住宅家賃値上げ反対! 新たな全国闘争へ

(2008年02月09日)

 

市長公室で給与差し押さえ撤回をせまる(昨年3月) 奈良のたたかいに学ぼう

 1998年の値上げ以降、全国連は同住連の仲間とともに10余年にわたってたたかい続けてきました。全国連は今年、住宅闘争の新たな全国闘争をまきおこしていきます。そのために、いまもっとも激しい攻撃を受けつつも、これと実力闘争でたたかい、勝利をきりひらいている奈良のたたかいに大いに学びましょう。全国連西之阪支部長であり、西之阪地区住宅家賃値上げ反対組合代表・同住連事務局長の大橋昌広さんにお話を伺いました。(文中、敬称略)

差し押さえに実力反撃 ひとりの切り崩しも許さず

 (編集部)住宅闘争を始めてから今日までの大きな流れを教えてください。
  ■大橋 奈良、古市・西之阪は、1998年の応能応益家賃制度による値上げ当初より、全国のきょうだいとともに供託でたたかってきました。
 2006年11月、供託でたたかう仲間全員に対して「値上げはOK」という確定判決をうけ、私たちはただちに、これまでをはるかにうわまわる規模での対行政交渉を連日たたかってきました。その真っ最中にあった2007年4月、奈良市は突然、15名の仲間に対して給与差し押さえを強行してきました。給与差し押さえがはじまるという一報をうけて直ちに緊急動員をかけて100名で4時間にわたる市との交渉をやり、いったんは、給与差し押さえはストップさせました。翌月、5月20日、再び15名の供託者に対して給与差し押さえをやってきました。それとの激しい攻防をへて、今日、一人の切り崩しも許さず、供託を堅持し、新たなたたかいに入っています。

 (編集部)給与差し押さえとは? 
 ■大橋 手取り給料のうち4分の1を、ウムをいわせず強制的に差し押さえ、とりたてていくという攻撃です。実際、私も毎月10万円以上の差し押さえをうけています。ボーナス月はもっとです。

 (編集部)5月の給与差し押さえの攻撃に対し住宅組合はどうしたのですか?
 ■大橋 5月20日、給与差し押さえからおよそ1ヶ月半、組合員全員、寝る間もないほどの激闘をたたかいぬきました。たたかいや方針は、事務局などが上から「こうやる」と決めつけるのではなく、みんなで、どうするかをトコトンはなしあい、全員の智恵をだしあってすべてのことを決定しました。
 給与差し押さえの攻撃に対して、組合は、大きくいって3つのことをやりました。
市長宅へ抗議のデモ(昨年6月)  ひとつは対行政糾弾行動です。差し押さえが決定された2日後、22日には50名の地元住民が役所で抗議の座り込みをたたかいました。そして、6月10日には全関西の仲間とともに100名で市長宅へのデモをたたかいました。市長宅へのデモは奈良市始って以来のことだと聞いています。この大衆的な実力闘争がすべてのたたかいの土台をなしていきました。
 二つ目に行政との直接交渉です。みんなで行政の窓口に行き「差し押さえを直ちにやめろ」と訴える実力交渉をはじめ、組合員個々人が組合代表が、いっしょになって数時間の交渉をやりぬき、のべ時間にすると100時間をゆうに上回る行政交渉をやりぬき「払える家賃を払う」「払える家賃しか払わない」ことを認めさせていきました。
 三つ目に裁判所への調停申し立てです。4月の給与差し押さえ攻撃をうけた直後、「話し合いをするから給与の差し押さえをとめろ」と、裁判所に調停申し立てをしました。「給与差し押さえをやめろ」というのはすぐに却下されましたが、話し合いに応じろという点については、12月、裁判所から「生活に応じた分割払いの話し合いを、奈良市と住民及び住民の推薦する人とで行う」という調停案がだされました。裁判所が「家賃およびその支払い方法は話し合いで決める」ことを決定したので、今後、行政が差し押さえや明け渡しをやることは、非常に困難になったということです。

