昨年のたたかいの総括と新年の決意

(2012年01月18日)

  第21回全国大会の成功かちとり時代に対応する部落解放運動へ!
部落解放同盟全国連合会書記長 中田潔

狭山再審にむけて勝利をきりひらく 第12回大会での中田書記長
  狭山闘争について、昨年末の第9回目の三者協議で、三大物証にかかわる証拠開示をさせました。7回目の三者協議では、検察は「これ以上の証拠開示の必要はない」と開き直っていました。狭山再審への流れにたいする検察の反動的巻き返しを粉砕しました。証拠開示の流れを確定したとまではいえないまでも、検察の悪あがきをひとつ粉砕したことは確かです。 陶支部の街頭宣伝
実際に今回開示されたものがどこまで再審闘争を有利にしうるのかは弁護団の分析を待たなければなりませんが、狭山闘争をたたかう運動としては積極的に前進と評価していいと思います。
勝利の要因は、なんと言っても石川一雄さんの不屈のたたかいです。そして弁護団や、部落大衆、心ある市民のたたかいがあります。そのなかで全国連の要請行動の果敢なつみあげがありました。とくに、再審に対する検察の誤った態度、ふざけた態度に、狭山闘争をたたかう人々の怒りの声をぶつけながら徹底的に糾弾してきました。この私たち全国連のたたかいの力も勝利に大きく貢献したと胸を張って宣言していいと思います。
さらに、鹿児島の志布志事件、栃木の足利事件、茨城の布川事件、福井の事件での再審の開始、袴田事件での証拠の全面開示と、再審事件への社会の注目、検察に対する厳しい世論に、検察も背を向けられないというのもあると思います。
ともかく昨年1年間は、門野裁判長の開示勧告から2年、検察の抵抗のなか息も抜けないような証拠開示をめぐる攻防を背水の陣でたたかってきた1年だったと思います。
今年の狭山闘争をたたかうにあたって胸に刻んでおかなければならないことは、勧告から2年がたって、いまなお証拠開示を求めざるを得ないような現実です。この検察の不誠実さ、そして、門野裁判長のあとの岡田、小川の2人の裁判官も、私たちの側から見れば消極的であると感じざるを得ないような現実です。新たな14点の開示についても、私たちは手放しで喜んでいるわけにはいきません。2012年、この新たな1年も、さらにたたかいを強めていかなければなりません。
全国連は5・23、10・31での一斉行動を軸にして、また23デーの街頭宣伝などにとりくみ、狭山闘争への全人民決起を復活させるべく、労働者や市民へ広く訴えをおこなってきました。一昨年には自治労奈良市従業員労組が呼びかけて10・31狭山集会が行われ、全国連も積極的に参加しました。昨年には、大阪で権力の弾圧と、労働運動つぶしとたたかう労組が中心となった反弾圧ネットワークが主催した集会で、石川一雄さんの特別講演が行われました。たたかう労働組合のなかに狭山闘争への支援の広がりをつくりだせたことが大きな成果としてありました。狭山全人民決起へのとりくみは、今年も断固として拡大していきます。

2つの選挙に挑む 村で支持が拡大!
きむら秀幸君を励ます会 昨年、全国連は2つの選挙戦に組織内候補を立ててたたかいました。これまでの革共同との共同闘争で選挙戦を戦うというあり方から、寝屋川でも、東大阪でも、全国連の力だけで選挙に挑みました。きわめて厳しい条件での選挙でしたが、全国連の自前の選挙として、当該支部を先頭に全関西の同盟員の総力でたたかいぬけたことが何よりです。敗北という結果ですが、候補者を先頭に、支援者、同盟員が主人公となる選挙をたたかった、ということは積極的に評価するべきだと思います。
2つの選挙で共通する意義として、この選挙戦が全国連が部落大衆の主体的な立ち上がりを作り出していくもの、部落解放運動の裾野をひろげていくたたかいとなったということです。
寝屋川支部にとってははじめての選挙への挑戦です。支部の組織的現状からは「無謀」とまではいいませんが、「本当にたたかえるのか」という不安と戸惑いのなかでの選挙でした。実際、負けたのですが、これまでの支部の運動の枠を大きく超えて村の人たちの支援と共感をつくりだすことができました。同時に、部落大衆の部落解放運動への期待の強さを証明することができました。「処分闘争」から30年、30年前は「過激派」あるいは「青年のはねあがり」といわれていた寝屋川支部が、この選挙で村を大きく揺り動かすことができました。村の人の中からも「次は必ず勝つ」との声が出ています。私たちは4年後の挑戦権を獲得しました。
そのうえで、寝屋川における支部運動の直すべきところも明確になった選挙でした。いままで見えていなかった村の現状、村の課題を再認識することもありました。あらためて村全体を相手にした部落解放運動を進めていかなければならないという課題が見えてきました。
また、きむら候補には、寝屋川支部と寝屋川市の市民全体にかかわる課題とを積極的に結び付けていくことも求められています。反戦・平和、反原発をはじめ、寝屋川支部が共同闘争で働きかけ、まとめ役となって、市民のつながりとつくりだしていく課題が求められています。
東大阪市議選では、荒本支部と東大阪国保と健康を守る会(国健会)は力を出しきって「第2の候補者」となって選挙戦をたたかいぬきました。敗北という結果に終わりましたが、村の人たちと国健会の人たちの期待の強さはどれほどだったか、しっかりと胸に焼きついています。荒本支部は、きびしくこの選挙を総括し、選挙戦に勝利できる支部建設のたたかいを始めています。

