2010年こそ狭山再審実現のとき

(2010年01月12日)

  「証拠開示勧告」についての見解

証拠開示勧告の意味するものは?
12月16日、狭山事件の第三次再審にかかわる「三者協議」において、東京高裁第四刑事部の門野裁判長は、検察にたいして8点にわたる「証拠開示勧告」を行いました。
12・15 開示勧告が行われた8点の未開示証拠とは、「犯行現場」とされる雑木林周辺で、「犯行時間帯」に農作業をしていた人の証言など3点、筆跡に関する証拠、 石川一雄さんの取り調べ時のメモ、調書案など、死体の鑑定書添付の写真などです。さらに裁判長は、検察が「不存在」だとした、「殺害現場」での血液鑑定報 告書について、「存在しないとするのはおかしい」としたうえで、「その合理的理由の説明」を検察にたいして要求しました。
この勧告の内容は、狭山弁護団が求めていた証拠開示要求には満たないものですが、これが開示された場合、いずれも、「新規かつ明白な」石川一雄さんの無実を示す証拠となるものであり、狭山再審をこじあけていく具体的水路が切り開かれることになります。
ついに、警察と検察によってひた隠しにされてきた石川一雄さん無実の証拠が白日のもとに明らかにされるときがきたのです。
また、この三者協議において、次回の三者協議を5月に行うことが確認されたといいます。周知のように、門野裁判長は2月初旬をもって退官することが決 まっており、この次回の三者協議のスケジュールの確認は、検察にたいする証拠開示の最終期限を切ったものであるとともに、門野裁判長に代わって新たに着任 する裁判長のもとにおいても、ひとまずは、この三者協議が継承されることが確認されたということを意味しています。

いまこそ、狭山再審実現のとき
じつに決定的情勢です。そもそも、門野裁判長は、当初から「自分の手で結論を出す」と宣言しており、退官前の狭山第三次再審棄却をねらっていました。こ れにたいして、石川一雄さんは、昨年秋に、毎週、東京高裁の門前に立って道行く人々に狭山再審を訴えるたたかいに立ち上がりました。全国連は、決死の覚悟 で、組織の総力をあげて、連続した要請行動に取り組みました。また、全国の部落大衆と、狭山闘争に心をよせる労働者は、のべ数万にものぼる抗議ハガキを検 察と裁判所にたたきつけたのです。この力が、門野裁判長による退官前の棄却策動を木っ端みじんに打ち砕き、「三者協議」を開かせ、そして、証拠開示勧告を 出させたのです。
寺尾判決、上告棄却を乗り越えて、再審のたたかいに立ち上がっていらい、苦節32年、わたしたちは、ついに、「開かずの門」と言われた狭山再審実現への 流れをつかみとったのです。卑劣な差別裁判によって、闇から闇に葬り去られようとしていた石川一雄さんの無実と、国家権力による部落差別をつかった犯人 でっち上げという差別犯罪の全貌を明らかにする突破口が、ここに、ついに開かれたのです。
しかし、まだ、証拠の開示も行われていないし、事実調べも行われていないことをしっかりと肝に銘じる必要があります。いま、狭山闘争の戦列のなかには、 「門野裁判長はすばらしい」「門野裁判長を後押ししよう」などという裁判所にたいする武装解除と幻想をあおるような主張が出始めています。これは、かつ て、第2審において、寺尾裁判長が着任したときとまったく同じです。寺尾は、「部落問題を勉強している」といい、石川一雄さんの無実の訴えを聞くふりをし ながら、実際にはいっさいの事実調べにふたをして、「無期懲役」判決を下したのです。わたしたちは、この悔しさを絶対に忘れることはできません。
わたしたちが、いまなすべきことは、裁判所にたいする「賛美」や依存ではなく、わたしたちの力で、実際に検察に証拠を開示させ、裁判所に事実調べを行わ せることです。裁判所の「良心」に期待するのではなく、真実と正義に根ざした大衆闘争によって最後の勝利を握りしめるのです。
検察によって隠されているのは、裁判所が開示勧告を出した8項目の証拠だけではありません。未開示証拠のリストを出させ、検察が隠し持つすべての証拠を 出させること。そして、裁判所に、開示された証拠の事実調べと、石川一雄さんの本人尋問を行わせること。これを大衆的な糾弾闘争の力によって、検察のあら ゆる悪あがきを粉砕して実際に行わせなくてはなりません。つかみとった「勝機」をつかんで離さず、いまこそ、すべての力を証拠開示の実現と、事実調べの実 現に結集していかなくてはならないのです。

裁判所は事実調べをおこなえ!
全国連は、狭山第三次再審の勝利のために、いまこそ総力をあげて立ち上がるべきときがきたことを、すべての部落大衆、労働者のみなさんに、心から訴えたいと思います。いまこそ、狭山再審の門をこじあけるときです。
当面する最大の焦点は、2月上旬の裁判長の交代時と、5月に予定されている三回目の三者協議です。検察による悪あがきを打ち砕き、隠されたすべての証拠を実際に出させること。そして、新たな裁判長のもとで、実際に事実調べを行わせることです。
裁判長の交代や「三者協議」を、けっして密室でのやりとりなどにしてはなりません。狭山闘争に心を寄せるすべての人々にその動向を明らかにし、すべての人々の力を結集して勝利をもぎとるのです。
すべての同盟員のみなさん。部落のきょうだい、姉妹のみなさん。たたかう労働者のみなさん。いまこそ本当に決戦のときです。昨年秋から取り組まれてきた 検察と裁判所にたいする抗議ハガキ運動をさらに強化、拡大し、全国の声を裁判所につきつけよう。ただちに、全国各地で、〈事実調べを行え〉の要請ハガキの 大運動に打って出よう。2月から5月へ、連続した要請行動に立ち上がろう。
(『部落解放新聞』226号 2010年1月10日)
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