「応能応益制」の撤廃へ 仲間を切り捨てない

 (編集部)給与差し押さえを受けた仲間はどんな思いでたたかったのでしょうか。組合は、差し押さえを受けた仲間の生活を守るためにどんなたたかいをやったのでしょうか。
 ■大橋 みんな怒りでいっぱいでした。「取るなら取れ、やってみろ」という思いでした。同時に、今後の生活の不安がありました。
 組合代表を先頭に組合員全員が、給与差し押さえをされた人たちの身になって、どうやって生活を守っていくのかを真剣に考え、何度も何度も会議を開き話し合いをしました。
 差し押さえを受けたのはほとんどが市役所の職員ですが、年金生活者もいました。嘱託職員の人もいました。実際に差し押さえがやられれば、ローン返済をし諸々の経費を払うと1万円しか残らないという住民もいました。また、差し押さえをやられれば、子どもに学校を続けさせられなくなる人もいました、中には生活保護以下の金額で生活しなければならない人もいました。
 組合は、その人たちといっしょになって、行政にこの現実をつきつけて何度もの交渉をしました。一人あたり4時間以上の交渉をやりぬきました。行政は、その力におされ、確定金額の分納と現行家賃の見直しをせざるをえなくなりました。示談書も、最初は「供託をやめる。応能応益家賃を認める」というのをだしてきたのですが、激しい追及とねばり強いたたかいの末、それらの文言をはずさせました。
 そうして、給与差し押さえ攻撃を受けた仲間のうち何人かは、生活を守るために、悔しい思いを胸に、示談書に調印し分納をすることを決断しました。しかし、その人たちは応能応益家賃制度を認めたわけではありません。調印までは、みんなギリギリまで粘りぬき、組合もそれを支え抜きました。その中で示談書も書き換えさせました。調印した人たちは、今、厳しい過程をともにたたかいぬいた組合員といっしょにたたかっています。今現在も、給与差し押さえをうけながら供託を続けている仲間を守り、1ヶ月1000円という高い組合費を払い会議や行政交渉などを、日々、いっしょにたたかっています。

労働組合がともに決起 運動の正しさを確信する

 (編集部) 給与差し押さえとの攻防をふりかえってどう思われますか?
 ■大橋 奈良のたたかいは、改めて思い返しても本当に正しかったと思います。給与差し押さえとの攻防という厳しい過程で、ただの一人として組合をやめなかった。組合のありかた、運動の方針が正しかったのだと思います。確定判決をうけて今日まで、一人の切り崩しも許さなかった、これが今の私たちの自信と誇りです。
 私たち組合の、こうした真剣なたたかいが、多くの人たちの共感をよびはじめています。奈良市の労働組合は、労働組合の要求の中に、この問題をとりいれてくれました。清掃労働者が、同和住宅住民の生活をどうするのかと訴えてくれています。また清掃労働をはじめ他の職場の労働者や組合も基金に協力してくれています。こうしたたたかい、これは私たちの誇りです。

 (編集部) 今後のたたかいについて聞かせてください
 ■大橋 給与差し押さえをうけながら供託でたたかっている仲間を先頭に新たなたたかいにはいっていきます。応能応益制度撤廃のたたかいが本格的に始まっていくのはこれからです。同和住宅家賃値上げ問題を大社会問題にして、これまではいっていなかったムラにもドンドン持ち込んでいきたいと思います。今度で9回目になりますが、国交省交渉も続けていきます。そして労働者との団結も強化していきたいと思います。
 また、広島差別事件は、私も絶対に許せないと思います。住宅闘争を大きく発展させていくうえでもこれは絶対に看過できないと考えています。私は、住宅闘争を大きく広げていくとともに、広島差別糾弾闘争の先頭にたっていきたいと思っています。

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