためのテコとして大いに活用しましょう。 三者協議の証拠開示をめぐっては、前回、雑木林での血痕反応検査、雑木林を撮影した8ミリフィルム、被害者の死体写真の3点が攻防の焦点になっていることを見ました。今回は、警察が殺害現場をデッチあげたことを示す、雑木林での血痕反応検査について詳しい内容を見ていきます。 (部落解放理論センター)

東電OL殺人事件の再審を決定

再審をめぐって司法界がゆれ動いています。6月7日、東京高裁の小川正持裁判長(狭山も担当)は、1997年3月におきた東電OL殺人事件で犯人にデッチあげられたゴビンタ・プラサド・マイナリさんにたいして再審の開始を決定しました。理由は「もしも新たなDNA鑑定結果が公判に提出されていたなら、犯人は別の男性Xではないかという疑念を否定できず、元被告の有罪認定には到達しなかったのではないかと思われる」からです。逮捕時から一貫して無実を訴えてきたマイナリさんは、はれて15年ぶりにふるさとネパールへ帰国されました。

東電OL殺人事件とは、昼は東電の幹部社員として働き、夜は売春をしていた被害者が、売春現場のアパートで殺された事件です。警察・検察は、現場に残された使用済みコンドームに付着した精液と体毛がマイナリさんと一致するとして逮捕・起訴しました。しかし、2000年4月の一審判決は、現場から第3者の体毛が見つかっており解明できない疑問点があるとして無罪を言い渡しました。

にもかかわらず検察は控訴、12月には狭山第2次再審を棄却した高木俊夫裁判長が状況証拠だけを理由に逆転有罪を判決。2003年10月には最高裁が上告を棄却し、無期懲役が確定しました。

2005年、マイナリさんは獄中から再審を請求。日本国民救援会の支援をえて、昨年、検察にたいして新たに5点のDNA鑑定をおこなわせました。その結果、被害者の右胸に付着していた唾液と下半身の陰部などの付着物が第3者Xの精液や唾液のDNA型と一致しました。これが決定的な新証拠となり、今回の再審開始決定に至ったのです。

私たちは、この再審決定を、警察・検察による民族排外主義を糾弾し、民族差別なくしていくための一歩としなければなりません。警察は、当初から第3者Xの存在が疑われていたにもかかわらず、殺害現場アパートのとなりのビルに3人の デッチあげの「殺害現場」=雑木林では血痕反応はでなかった ネパール人とともにオーバーステイしていたマイナリさんを不当逮捕しました。そして「不法滞在する外国人=犯罪予備軍」の排外主義をあおりました。検察は、1審で無罪判決が出て拘留が失効したにもかかわらず釈放せず、証拠を隠したまま控訴しました。国家権力による民族排外主義をゆるさないために、たたかいましょう。

と同時に、この決定を狭山第3次再審の扉をこじ開けるためのテコとして大いに活用しなければなりません。小川裁判長にたいして、すでに提出されている新証拠の事実調べをおこなうように強くせまっていきましょう。

検察が血痕反応検査にかかわる新証拠3点を開示

2011年3月23日、第6回目の三者協議において、検察は殺害現場とされる雑木林の血痕反応検査にかかわる新証拠3点を開示しました。被害者は殺害される前に後頭部をケガして傷口から180CCほど出血しています。この雑木林が本当に殺害現場であるならば、かならず被害者の血痕が残っているはずです。にもかかわらず、3点の新証拠は血痕反応がなかった、と明言しています

一つめは、1985年当時に狭山事件を担当していた検察官Aが、元鑑識課技師に電話で問い合わせた結果の報告書(2月25日付)です。そこには、別の2名の検察官B、Cの名前とともに、ルミノール反応検査は「やった、陰性だった」と答えている、と走り書きされていました。

二つめは、この2名の検察官B、Cが作成した報告書(日付は明らかにされていません)です。そこにも「ルミノール実施の場所、松林、雑木林と、芋穴の2ヶ所は検査した」「検査結果報告書のようなものを作成した覚えはない」と言った、と書かれていました。

三つめは、1998年当時に狭山事件を担当していた検察官Dが、元鑑識課技師に聞き取りした報告書(日付は明らかにされていません)です。それにも「雑木林の松の木数本の、根元から約1メートルの高さ、および根元の地面にルミノール試薬を噴霧した」と答えた、と書かれていたのです。

これらの新証拠は、殺害現場とされた雑木林は警察のデッチあげであり、石川さんは無実である、ということを示しています。ここまで明らかになっているにもかかわらず、いまだに検察は、血痕反応検査結果は見あたらないとして隠し続けています。絶対に許されません。徹底的に追及し、かならず血痕反応検査結果を開示させましょう。

証拠開示は進むも、3点については検察が拒否

その後も、2011年12月14日、第9回目の三者協議では、三大物証(カバン、万年筆、時計)にかかわる供述調書、捜査報告書など14点の新証拠開示かちとりました。2012年4月23日、第10回目の三者協議では、スコップの捜査に関する書類、筆跡資料など19点の証拠開示かちとっています。

しかし、肝心要の血痕反応検査、8ミリフィルム、死体の写真は、検察がかくしつづけています。それどころか、死体についての新鑑定を提出し、裁判所にたいして三者協議の打ち切りを促そうとしています。絶対に認められません。(つづく)

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