10・25狭山中央闘争の基調(全文)

(2009年11月10日)

 

 1)狭山闘争の歴史的な決戦局面に際して総決起を訴える

①狭山再審闘争勝利への歴史的なチャンス
●32年ぶりに開かれた「三者協議」
9月10日、弁護団、検察、裁判長の三者による協議が行われました。この三者協議は、通常の再審裁判においては頻繁に行われるものですが、狭山事件の再審においては、77年の第一次再審請求直後に一度開かれただけで、第三次再審にいたるまで32年間一度も開かれなかったのです。つまり、狭山再審においては、事実調べを行わないだけでなく、裁判手続きさえ無視して裁判所は密室での「審理」、決定をつづけてきたということです。部落差別によるデッチあげという権力犯罪をかくすために、裁判所は差別を積み重ねてきたのです。

●石川一雄さんの不屈のたたかいが、ついに裁判所を追いつめた
しかし、ついに、こうしたやり方が破綻しました。先日、足利事件の再審第一回裁判が行われましたが、この足利事件をはじめとして、警察と検察によるデッ チあげがつぎつぎと暴かれ、検察のいいなりになって無実の人を犯人にしてきた裁判所にたいして、国民的な怒りと批判が集中しはじめたのです。
でも、狭山第三次再審において、東京高裁を追いつめたもっとも大きな力は、石川一雄さんの不屈、非妥協のたたかいです。石川一雄さんは、「仮出獄」によ る懐柔、監視、抑圧をはねのけて、「無実がはれるまでは、ご両親の墓前にも立たない」という誓いを立て、あくまで再審による無実の判決をかちとる決意で、 不屈にたたかいぬいています。
この石川一雄さんの非妥協の決意のなかには、無実の石川一雄さんを部落差別によって犯人に仕立てた国家権力にたいする徹底糾弾の意志がこめられており、 三〇〇万部落大衆の差別撤廃への願いが込められているのです。石川一雄さんのたたかいの背後には三〇〇万の部落大衆の差別にたいする怒りとたたかいがあ り、労働者階級の差別撤廃のたたかいがあるのです。
46年間にもおよぶ不屈のたたかい、あらゆる手段をつくした妨害や圧力をことごとくはねのけて、<無実、差別>の原点を一ミリたりともゆずることなくた たかいぬく石川一雄さんを先頭にした狭山闘争の不屈の発展の力こそが、東京高裁の密室審理を打ち砕き、裁判所と検察を「三者協議」という公の場に引きずり 出したのです。
いまや、狭山第三次再審闘争は、歴史的な決戦に突入しました。いや、狭山闘争にとって、32年ぶりとも言える、勝利への大きなチャンスが到来したと言うべきです。わたしたちは、これを絶対にものにし、再審の門をこじ開けなくてはなりません。

②<証拠開示要求>の大運動を
●門野裁判長の退官前決定を阻止しよう
しかし、「三者協議」が行われたからと言って、再審が決まった訳ではありません。「三者協議」は、「通常の裁判手続きをとった」という再審棄却のための アリバイづくりという意味をも持ちます。寺尾判決をはじめとして、狭山事件の裁判において、わたしたちは、これまで何度悔しい思いをしてきたことでしょう か。
門野裁判長は、来年2月の退官がきまっています。この、門野という裁判官は、狭山担当のために名古屋高裁から東京高裁に赴任してきた裁判官です。それゆ え、なにも決定しないまま退官ということはありえません。そして、事実調べがないままでの決定は、棄却以外にないのです。わたしたちは、この、門野裁判長 による退官前の決定を絶対に阻止しなくてはなりません。