実態調査にとりくみ新たな団結の強化へ
狭山、選挙戦とならぶもう一つの重要課題であった実態調査については、計画通りにはすすんでいません。それには、いろいろ原因はあると思います。たとえば選挙戦があり、また、狭山闘争も息も抜けない決戦の2年間で全力を挙げねばならなかったということがあります。また、支部の大きさにもよりますが、実態調査そのものが組織的に負担のかかる大きな運動方針だったということもあります。それにたいして、それぞれの支部・地区の実情にあわせて具体的に取り組んでいくための踏み込んだ討論を、本部としてやれてこなかったことが一番の原因だと反省しています。大会の議案書で提起し確認している以上に、実情をともなった討論が遅れていました。全国連のある県や市単位で全体を展望して部落解放運動の課題や果たすべき役割を認識できるような、ていねいな討論と一致が必要でした。
しかし、取り組まれた支部・地区では、「大変だったが、やって良かった」との声があがっています。取り組みのなかで、新たな団結の強化に結びつけられるような課題を見いだしています。
今年は、すべての県連・支部、地区で目標を完遂できるよう、本部としても全力で役割を果たしていきます。

部落解放運動の新たな飛躍をかけて
今年のたたかいについて、部落解放運動の危機、消滅もあり得るほど大変な局面にきていると思います。同和対策事業の全廃、「地対協」いらい20年以上にわたる部落解放運動つぶしの攻撃、大不況と格差の広がり、部落の人々の状況もその中にたたき込まれています。一方、部落解放運動の主体の側も、部落大衆の生活のしんどさ、そこからくる世の中への不安や憤りにたいして、本部派をはじめしっかりと受けとめ向き合おうとしていません。そのことが部落大衆の運動ばなれをおこしています。部落解放運動の全体が部落の人々への影響力を失っていっています。
こうしたなか、全国連は20年間、仁王立ちしてたたかってきました。しかし、今、全国連に部落大衆の期待が集まってきているのでしょうか? 全国連の創立から10年間は一定、期待を吸収してきたと思っています。しかし、それは本部派や同和会も含め部落解放運動に組織されている人の中での勢力争い、これまで何らかの運動団体の影響下にあった人という枠のなかでの争いです。全国連もその枠のなかでの一勢力でした。
しかし今、この枠そのものが急速に縮小しています。枠のなかでの運動では、もはや立ちゆきません。私たちはこの枠自体をつくりなおしていかなければなりません。
今年の第21回全国大会の課題は、部落解放運動全体が厳しい時代に、もう一度、部落解放運動を土台から再生していくことです。そのためには、どんな運動でなければならないのか論議します。これまでの全国連の三大闘争路線はおおむね正しいと思います。しかし、これまでの枠にとどまることはできません。要求闘争をたたかうときでも、対行政闘争の枠組みというわけにはいきません。今の時代、要求を実現していくためには、大きく政治反動とたたかい世の中を変えるたたかいのなかに部落解放運動を積極的に位置づけてたたかっていくことが必要です。

 第21回全国大会へ
本年の第1のたたかいとして、第21回大会を意義ある大会にして、時代に通用する部落解放運動をつくりだしましょう。部落の人々は社会がつくりだす矛盾に決して「鈍感」ではありません。この部落のきょうだいに、たたかいの実践課題をはっきりと示すのが第21回大会の役割です。そのためにも、実態調査は大事な取り組みです。全国連各支部・地区は調査の完遂まで継続してとりくみましょう。
狭山第3次再審闘争は、この1年も証拠開示をめぐる攻防がつづきます。検察も筆跡や死体に関する新たな鑑定書を出すと言っています。私たちは、書面審理での棄却を絶対に許さず、今年こそ全証拠の開示をかちとりましょう。そして、高裁に事実調べの開始を迫りましょう。
また、昨年の3・11の大震災、原発事故をめぐって、これまでの国のあり方が大きく崩れはじめています。民主党政権は、それを居直り、もう一度、反動的に支配を立て直そうとしています。消費税の増税しかり、名護・辺野古への新基地のおしつけ、原発再稼働の動きしかりです。私たちは、労働者、市民と共にこうした政治反動とたたかっていきましょう。
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