民主党・鳩山政権による「次期防衛計画大綱」策定を許すな!

(2009年10月15日)

  麻生政権の「防衛政策」をひきつぐ鳩山政権
鳩山民主党政権の下で、09年の年末までに、遅くとも来年3月までに、実質的な憲法の改悪である「次期防衛計画大綱」とそれに基づく「中期防衛計画」が、つくられようとしている。
1955年以来続いてきた自民党による資本家本位の政治、とりわけ小泉「構造改革」が生みだした格差社会に対する労働者民衆の怒りが、総選挙における民 主党の圧勝という結果をもたらした。あの選挙過程で民主党は、自民党との違いを強調し、選挙戦の直前には、安保・防衛政策を巡って、「自衛隊によるインド 洋での給油支援は法の期限である来年1月をもってうち切る」「沖縄普天間基地の名護新基地への移設を認めない」といった発言(選挙向けのマニフェストには 明記しなかった)を行っていた。また、麻生政権が09年12月末までに策定するとしていた「防衛計画大綱」の扱いについて、「(全面的に見直すために)先 送りする」と大綱策定は急がないことを強調していた。
しかし、突然、キャンベル・米国務次官補の来日で米政府の考えを伝えられた鳩山は、「防衛大綱」策定の作業を推進する姿勢を明らかにした。鳩山政権の北 沢防衛相は、9月17日の記者会見で、鳩山首相から大綱改定と中期防策定で関係閣僚と連携するよう指示されたことを明らかにし、「今年度末で切れるものに ついて準備するのは当事者の責任だ」と明言した。
また、北沢防衛相は「前攻権の踏襲は必ずしも考えていない」としながらも、新たに有識者懇談会などを設けて検討するのは「時間的に制約がある」として、 これまでの作業で活用できるものは取り込む考えを表明したのである。この、「これまでの作業で活用できるもの」とは何か。それは、「安全保障と防衛力に関 する懇談会」の「報告書」(座長・勝俣恒久東京電力会長)にほかならない。

「大綱」策定は、憲法改悪そのものだ!
「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書は、今後数年間の安保防衛政策の展開を
通して、日本国憲法・戦後憲法を根っこの所からひっくり返すことを提案した許すことの
できないシロモノである。この「報告書」は、戦後の「平和主義」「専守防衛」を否定し、自衛隊を「海外で戦争のできる軍隊」に変質させようとするものだ。
特徴的なものを取り上げただけでも以下の6点にのぼる激烈なものだ。

■「基盤的防衛力の整備」という方針を否定し、「多機能弾力的防衛力」の整備を唱い、ソマリア沖「海賊対処」まで実現した現行の大綱をさらに発展させ、「多層協力的安全保障戦略」という名のアフガニスタンに派兵しているドイツ軍のような武力を整備しようというのだ。

■こうした「専守防衛」から「国際的安全保障への積極的関与」へ役割転換を行うとする主張の背後には、「国防」という用語の意味を、従来の「国土防衛」から海外の「国益防衛」に転換しようとする意思がある。

■報告書は米国の影響力の低下を強調する。米国が従来ほど国際安全保障に積極的に関与しない可能性があると指摘。日本も「消極的に行動していても安全が保障される時代は終わりつつある」と武力で国益を守らねばならないと主張しているのだ。

■報告書は北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛策を柱のひとつに据えた。これが国際安全保障への積極的な関与だとしているだけではない。北朝鮮の弾道ミサイ ル攻撃への対処が、(1)重要な日米協力そのもの、(2)集団的自衛権行使の法的基盤の確立、のために必要だとしている。

■報告書は、集団的自衛権に関する政府見解を見直せと協力に主張している。
そして、「存在による抑止」に加え「運用による抑止」を重視せよというのだ。ちなみに、この報告書を受けてつくられた自民党の国防部会の「提言」では、「座して自滅を待たない防衛政策」と言っている。

■報告書は「敵基地攻撃能力の保有」を主張している。

北沢防衛相は、「活用できるものは取り込む」と述べたが、「報告書」に活用できるものなどあるのか? 報告書は、最初から最後まで、自衛隊を侵略戦争もできる軍隊にするとということであり、改憲そのものだ。絶対に許してはならない。
狭山第三次再審棄却粉砕、広島差別事件徹底糾弾の今秋決戦の柱のひとつに「防衛計画大綱」策定許すなのたたかいを据えてたたかおう。

(『部落解放新聞』223号 2009年10月10日)
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