●大衆的なたたかいの力で<証拠開示>をかちとろう!
9月10日に行われた三者協議で、弁護団による証拠開示の要求にたいして、裁判長は、検察に「10月末までに回答せよ」と指示したと言います。また、この結果にふまえて、次回の三者協議を12月に行うということも確認されたと言います。
証拠開示の要求とは、検察が隠している狭山事件の証拠をすべて出せという要求です。このなかには、確定判決において「殺害現場」とされている「雑木林」 でのルミノール反応(血液反応)報告書など、「自白」がでっち上げられたものであることを暴き、石川一雄さんの無実を明らかにする証拠がたくさんありま す。検察が隠しているこれらの証拠を出させ、事実調べを行わせることができれば石川一雄さんの無実は完全に明らかになります。門野裁判長による退官前の棄 却決定を阻止し、再審の門をこじ開けることができるのです。
しかし、証拠開示も、事実調べも、検察や裁判所にまかせておいて実現されるものではありません。足利事件をはじめ再審が決まった数々の事件において、弁 護団の証拠開示の要求にたいして、検察はいつも「そんな証拠などない」とウソをついて証拠を隠し続けてきました。狭山事件においても、いまだに証拠のリス トさえ示していないのです。こうした検察の態度を打ち砕くのは、これを許さないという大衆的な意志と力です。検察による証拠隠しを許さない大衆的なたたか い、裁判所による勝手な決定を許さない大衆的なたたかい、部落差別によるデッチあげを許さない大衆的なたたかいの力によってこそ、証拠開示と、事実調べは 実現できるのです。

●来年2月へ、4ヶ月間の決戦に立ち上がろう!
来年の2月、とくに、この12月までの年内の期間が、狭山再審闘争の天王山となりました。わたしたちは、もてるすべての力を総結集して、検察による証拠 隠しを打ち破り、検察が隠し持つすべての証拠を引きずり出し、裁判所に事実調べを行わせるために立ち上がろうではありませんか。<検察は証拠隠しをやめ ろ!><すべての証拠を開示せよ!><裁判所は事実調べを行え!>これを、狭山闘争をたたかうすべての人々の合い言葉にした大運動にうってでようではあり ませんか。
そのための具体的なたたかいのひとつは、検察にたいする<証拠開示>要求のハガキ、抗議の電話などの大衆的取り組みです。全国連は、本集会に向けて、全 国の部落大衆、労働組合などに呼びかけてハガキ、電話の組織化に取り組みました。まだ始まったばかりですが、ハガキは数千枚の規模で集まり、抗議電話は検 察に特別な体制をとらざるを得ないような状態に追い込んでいます。
しかし、まだまだ、こんなもので満足する訳にはいきません。本集会をあらたな出発点にして、これから本格的に、この大運動に取り組んでいきたいと思いま す。これ以上証拠隠しをつづければ検察がパニックに陥るような情勢をつくりあげることはできるし、そうしなくてはなりません。また、この運動は、狭山闘争 に心を寄せる人々を全国の部落や、労働組合のなかから掘り起こし、その力を結集して、狭山闘争の新しい発展の土台をつくります。本部派の拠点部落、未組織 の部落、労働組合、市民団体などに大胆に分け入って、70年代を上回るような狭山闘争の一大運動をつくりあげようではありませんか。

具体的なたたかいの二つめは、来年二月に向けて、裁判所、検察にたいする要請行動の圧倒的な強化です。わたしたちは、本集会を引き継いで、明日、大要請 団をもって東京高裁と高検にたいする要請行動を行います。さらに、間髪をいれず、11月17日につぎの要請行動に立ち上がりたいと思います。抗議のハガ キ、電話のたたかいと一体となって、狭山差別裁判糾弾の切っ先になるたたかいとして、要請行動に立ち上がろうではありませんか。
いまひとつ、法務省にたいする要請、交渉など、国にたいする糾弾闘争の具体的なたたかいも検討したいと思います。具体的な方針は未定ですが、いっさいの 土台となるのは、ハガキ、電話による大衆的な意志と力の掘り起こしと結集にあります。この決戦期、わたしたちは、考えられるありとあらゆる手段をとって、 あらゆる力を結集して、狭山再審の勝利をわれとわが手でつかみとろうではありませんか。

