広島支部からの中間報告ー実態調査を継続・拡大しよう!

(2012年03月21日)

 

【広島支部】実態調査を地元福島地区から始めています。地区内には多くの改良住宅や公営住宅が建ち並び、約1万人もの住民が住んでいると言われています。広島では主に住宅・医療介護・年金問題、被爆の実態、そして差別問題を聞き取りしています。

急な家賃値上げに怒り それでも住み続けたい

まず住宅については、応能応益家賃制度が強行されたことで、ムラの住環境が一気に悪化の途をたどっています。若い世代の流出で多くの世帯がお年寄りだけの住まいと、高齢化の深刻化が顕著に現われています。 そして家賃が急激に値上がりして、「高い」と経済的な負担を大きく感じていらっしゃる方々が、特にこれまで住民の会でたたかってこられてこの度市との和解 に応じてきた方の中に多くいらっしゃいました。その中でも、ここまで供託しながら低家賃で住んできたことは正しかったとも感じていらっしゃいます。 全体的にも「払えるが、高い」と感じている方がほとんどです。

また「(住宅の)材料の質が悪い。壁も空洞」「隣や下の音が皆聞こえる」「すき間風が入る」など住宅の老朽化を指摘する声から「建て替えてほしい」「でき るだけ住まいを変わりたい」が数多く聞かれました。また、階段の昇り降りが大変で、「エレベーターのある住宅に移りたい」と訴える方もいました。 一方「住みやすい・住み慣れている」「ふるさと・地元だから」という理由で「これからもこの地区で住みつづけたい」「この住宅に住みつづけたい」と答える 方も多かったのですが、「ほかに住むところがないから」といった声もありました。

被爆66年で様々な病気、満足に医療は受けてない

つづいて医療・介護・年金について、高齢者は、糖尿病や足腰の弱まりなど、多くの病気を抱えています。さらに広島は被爆から66年が経過し、被爆者は病気 ・ガン、体調不良の問題を抱えています。膝や腰の痛みをこらえながら息子の店を手伝う婦人。体が満足に動かず仕事を転々とし、今なおリハビリをつづける方 もいます。「週一回、膝と腰に注射を打ってもらって何とか動くことができる」と言っています。 ところが、「少々の病気は我慢する」「私が通院するので旦那が負担増を気兼ねして医者に行かなくなった」と満足に医療を受けることができていない現実が 浮き彫りになりました。 健康保険や介護保険料の負担について、「払えるが高い」「値上がりが気になる」との声が多く聞かれました。病院は市内に何ヶ所も通院する方もおられ、「 通院だけでも交通費がかかり体も大変」と訴える方もいらっしゃいました。なお、被爆者手帳をお持ちの方は、「収入が手当てと年金しかないので、これがない ともっと苦しい」と医療を受けながらもギリギリの生活をされていることを言われています。 また介護について、ヘルパーやデイサービスに来てもらっている人もいれば、収入の少なさから「介護を受けたいが受けていない」「障がいを持つ息子の施設 の空きを待っている状態」と不満を持っている方もおられ、介護での格差が生じている問題が明らかになりました。

そして年金については、「年金と原爆手当てのみ」や生活保護の世帯が多く、経済的な厳しさもまた深刻な状況です。支給を受けている方々の全員が「少ない 」との反応を示しています。「夫と合わせて2ヶ月で30万円ほど。福祉課に相談しても、どちらか片方しか受けられないと言われた。一人になったときに生活でき るように、手当てを受けられるようにしてほしい。」という高齢者世帯の収入の少なさから、生活費や医療・介護費を心配する声が圧倒的に聞かれます。

差別への認識に変化 しかし差別はある!

そして差別に対する意識については、中高年の世代の方々は、「以前は差別はあったが、今はきかない」という方が多く見受けられました。「福島町の電停や バス停で降りられなかった。降りるとまわりからの視線が痛く、背中につき刺さった。」「高校へ進学できる学力がなかったから、就職しようとしても書類で落 とされた。」「かつては、福島だからと言われたことがあったが、今はない」との意見がありました。 一方で、嫁いできた婦人で、「親戚に反対されて以後付き合いがなくなり、今もない」という方や、「福島町に転居してきたときに、近隣の一般地区の知人か ら『あそこは広島市の中で一番悪い所だから早く引越させた方がいい』と言われ、「そんな悪い所に区役所や専門学校ができるわけがないでしょ」と言い返した ことがあったという話をうかがいました。差別はあるのです。 在日の方は「今でも差別はある」とはっきりおっしゃいます。「同じように税金を払いながら、選挙権がないのはおかしい。国が差別している。」「兄の頃は 学校で韓国人だけ別に並ばされていた。学校でも差別がまかり通っていたと聞いた。」「日本人はアメリカ人をひいきして、韓国人は見下している。」と厳しい 声をうかがいました。

調査のなかから相談 婦人の結集うまれる

実態調査を通じて、さまざまな相談を受けました。これらもひとつの部落差別の実態であり、けっして見逃す問題ではありません。 「障がい」を持つ婦人がスーパーのエレベーターにはさまれ事故にあった件で、スーパー側との交渉を行ない、その結果、一定の補償をかちとることができま した。この交渉には何人もの婦人が心を寄せ、いつの間にか婦人部の会も人数が増えるようになりました。これも、相談する人がいないなかで実態調査を通じて 、支部への相談につながり、成果をかちとることができました。 しかしこの過程で考えさせられることが多くありました。いったんふたを開けてみると、様々なことで家庭崩壊や生活が成り立たなくなる寸前の人たちと向き 合うことになりました。本当に支部としてこれらが差別の実態であり、これらにどう回答を与えていくかという重要な岐路にたたされています。まだ少ない実態 調査の中からでさえ、深刻な実態が浮かび上がってきます。もっと全面的にとらえつくすべく、調査に入りつづけていく決意です!

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