③狭山差別裁判糾弾闘争を再建しよう
●本部派による<10・31>中央闘争の放棄
狭山闘争の勝利のために、いまひとつ確認したいことは、腹をすえて、全国連の手で、狭山闘争をあらためて打ち立て直さなければならないということです。
狭山闘争にとって、歴史的な決戦とも言うべきこのときに、本部派は、なんと、<10・31寺尾判決糾弾>の中央集会を放棄してしまいました。このかん、 本部派は、狭山闘争をたたかう主体を、部落解放同盟ではなく、「市民の会」にしてしまい、本部派同盟員も、その一員として参加するというようなものにして きました。狭山闘争が、解放同盟を越えて、広くすべての市民をまきこんだ運動に発展していくのはいいことです。しかし、本部派の考え方は、「市民の会」に することによって、狭山闘争を、「部抜き」「差抜き」にしてしまうものだったのです。いまや本部派の狭山集会においては、「部落」「差別」の言葉じたいが 完全に消え去るという驚くべき状態となっています。
しかし、考えてもみてください。「部ぬき」「差ぬき」でないと、大衆的にならないのでしょうか。とんでもありません。狭山闘争は、部落差別によるデッチ あげだからこそ、また、この国家権力による部落差別を許さないたたかいだからこそ本当の意味で大衆的に取り組まれてきたのです。「部ぬき」「差ぬき」は、 狭山闘争を投げ捨てるものでしかありません。
そして、事実、本部派は、ついに、本年、狭山再審闘争の原点ともいうべき、<10・31中央闘争>を投げ捨てました。これは、歴史的な出来事です。聞く ところによると、10月の狭山中央闘争に参加しようとしていた労働組合の人たちが、中央闘争がないということを知って愕然としたともいいます。へたをした ら、狭山闘争全体が崩れ去ってしまいかねない情勢だということです。

●全国連の手で狭山差別裁判糾弾闘争の新たな爆発を
いま、狭山闘争は、勝利への決定的なチャンスを迎えているとともに、その背後で、狭山闘争全体が崩れ去ってしまいかねない重大な危機をもはらんでいるという風に見なければなりません。
わたしたちの使命は重大です。いまこそ、全国連が狭山闘争の責任勢力として登場し、狭山闘争全体の戦列を再編し、新たな発展をたたかいとっていかなけれ ばなりません。すでに述べた今秋の決戦方針は、こうしたわたしたちの決断にもとづくものです。必ずできます。わたしたちが呼びかけるハガキ、電話の運動に たいして、多くの地域で、本部派のなかからも、本部派との共闘関係にある労働組合のなかからも多くの協力者が出てきています。先ほどの労働組合の人たち は、全国連の本集会が唯一の中央闘争として行われることをインターネットで知って、これに行くべきかどうか真剣に討議したといいます。部落大衆や労働者は たたかう方針を待ち望んでいるのです。
全国連創立の原点は、狭山闘争の勝利にこそありました。いまこそ、この原点に立って、わたしたちの根こそぎの総決起をたたかいとるときです。この秋の決戦に立ち上がり、狭山再審の門をこじあけるとともに、部落解放運動の情勢をぬりかえようではありませんか。

2)差別糾弾闘争の復権へ

①鳩山政権をどう見るか
本集会において、第二に訴えたいことは、いまこそ差別徹底糾弾のたたかいを復権して、部落解放運動の新しい発展の時代をわれと我が手でこじ開けようということです。

●労働者・民衆の怒りが自公政権を打ち倒した
すでにご存じのように、8月末の総選挙において、民主党・鳩山政権(連立政権)が樹立されました。この出来事はとても重大です。
長い間、政権の座に君臨して、労働者、民衆を苦しめ、戦争の道を突っ走ってきた自民党(自公政権)にたいして労働者、民衆の怒りが爆発して、ついに、自公政権が労働者、民衆の手で打ち倒されたのです。

●鳩山政権は労働者・民衆の政権ではない
しかし、鳩山政権は本当の意味で労働者、民衆の気持ちを代表する政権ではないことが、早くも露呈しはじめています。
なによりも、鳩山政権を構成する顔ぶれは、社民党の福島党首や辻元さんらが加わったとはいえ、連合の出身者や松下政経塾出身者などが主軸を占めています。自民党とは手法が違うとはいえ、労働運動をつぶし、資本家の利益を守るという点においては何一つ違いがないのです。
もうひとつ、見過ごしてはならないのが、鳩山政権のもとで憲法改悪というとんでもないことが進められようとしていることです。軍備の増強と自衛隊の本格 的な海外派兵を目的とした「防衛計画の大綱」見直し(新たな「防衛計画の大綱」づくり)を、選挙の過程では「当面行わない」と言っていたにもかかわらず、 政権が発足するやいなや「年内見直し」を言い出しました。これは、まさに、実質的な改憲の動きです。
また、民主党は選挙の過程では、沖縄・普天間基地移転問題について「県外移転」を公約として打ち出しておきながら、いまや、それさえも反故にしようとしています。
このように、わたしたちは、政権が変わったからといって安心することはできません。新しい政権に「期待」することもできません。むしろ、たてまえの裏で 進もうとしている改憲というとんでもない動きを絶対に許さず、わたしたち自身のたたかいの力を強固にしていかなくてはならないのです。

●労働者・民衆の運動こそ歴史を変える力
しかし、政治の流れが変わり始めたことは事実です。総選挙の結果は、労働者・民衆の手で世の中を変えることができることを鮮やかに示しました。いま、本 当に必要なのは、労働者、民衆にとって、自分たちの団結、自分たちの運動(たたかい)です。戦争を食い止めるのも、労働者が人として生きられる世の中をつ くるのも、差別のない世の中をつくるのも、自民党や民主党などの政権政党ではなく、労働者、民衆の、自分たちの団結と運動です。

②吹き荒れる差別に、差別糾弾闘争の復権を
●民衆の力で政治を変える時代!
これまで、自公政権の下で、部落解放運動にたいする解体攻撃が進められてきました。差別糾弾闘争にたいする弾圧を軸に、同和対策事業の打ち切りがすすみ、このなかで部落解放運動の融和運動化がこんにち驚くべき勢いで進んでいます。
その結果、どのような事態が起こっているでしょうか。再び部落差別が吹き荒れ、深刻な不況のなかで部落大衆は仕事と生活の基盤を根こそぎ奪われようとし ています。まさに、こんにちの<差別の洪水>とも言える状態は、部落解放運動の解体攻撃が生み出したものに他なりません。
民主党の政権によって、部落解放運動にたいする政策が根本的に変わるとは思えませんが、民衆の力で政治を変える時代がやってきたのです。わたしたちは、いまこそ部落解放運動の復権をかちとらなくてはなりません。
しかし、それはまた、法や制度をつくってもらうというようなことではありません。わたしたち自身の手で、差別糾弾闘争を復権させることこそが部落解放運動を復権させる唯一の力です。

●全国連のなかにみなぎる差別徹底糾弾の意志
いまや、全国連のなかには、差別徹底糾弾の意志とエネルギーが満ちあふれています。
一昨年、広島事件と言われる、権力の差別攻撃に屈した当時の共闘の仲間(革共同)による差別事件が引き起こされました。ところが、全国連による糾弾にた いして差別事件を引き起こした革共同は、「差別はデッチあげだ」と一方的に主張して開き直り、事実確認会への出席さえ拒否したのです。このときに、わたし たちは、革共同とは創立いらいの共闘関係にあったものとはいえ、差別糾弾の原則を一ミリも曲げずに徹底糾弾をつらぬき、ついに、革共同との共闘関係を断つ 決断をしたのです。 この決断の正しさ、差別糾弾の原則を非妥協につらぬくことの大事さは、いまや完全に明らかになっています。長野での結婚差別事件糾弾 闘争、茨城での職場において発生した差別事件にたいして会社ぐるみの糾弾闘争として取り組んだたたかいなど、差別糾弾闘争をたたかう意志と新たな力が組織 のなかにみなぎっているではありませんか。このことによって、本部派から離反した人々をも含めて、「差別があったときに相談できるのは全国連しかない」と いう風に認知され、全国連が部落解放運動復権の新しい結集軸となろうとしています。また、8・6ヒロシマ集会の2年連続の開催をはじめとして、差別糾弾の たたかいを支持し、ともにたたかう新たな、本物の階級的共同闘争陣形の形成への展望が開かれつつあるのです。

●部落解放運動の新しい時代をこじ開けよう!
いまこそ、全国連が躍り出るときです。そして、その最大の関門こそ、現下の、狭山第三次再審の4ヶ月決戦です。このたたかいは、狭山第三次再審の勝利をこじ開けるとともに、差別徹底糾弾の旗を全国連、共闘の労働者・市民のなかに打ち立てるたたかいとなります。
来年2月、広島差別事件糾弾の東京集会を成功させよう。そして、これらのすべての成果を、全国連第19回大会へ結集させ、部落解放運動の新たな発展の時代をこじ開けようではありませんか。
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